就活の面接で家族構成を聞くのは禁止事項
就活中の面接では家族構成に関する質問を受けることがあります。現在、厚生労働省はこの質問について「宗教」「支持政党」「生活信条」「社会運動」「購読している新聞」などと同様、就職差別にあたる質問と考えており、採用選考の際には適切でない質問と位置付けています。
しかしながら、まだ罰則が明確に定まっていないこともあり、実際は質問されるケースも少なくありません。面接官がそのことを知らない場合もあれば、業種によっては意図を持って質問している場合もあります。
家族構成に関する質問は、応募者としては答えても差し支えない場合もあれば、プライバシーの問題から気分を害する人もいます。どのように回答するべきなのでしょうか。
就活の面接で家族構成を聞かれたら答えるべき?
まず、就活の面接で家族構成を聞かれた場合には答えるべきかですが、これについては「答える」のが基本の対応になります。
企業側が家族構成を聞く目的は、ただ雰囲気をほぐすための雑談である場合もありますし、何か採用上の目的があって尋ねている場合もあります。どちらにしても、「答える必要がないから」とバッサリ断ってしまうのは良い印象を与えない可能性が高いのです。
家族構成を答える答えないではなく何を答えるべきかを考えることが大切
面接中、質問に対して回答すると言っても、どこまで答えるかは自分でコントロールができますので、質問の意図などを考えて対応するのがスマートです。必要になればいつでも「プライバシーの問題ですのでお答えできません」というカードを切ることはできますので、質問の意図を考えながら少しずつ答えるのがベストでしょう。
加えて、面接によらずメモや書類の提出を求められるケースもありますが、これも適切ではありません。前もってどんな情報を必要としているのか確認しておくべきです。
面接で家族構成を聞かれた場合の答え方とポイント
もし、面接で家族構成を聞かれた場合には、答える場合、答えない場合それぞれにポイントがあります。どのような答え方をするべきか整理してみましょう。
質問に答える場合
答える際のポイントは、最小限の回答から始めることです。構成を聞かれているのですから、もう少し詳しく回答した方が良いように思えるかもしれませんが、面接官の意図がわからない場合にはそのくらいの回答で十分です。
ただの雑談で「家族構成を教えてください」と質問された場合なら、上記の回答で十分で「お家は賑やかだったでしょうね」「男の子ばかりですね」などの反応で終わるでしょう。
もしも何か選考のために必要な情報が不足していると面接官側が判断するなら、「お父さんのご職業を教えてください」「ご家族で、弊社のライバル企業にあたる会社にお勤めの方はいますか?」など少し突っ込んだ質問を重ねてくるでしょう。その内容次第では回答を断っても問題ありません。
「家族構成について教えてください」への回答例
- 「5人家族です」
- 「父、母、兄、弟の5人家族です」
- 「両親と私の3人に、祖父母が同居しています」
質問に答えない場合
回答を拒否する場合には、まずは質問を否定しないようにしてください。「この質問は私の採用とは無関係と思いますので、回答は控えさせていただきます」というような回答は、正しい主張なのですが、相手の質問を否定しています。
特に最終面接では、質問者が人事担当ではない重役で、採用に対する法令や規則を詳しく知らない場合もあります。しかし、質問そのものを否定すると相手のメンツを潰すことにもなりかねません。
スマートな回答の仕方としては、「自分のことは答えられるが家族のことは自分だけでは判断できない」とすることです。また、意図しない情報が伝わることを防ぐために質問の意図を絞り込み、回答する必要のある内容かを考えることです。
家族のプライバシー保護の観点からも、質問の意図を理解しないまま、思いつくまま促されるままに家族の情報を公開するのは好ましくありません。また、「失礼な質問だ」と怒ったり気分を害した様子を見せるのも避けるべきです。
「家族構成について教えてください」への回答例
- 「申し訳ありません。家族のプライバシーに関することになりますので、私の一存では回答することができません」
- 「申し訳ありませんが、ご質問の意図を教えていただけますか?その上で回答できる範囲内での回答とさせていただきたく存じます」
面接での家族構成に関する質問はどこまでがセーフか
家族構成に関しての質問は基本的にはNGです。これはプライバシーに対する配慮と就職差別などを防ぐためです。
プライバシーに対する配慮というのは、例として「母子家庭であることを知られたくない」などの理由が挙げられます。採用上の有利不利ではなく、面接を受ける側の精神状態を保つためにも大事なことです。就職差別については、「女性なら寿退社や介護などの事情での早期離職リスクを理由に就職上不利な扱いをする」などのケースです。
家族構成によってはこういったリスクを確かに見分けることはできるのですが、採用については個人の職務の遂行能力を基準に採用するべきというのが原則ですから、質問の意図がそこにある質問と思われる場合には、まず答える必要はありません。
家族構成の質問がセーフと考えられる場合もある?
