就活

異常気象を通して自然との付き合い方を見直してみよう

異常気象と呼ばれるような出来事が続いて起こっていますが、自然の驚異をまざまざと見せつけられると共に、自然との付き合い方を見直す必要性に迫られています。就活の時事問題でも話題になりそうな異常気象について様々な考え方を、インタビュー形式のコラムで学んでみましょう。

繰り返し起こる異常気象について、あなたはどう考えますか?

近年の夏は熱中症が当たり前の話題になるほど暑くなっていますが、「異常気象」という言葉が繰り返し使われるほど、私たちを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。また、台風や大雨などの自然災害も頻繁に起こっており、様々な防災の取り組みも見直しを強いられています。

大学で就活サークルを運営する酒井君は、この異常気象をどう考えるべきか、社会人の知見を求めて経営コンサルタントのK・エーイさんに聞いてみることにしました。二人のやり取りから、異常気象の影響について考えてみましょう。

異常気象って、どのくらい異常なの?

―エーイさん、おはようございます。この前まで暑い暑いと言っていたのに、今度は気温がぐっと下がってきましたね。本当に今年は異常気象続きですね。

おはようございます、酒井君。そうですね。今年は本当に気候や天気の予測がつきにくいですね。着るものも毎日困りますね。

―ところでエーイさん、「異常気象」ってどのくらい異常なんですか?毎年のように「異常気象」とか、「観測史上初」とか耳にしている気がするんですけど。

そうですね。これって気象庁がちゃんと定義してまして、「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」について異常気象と呼ぶそうです。観測史上というのは、もちろん観測を始めてからということですね。

―30年の間でってことなんですね。思ったよりも期間としては短いんですね。

まあ、その30年の間でも気候環境が大きく変わっているというのを私たちは実感しているわけですから、それよりも長いスパンを取ったらもっと異常気象というフレーズを聞くことになりそうですね。

―でも、そんなに言うほど異常気象って多いんでしょうか?

正確なところはわからないですが、気象庁が異常気象について定義して使っている言葉と、メディアなどで使われている異常気象は少し意味が違うかもしれませんね。メディアで使っている異常気象って、どちらかと言うと「私たちの常識から大きく外れた、滅多に体験できない天気」みたいな感じですよね。

―そういうものなんですか?

たとえば、最大風速50km/h台の台風を異常気象だと騒ぎますが、沖縄県に行くと結構頻繁に体験するようなものだったりするので、異常とまでは感じないそうです。それが発生すること自体は普通であり、それがその勢いで本州に上陸してしまった際に、被害を受けることで異常気象と騒ぎだしている感じですね。

―なるほど。ということは、実際に異常気象と言うべきものはもう少し少ないってことになりますね。でも、それでもトラブルが生じているわけですから、私たちの予測や対策がまだまだ足りてないってことでもあるんでしょうね。

平成最後の年は異常気象のオンパレード

―この前、SNSで面白いものを見つけましたよ。将来、過去を語る際に「平成最後の年は、40度を超える圧倒的猛暑、200人超の死者が出た未曾有の豪雨、大地震に台風による関空沈没…」とか言って子孫が「また始まった。盛りすぎでしょ!」とか言うという(笑)。

面白いですね。今を生きる当事者なので笑いにくいですけど(笑)。

―でも、本当に嘘でしょと言わんばかりのレベルですよね。SNSでは大仏建てた方がいいんじゃないかとか、どうせなら緊急用の電話やWiFi設備などが搭載された実用的なハイブリッド大仏がいいんじゃないかとか、面白いことがたくさん言われていました。

なんですかそれは(笑)。まあ、まだ今年も数か月残っている段階でこれですから、異常気象のオンパレードって言ってもいいでしょうね。気象庁もきっと大変だと思います。

―そうですね。気象庁も大変ですね。頑張って予報しているけど、その予報以上に大変なことになってますもんね。気象庁も異常気象だったり自然災害だったりの発表やデータ探しなど大変そうですが、気象庁が悪いみたいに言われることもあるみたいです。

気象庁って、天気を担当していると思われがちですけど、基本的に気候をはじめとする自然活動全般が相手ですからね。地震や火山、そして自然活動じゃないけどPM2.5なども対応せざるを得ない、かつ全国各地の様々な地域で仕事をしなければならないという大変なところなんですけどね。

―それにしても、異常気象がこれだけ起こると、何が異常で何が正常なのかわからなくなりますね。子供の頃はあまり思わなかったのですが、やっぱり人間は自然の力には勝てないのかなと最近思うようになってきました。人間の予想や営みをはるかに上回ることが次々起こると、さすがにそういう気持ちになってきます。

異常気象の原因は人間活動のせい?

