面接のときに使う一人称はどれがいい?
日本語には「自分」を表現する言葉、つまり一人称がいくつかあります。よく聞く「私」「僕」「俺」や、今ではもう小説やドラマでもない限り使われなくなった「拙者」「小生」「某(それがし)」などがあります。言葉にはルーツがありますが、一人称は主に地位や身分、自分自身を謙遜したものが多いと言えます。
一人称にとりわけ気を配らなくてはいけないのは面接や取引といったシーンです。二人称や三人称については気を付ける人が多いのですが、「自分」を表す言葉になると普段の生活で使っている言葉を使う人が多くなります。今回は一人称の気をつけるべき点についてまとめましたので、ここで「自分」についておさらいしておきましょう。
面接では使う一人称はその人の印象を大きく変える!
人称表現はその人の印象をガラリと変えてしまいます。例えば、やんちゃな男性が母親のことを「ママ」と読んでいたらギャップを感じてしまうでしょう。人には何らかの先入観があり、そのイメージからかけ離れていると驚いてしまいます。
ビジネスシーンにおいてもその先入観があるため、一人称にもその時々や人柄に合ったものを使う為に様々な種類が存在しているのです。面接官側が好ましいと思う一人称を、意図的にではなく自然に使いこなせることが求められています。
「僕」のイメージ
面接で一人称を「僕」にしている男性は多いでしょう。女性の中にも普段の会話で使う方がおり、近年ではその性別的特徴が薄れたことも一因でしょうが「僕」という一人称には幼い、優しいといったイメージが含まれます。そのため意図的に「僕」を使って相手の警戒心を薄れさせることも可能でしょう。
「俺」のイメージ
女性の中にも使う方はいますが、どちらかというと男性が使う一人称です。「俺」にはカジュアルさがあるため、普通の会話の中で使う人は多くとも、面接や商談などフォーマルな場で使う人はいません。
「わたし」のイメージ
男子学生が日常生活で「わたし」という一人称を使うことは珍しいでしょうが、女性や男性社会人にとっては特に珍しくもない一人称です。人によって硬いイメージとカジュアルなイメージが分かれます。
「わたくし」のイメージ
「わたくし」という一人称はフォーマルなイメージがありますが、意識しなければ使えない方も多い言葉です。日常生活でこの一人称を使う方は稀ですが、面接ではよく聞く一人称でしょう。
面接で使う一人称は「わたくし」が適している
面接においてはフォーマルな姿勢が求められるため、言葉遣いにおいても敬語や用法などに注意が向けられます。近年、ビジネスシーンではクールビズといった運動によりノータイなどカジュアルな装いも認められ始めていますが、面接という場は新しい仲間を見極める場ですので、社会人として恥ずかしくない程度の最低限なフォーマルな姿勢・言動が重要なのです。
一人称の中で最も面接に適しているのは「私(わたくし)」です。同じ漢字を使う「私(わたし)」でも良さそうな気もしますが、「わたくし」の方が性別的な特徴が薄く中性的に使えるため好んで使われています。
面接では「わたし」は使わない方が好ましい
履歴書などには「私」と書きますが、多くの方は「わたし」と呼んでいませんか。このような正式な文書の場合は「わたくし」と読むのが一般的です。なぜならば「わたし」には女性的なイメージを連想させるためです。
「わたし」という一人称が女性を想起させるのであれば女性が使う分には問題がないかと考えられますが、面接中に「あたし」と聞き間違えられてしまう恐れもあるため控えておきましょう。この「あたし」という言葉はかなりくだけた言い方でありフォーマルな場面には適しません。
「僕」とか「自分」も使わない
「わたし」はあくまで控えましょう程度ですが、「僕」や「自分」という一人称表現は使ってはいけません。フォーマルな場面でこれらの一人称を使う方は特に男性に多く見られますが、ビジネスシーンで使うと相手から怪訝な顔をされることがありますので、理由を理解して一人称にも気を配れる社会人を目指しましょう。