基本的にはNGの質問とは言えど、中にはセーフと考えられる場合もあります。法的な定めはありませんが、その質問をする必要があると思われる場合です。
たとえば、教育産業では家族構成に関する情報が重要なポイントとなることもあります。難関校を対象にしている塾の講師なら、本人の学歴や家族の大学の偏差値が大事なことでもあるのです。講師としての実力だけでなく、そういった情報は受験に対する環境や雰囲気の経験や理解に関係しているとも考えられるためです。
また、金融業では身内に借金や負債を抱えていたり、反社会的と見られる組織に属している人がいる場合にはリスクがあると考える場合もあります。金銭を直接的に扱う業務に関しては横領のリスクがあると考えるためです。
圧迫面接で家族構成を聞かれた場合はどうしたらいい?
中には、いわゆる圧迫面接の一環として、答えにくい質問をわざとして応募者の対応力を見ている場合もあります。この場合は回答するにしても断るにしても、社会人として毅然とした態度でスマートに対応できればOKです。
家族に関することについては、必ずしも答える義務はありませんが、採用選考に協力するということでは、その業界特有の事情に配慮した質問には回答はしておいた方が良いでしょう。
その場では判断できない場合もありますので、事前に家族の状況についての想定質問を考え、回答を用意しておくことをおすすめします。
面接で家族構成を答えないと評価で不利になる可能性はある?
面接で質問に答えないと評価において不利になるのではないかと思う人は多く、実際に評価で不利になるケースもあります。しかし、正しく表現すると、「答えないことで不利になるのではなく、答えることで有利になる可能性が高い」と言うのが正解でしょう。
家族の状況を採用側が尋ねるのは、基本的に「リスクのあぶり出し」です。リスクがありそうな人とリスクがないとわかっている人であれば、後者を選ぶのは当然のことです。
しかし、個人のプライバシーは保護されるべきであり、家族構成や人種、信条などの理由によって採用に差をつけられるのであれば就職差別となってしまいますので、線引きが難しいところです。
リスクがないという虚偽の内容を伝えることもできますが、それが原因となって企業に損害を与えた場合には、大きなトラブルになることも想定されますので好ましくありません。採用を願うのであれば、相手に自分がリスクのない人材であることを伝える必要がありますので、家族や本人のプライバシーに支障のない範囲で回答するべきでしょう。
面接で家族構成を聞くことにも何らかの意味がある
就活中に面接で家族構成を聞かれる事例は多いもの。公正な採用を妨げると言われる一方で、その質問が適切な意味を持っている場合もありますので、その分別が大切となります。適切な回答は、必要な情報を面接官に与え、応募者の印象を良くし、採用の結果を有利に導いてくれます。
ただし、国が定めている以上、違法と言える質問項目ではありますので、答えないことに問題があるわけではありません。答えられる範囲を超えていると感じた際には、相手を否定することなくマナーに則ってお断りするようにしてください。