―よく異常気象の原因は人間が環境を破壊したからと言いますが、このあたりはエーイさんはどう思いますか?

そうですね。まあ、無くはないと思うんですけど、このあたりもいろんな意見があって正直わかりません。確かに、温室効果ガスの影響で温暖化が起こっているとか言われていますが、それでは説明がつかない様々な現象も起こっています。

―人間活動がこの100年くらいで急激に地球の環境を変えたという話は違うってことですか?

違うとは言い切れないですが、それだけとも言えないという感じですね。地球や太陽などの周期的なものが影響している可能性もあると言いますし。まあ、大気汚染のように明らかに人災であるものはあると思うんですけど。

―異常気象の原因が人間の活動にあるとしたら、人間の活動そのものを見直さないといけないですよね。便利さを味わっている裏では、地球の環境や生態系に多くのダメージを与えているんでしょうから。

そうですね。断定はできないにしても、何らかの影響を与えている可能性は高いとしている専門家がほとんどですから、自然に優しくしておいて損は無いんでしょうね。

異常気象は国境を超えた問題である

―近年は異常気象だ異常気象だという話が、国内からだけでなく、海外からも聞こえてきますね。アメリカでは最高気温が50度を超えた地域があったとか。

もうここまで来ると、衣類を着けている方が涼しいというレベルなんでしょうね。

―日本だとあまり実感はないんですが、他の国に行くと国境を越えて異常気象や環境汚染は問題になるんだそうですね。

日本でも黄砂とかPM2.5とかはそういう越境汚染の問題になりますよね。日本でも毎年異常に気温が高くなる地域というのは、近くに大都市を抱えているケースが多く、都市から発せられる様々な熱が原因になっていると言われています。国境や県境など、地域を超えたところに影響が出るのも異常気象が持っている厄介な性質のひとつですね。

―国境を越えてしまうと、法律やルールが通用しなくなりますものね。

はい。だからトランプ大統領になって、米国がCO2の排出努力目標を捨てたりしたことは困ったことになる可能性が高いんですよね。産業や政治経済の問題にしてしまうと、あまりエコな理想ばかりを追うこともできませんが、それは代償としてのリスクを伴う可能性は高いと思います。

―異常気象が起こっているのは世界のあちこちに原因があると言われていますので、ひとつひとつの国が努力して環境への負担を控えるようにすることが大事ですね。でも、こういうのも先進国だから言えるのかもしれませんね。途上国の立場から見れば「やり逃げ」に見えるでしょうし。難しい問題です。

異常気象に対してどう備える?

―異常気象が起こってしまうと、もうどうしようもないって感じはあるんですが、どう備えていくことが大事なんでしょうか。やっぱり個人はもちろん、企業でも困りますよね。

はい。困りますから、そういった災害時のための備えを常にしておく必要はありますよね。ビジネスではこういったものをBCP(事業継続計画)と言います。災害時などに、いかに大事な企業の資産を守り、また早くビジネスができる状況に復旧させるかというプランを平時から練っておくわけですね。

―備えておくっていうと防災訓練のようなものを思っていましたが、それだけではないんですね。

はい。できるだけデータやサーバーは安全なデータセンターで管理するようにしたり、また銀行口座などもできるだけ分散してお金が下ろせないようなことがないようにする、停電が発生した時に様々な機器が故障しないよう緊急用のバッテリーを準備するなど、できることは様々にあります。災害保険などに入っておくなどは当然のことです。

―異常気象っていう不確実なリスクのために、いろいろ準備できることはあるんですね。

はい。もちろん、安否確認のための様々な連絡方法や連絡網の形成など必要なことはたくさんあります。先日の北海道の地震があった後は、安否確認メールの例文を検索する数がものすごいことになったそうです。

