フェルミ推定で出題される頻出問題と解き方のポイント
フェルミ推定は就活生にとって対策しにくい非常にやっかいな問題です。中には問題を聞いただけで頭が真っ白になる人もいますが、解き方や考え方がわかっていれば、後は慣れの問題です。正解はないので、論理的思考を鍛えておくことが大切です。フェルミ推定対策におすすめの本も紹介しています。
就活生にとっての難関「フェルミ推定」
就職活動も複雑化してきていると言われていますが、より良い企業への就職を臨む学生やそのための対策をサポートする様々な関係者と、より良い学生を選抜したいという企業側の知恵比べの様相が続いています。
今の就活では、学生の「本来の」ポテンシャルを探るために採用現場では様々な工夫が施されていますが、その中のひとつがフェルミ推定です。
「対策不可能」とも言われるフェルミ推定ですが、基本的なことを理解して、普段から意識して考えてみると、とっさに問われた時にもしっかり対処できるようになります。
「フェルミ推定」とは何か
フェルミ推定とは、把握や特定が難しい数字に関する問題を出題し、その回答を論理的に推定して導き出すことを言います。外資系やコンサル系企業の選考においてよく出題される問題です。
一見回答のしようがない問題に見えますが、それに対してどう向き合い、答えを出していくかというプロセスを通して、論理的思考力や問題解決への姿勢を見ることができます。
「フェルミ推定」の問題例
「実力勝負」の面が強く、対策が難しいとは言われますが、傾向や考え方を多少知っていると、初見の人よりも有利に進められるようになります。
フェルミ推定で多いのが、統計データなどがない、もしくは事前知識として知っておくことが難しいような数量を問う問題です。
- 「日本の電柱は何本あるか?」
- 「砂漠の砂粒は何粒?」
- 「東京都内のマンホールの数は?」
- 「日本にパソコンは何台あるか?」
フェルミ推定はあくまで「推定」でしかなく、完全な答えを求めているわけではありません。正確な数字を答えることは基本的に出題者にも不可能です。出題者は回答を見ながら妥当性や説得力、論理性などを踏まえて、結果を評価していきます。
フェルミ推定で求められるものはビジネスでも有用
今はデータの時代ではありますが、何にでも十分に使いやすいデータがあるわけではありません。むしろビジネスの世界では、未知のことにチャレンジしなくては十分な成果を得ることは難しいでしょう。
未知のことについて企画・計画し、判断し、実行に移すためには、妥当性のある「確度の高い」推論をいかに作ることができるかが大事になります。フェルミ推定のような考え方はビジネスの世界でもおおいに役立つため、適切な答えを導き出せる学生は企業にとっても魅力的なのです。
フェルミ推定の解き方のポイント
フェルミ推定には決まった答えがあるわけではありませんが、妥当性のある解き方というのはある程度決まってきます。「日本における焼き鳥の消費量」というテーマでフェルミ推定の解き方を確認してみましょう。
1 条件設定を行う
フェルミ推定の質問には曖昧な項目が非常に多いです。
例えば「日本における焼き鳥の消費量」というテーマだとして、『一般的な「もも」「皮」「ねぎま(はさみ)」「きも」などは焼き鳥としてカウントしますが、お店で出される「牛串」や「すずめ」や「鴨」はカウントしない』など、条件を自分の独断と偏見で絞り込むことです。
「ブランドを問わず、鶏肉で串に刺され、焼いて作った食品を焼き鳥として議論を進める」と条件設定を伝えて論理を展開していきます。
2 わかりやすく、適切な数字を設定する
条件設定を伝えたあとは、わかりやすく適切な数字を設定していきます。
「日本において高齢者や赤ちゃんなど、焼き鳥を食べないと思われる人口を除くと、焼き鳥を食すると思われる人口は約1億人と考えることができます」とそれらしい数字を設定し、「年間に食卓において焼き鳥を食べる回数が年に2回、1人あたりの本数を10本と考えてみます」と論理をさらに展開していきます。
3 概算できないところを補足していく
「ここまでの経過から、日本人の食卓における焼き鳥を食べる本数は、1(億人)×2(回/年)×10(本) で、年間20億本となります」と大まかな結論をつけます。そして、概算するのが難しい部分について補足を入れていきます。
「加えて、お酒の席での消費を年間2億本、お祭りでの消費を年間1億本と仮定し、合計したものが日本におけるおおよその焼き鳥の消費量と考えることができます。合計すると、『日本における焼き鳥の消費量は、年間23億本』となります」というところで、フェルミ推定の答えを出して終了となります。
注意するべきは問題に合った単位を答えることです。必ず結果の単位を正確に表現してください。この例では、「1年間に23億本」というのが答えになりますが、1か月単位で回答すると答えがまた違ってきます。どのような条件で考えた結果かによって、妥当性や説得力に違いが生じますので気を付けましょう。