面接で「僕」がダメな理由
「僕」という言葉には「わたし」と同様に性別を意識させる言葉ですので、使うのを控えるべき1つの理由となります。しかし「僕」という表現を使わない大きな理由がもう1つあります。
それはビジネスには「僕」という表現が合わないということです。「僕」という表現には優しいイメージがあると先に述べましたが、このイメージは相手が対等な立場にあればこそで、相手が上や下の立場にある場合は子供っぽさや頼りなさなどのマイナスイメージを持たれてしまいます。
ビジネスでは「仕事が出来るかどうか」が重視される場ですので、優しさや温和かどうかは二の次なのです。「できる人」というイメージはまず、見た目や言葉遣いが出来るかどうかということにかかってきます。フォーマルな言葉遣いには立場の上下があるものです。其の為、あまり立場を意識させない「僕」という表現は面接では避けるべきです。
面接で「自分」がダメな理由
「手前みそ」という言葉をご存知でしょうか。自画自賛と同様の意味を持ち、使うときは自分や身内の自慢話をする前に「手前みそで恐縮ですが…」と言います。このときの「手前」とは自分のことを指していますが、現在では「てめえ」に訛り相手を指す言葉に変化しています。同様に、時代劇でよくきく「それがし」も自分と他人どちらを指す言葉として使われます。
「自分」や先ほど出てきた「僕」も二人称として使われることがあり、こうしたあいまいさは面接では不利な発言となってしまうので使わない方が賢いでしょう。「自分」も「僕」もあいまいさを残す一人称ですので避けましょう。
面接では敬語ができない人は意外と多い
敬語というのは、相手に尊敬の意を向けることで友好関係を築くためのツールとして非常に重要な言葉です。ビジネスではもちろんプライベートにおいても敬語ができるか否かというのは重要ですが、敬語ができない方少なくありません。
例えば、ある大学生が企業面接のグループディスカッションで下記のことを考えたとします。これで人並み外れたリーダー性を発揮したり素晴らしい発言ができたりするのであれば採用してくれるでしょうが、大抵は「なんだコイツ」で片づけられてしまいます。
例えば…
「グループディスカッションで話す相手は面接官ではなく、同年代の大学生だ。面接官が見ているとはいえ、同じ目線で話せるように敬語を抜きにしよう。そうすれば緊張も和らぐし、ディスカッションも活発になるだろう。一人称もいつも通りオレにしよう」
上記のおかしい点を挙げていきますので、しっかりと確認してください。
まず、面接官が見ているということは話を聞いているということです。グループディスカッションでは参加者に意見を伝えるのはもちろん、面接官にも自分の論理的思考やコミュニケーション能力などをアピールしているわけです。敬語を使いこなせるということは、コミュニケーション能力があるということなのです。
次に同世代の人と同じ目線で話すのは大いに結構ですが、初対面、ましてや面接という場で会った相手には敬語を使うべきです。初めは同世代であれ年下であれ敬語を使うべきで、それすら出来ない人とは一緒に働きたいと思えません。
最後に一人称ですが、面接試験という場ではフォーマルな言動・姿勢が重要です。敬語を使わずに相手の本心が分かるなら、ビジネスシーンで敬語を使う人はいないでしょう。相手と良好な関係を築くためにも、敬語で尊敬の念を表すことは大切なのです。
面接だけでなく一人称は日頃から気を使うようにしよう
就活でさまざまな人と会い、相手がどのような話し方・言葉遣いをしているかで他人との距離の取り方がある程度見えてきます。また、その人がどのようなところで仕事をしているのかについても分かってきます。
言葉遣いは話し手のイメージを左右することになります。言葉遣い、そして一人称の使い方を日頃から注意しておけば、面接中に乱暴な言葉が出てしまう…なんてことが避けられるでしょう。