―思わぬところにニーズがあるんですね。

気象というのは、ビジネスに大きく影響を与えているものです。運送業や建築業なら悪天候は効率を大きく落とす原因になりますし、プロ野球や野外コンサートなどのショービジネスでは雨天で中止になってしまうこともあります。気温が1度上がるか下がるかで、コンビニではアイスやおでんの売れ行きは目に見えて買わるそうです。天気ひとつで何十億円も利益や損失が出てしまうこともあるんですよ。

―それが異常気象なら、なおさらってことなんですね。

はい。だから、天気に保険をかけたり、天気を賭けの対象にするようなことも海外ではあります。異常気象に備えるというのは、何も堤防を作ったりすることだけではないということです。

―企業も異常気象へ対しては、いろんな対応があるんですね。

そうですね。個人レベルではまずは無事を確保することですし、生活への影響を最低限にすることだと思うのですが、企業レベルでは事業上の損失をいかに軽減するかが主な対策の方向になります。行政レベルではこれらの両方のサポートに加え、よりレジリエンス(復元力)の高いインフラの形成について考える必要があるので、行政が一番大変でしょうね。

これからは異常気象とうまく付き合っていく必要がある

―今は異常気象だと言っていますが、こうも頻繁に生じていますから、異常気象が起こる前提で生活を考え直していった方がいいんでしょうか?

そうですね。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という性質が人間にはありますから、いつも思い起こしてみたり、異常気象や自然災害に備えるという気持ちで準備していく必要があるでしょうね。

―災害時の避難経路の確認や、緊急持ち出し用のバッグを準備しておくなど、個人でもできそうなことはありますが、他にどういうことができそうですか?

できるだけ地球環境に負荷を与えない生活をするように心がけてみるのもいいですね。また冷暖房に頼らずとも涼しく温かく過ごせるような断熱性の高い家を選ぶ、耐震性などの高い住宅を選ぶなど、家選びなどでもできることがありますね。東日本大震災以降、海に近く低い位置にある住宅はかなり人気が落ちているそうですが、住む場所も防災上重要だと考える人が増えたんでしょうね。

―あんまり異常気象がないと言われている地域に引っ越すとかどうですか?

それも悪くはないと思いますが、地球からは逃げられませんので、どこにいてもそれなりにはリスクがあると思いますから、引っ越しても過信は禁物ですね。

―昔にも異常気象はあったんでしょうけど、どうしてたんでしょうね。

今も昔も大きくは変わりませんよ。普段から治水などの工事をしておいて大きなトラブルにならないように準備し、見識のある人が天気などを予想し、何か問題が生じそうなら早めに声を掛け合って安全と思われる場所に避難する。事が終われば粛々と復旧に取り組む。サイクルは一緒です。

―そうやって昔から人間は自然と付き合ってきたなら、これからもやっぱりそうなるんですかね。

はい。きっとそれは変わらないと思います。ただ、昔と違うのは異常気象の対策や予測の質が全然違うので、ちょっとしたことでは災害にはならないこと、ただし、災害になったときのダメージは比較にならないほど大きく、復旧には莫大なお金と時間が必要だということです。

―同じようでも少し違うんですね。

はい。あとは「神仏に祈る」っていうのもひとつの自然との付き合い方なんでしょうね。そうすることで自然との繋がりを意識したり、自然という大きなものに敬意を払うようになるんですね。

―今は神仏に祈るってそこまで意識しない人がほとんどですから、それで自然を意識することが少なくなっているのかもしれませんね。付き合うってことを考えていくと、やはり意識するって大事なことのように思います。これからの人間と自然との関係をよく考えてみる必要がありそうですね。エーイさん、今日はいろんなお話ありがとうございました。

異常気象に対して意識して備えよう

度々生じている異常気象は、人間の活動によって生じたとも言われ、人間活動に大きな影響を及ぼします。その異常気象に対しては、ただ甘んじて受けるだけでなく、日ごろから意識して備えていく姿勢も重要だと言えます。異常気象を通し、自然との付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。