実際に試験問題として出されたフェルミ推定
フェルミ推定の問題を解く際には、答えにたどり着くまでの過程が問われています。学校の試験問題のように、問題文の中に必要な情報がそろっていることは少なく、回答を導くための条件を自ら考えていく必要があります。時には問題文の前提が全く意味を持たない回答もありますが、それでも論理性が備わっていれば問題はありません。実際に企業の試験問題として出題されたフェルミ推定の問題をいくつか紹介します。
問題1 「一年に消費されている割り箸の本数は?」
フェルミ推定解き方の回答例
割り箸は基本的にお弁当や外食を食べる際に使われるため、お弁当・外食の割合を考えてみます。日本人1人あたりが年間にお弁当や外食を食べる回数の平均を100回と考えてみると、1億3000万人が100回割り箸を消費する機会があるため、260億膳の割り箸が必要です。割り箸の本数ですので、割った数で考えると520億本の割り箸が消費されていると考えられます。その他、工作用途など他の需要を考慮して、525億本が日本で一年に消費されていると考えられます。
割り箸の本数は知りようがありませんが、食事の回数やその中で外食をしたり中食をする頻度は何となく感覚が働きます。「感覚的にわかる」という点で納得させることができれば、論理を作るのは難しくありません。
問題2 「シカゴのピアノの調律師は何人?」
フェルミ推定解き方の回答例
シカゴのピアノ調律師は、地域のピアノをメンテナンスするために必要な人数がいると仮定します。つまり、余剰人員はおらず、また不足分がもしあれば移住するなどして自動的に調整が行われていると仮定します。その上で、シカゴには300万人の人口がいて、およそ100万世帯と考えてみます。ピアノがある世帯が約5%だとして、ピアノの数は5万台あり、毎年1回調律を行うとします。1人の調律師が1日に3台のピアノの調律を行い、年間の労働日が250日だとすると、1人あたりが年間に750台のピアノを調律しますので、5万台を750台で割って求められる「67人」がシカゴにいるピアノ調律師と考えられます。
アメリカのMicrosoftの入社試験で出た問題としてよく登場します。日本人はシカゴの人口や世帯数について知る由もありませんが、日本国内でも大都市圏やその地域の人口は常識としてある程度知っていることが前提となっている問題は多いです。正解は定かではありませんが、仮定の設定を繰り返しながら、求めるべき結論に向かっていくことが大切です。
問題3 「世界中で、今現在トイレに入っている人は何人いるでしょうか?」
フェルミ推定解き方の回答例
1人が1日の中でトイレに入っている時間を15分と仮定した場合、24時間のうち、およそ1%程度の時間はトイレにいることになります。全世界の人口を70億人とすると、その人たちのうち誰かがこの1%の時間を過ごしていると考えることができます。70億人の1%、つまり7,000万人が現在トイレに入っていると考えられます。
問題には時間の要素がありませんが、1日の中でトイレに入っている時間を考えてみると、そこから妥当性のある回答を導き出すことができます。様々な条件が考えられる中で、共通しているものを見つけると説得力のある論理になります。
フェルミ推定の本で対策するのもおすすめ
フェルミ推定の回答に慣れていない方は、まずはどのような問題が出される可能性があるのかある程度把握しておくことが大切です。
インターネット上でも大企業で出題された問題の情報を見つけることはできますが、書店にもフェルミ推定の対策本が販売されています。こうした書籍で対策しておくのもひとつの方法でしょう。
- 地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」/細谷 功
- 戦略コンサルティング・ファームの面接試験/マーク・コゼンティーノ
- 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート/東大ケーススタディ研究会
- 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート/東大ケーススタディ研究会
フェルミ推定は普段の思考訓練がものを言う
フェルミ推定の対策が不可能と言われるのは、正解がなく、また出題される問題にも定型がないからです。もちろん日本の人口(平成30年1月時点で1億2659万人)や世界人口(平成29年時点で76億人)など、最低限の知識や常識が必要な問題も中にはありますが、本当の意味での対策は、論理的思考力を身に着けることに他なりません。
フェルミ推定の材料はあたりを見渡せばたくさん落ちています。そういったことについて、真剣に向かい合って考えてみることが、思考訓練となって本番に強くしてくれます。時間がある時に、自分で例題を作ったり調べてみてチャレンジしてみましょう。