あえて就職留年を選ぶ就活生が増えている
頑張って就活したにもかかわらず内定をもらえなかった時、就職留年をする学生が少なくありません。就職留年という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどのようなことなのか分からないという人のために、まずは就職留年の定義と、就職留年を学生自ら選ぶ理由、就職留年する学生の割合を見ていきましょう。
就職留年は希望の企業から内定をもらうためあえて留年すること
コトバンクによると、就職留年とは、「卒業年度内に就職の見通しが立たない学生が、次年度も就職活動を継続するために、あえて留年すること」とあります。
つまり、内定が出なかった、もしくは希望の企業から内定が出なかったために、卒業しようと思えばできるのにしない選択肢、及びその道を選んだ学生のことを指します。
既に卒業要件を満たしていて、卒業しようと思えばできるのに、敢えてしないのが就職留年なのです。
就活生が就職留年を選ぶ理由は「新卒」でいたいから
就職留年を選ぶ学生がいる背景には、今日の就職の仕方に原因があると言われています。日本の企業は、学校を卒業したての若手を新卒と名を付け、その能力の違いに関係なく一括りとして考えます。これは大人数を採用する際には非常に画期的な方法で、採用活動・社員教育における金銭的・時間的コストを抑えることができます。
また、新卒というと、まだ社会をよく知らない若者という印象を持たれます。何色にも染まっていない若手を自分の会社色に染められるため、日本の企業は新卒というネームバリューを好むのです。ちなみに、正しくは「その年に学校を卒業する者」を新卒と言いますが、近年では「高校・大学卒業後3年以内の既卒者を“新卒扱い”とする」となっています。
このような理由から、新卒の価値を落とさないために、就職留年を選ぶ学生が一定数いるのです。一方で、正規雇用・勤務先にこだわらない学生であれば、就職留年を選ぶことはないでしょう。
就職留年をする学生の割合と原因
読売新聞が実施した「大学の実力」調査によると、春、卒業学年で留年した学生は、前年より3445人増の10万2810人もいた。6人に1人に上る。大学の就職担当者によると、内定を辞退して留年を選ぶ学生が目立つという。
日刊ゲンダイによると、約16%の大学生が就職留年しているとのこと。割合は年々増加傾向にあります。就職留年する学生が増えている背景には、以下のような理由が考えられます。
就職に対する考え方が慎重になっている
入社3年目までの若手が転職してしまう―。近頃このような話を耳にすることはないでしょうか。就職間近の学生は、自分たちも当事者だと感じています。転職となればお金もかかる、せっかく入社した企業にも悪い、という思いから企業を選ぶのが慎重になっていると言えます。
将来に不安を抱いている
インターネットの普及によって様々な情報が手に入るようになり、現代の若者は情報をたくさん浴びています。不況の中生まれてきた世代であるため、世の中の不安定さを訴える情報にはとくに敏感で、他の世代より安定を求める気持ちが強いです。そのため、失敗のない、リスクの少ない企業を選ぶ、または失敗してもいいと思えるくらいのコスパを感じられないと就職に踏み切れないのです。
自分らしさを大切にしたいと思っている
先ほどの項目とも共通しますが、情報があふれているために、今の学生はカッコよく自分らしく生きている人の姿をたくさん目にしています。自分らしさを捨てて、納得しない道を選ぶことはできないのです。
内定ゼロの学生も、同様の考え方をしていると言えます。就職したいのであれば非正規雇用という道もあるのですが、先の見えづらい世の中が不安で、できるだけ安心できる道を選び取りたいという堅実な考えを持つ学生が多いというわけです。
就職留年の方法と気になる学費は?
就職活動にもう1回チャレンジするために、就職留年を考えている学生の気がかりは、そのやり方と費用についてではないでしょうか。ここで、就職留年するためのポイントと、就職留年にかかる費用を見てみましょう。
就職留年する3つの方法
- 卒業に必要な単位を取得しないようにする
- 卒業論文を書かない
- 卒業要件は満たしているが、大学側に願い入れて籍を置かせてもらう
卒業せずに就職留年するには、以上のような方法が考えられます。2つ目、3つ目は教授や大学事務側に相談してみるべきです。後述しますが、大学側との相談結果次第では、学費が安く済む可能性もあります。
就職留年するには1年分の学費を払う必要がある
一番気になるのが、学費はどうなるのかという点ではないでしょうか。目的が就職活動のためだとしても大学に留年することになるので、当然学費は払わなければなりません。
- 特例は設けず、1年分の学費の支払いが生じる
- 卒業に必要な単位数に応じて学費が減額となる
- 就職留年する人のための学費が設定されている
就職留年の費用については、以上のようなケースがあります。これは大学によってまちまちですが、3つ目のケースを認めている大学はまだまだ少ないのが実情です。就職留年の道を選ぶには、1年分の学費を支払えるだけの経済力が必要であることがわかります。
就職留年を成功させるにはしっかりした準備が必要
就職留年の就職活動は、1度目より厳しくなります。なぜ昨年就職しなかったのか、留年期間に何をしていたのかなど企業側は知りたいことがたくさんあり、学生を様々な角度から判断しようとするためです。納得できる結果が出せるよう、留年期間にしっかりと準備をしましょう。
就活留年という道を選ぶからには、覚悟を持ってその期間を過ごさなければなりません。
就職留年中に準備すべきこと
ここで、就職留年の期間中にどのような準備をすべきなのかを挙げてみます。就職留年を検討中の人は、以下のことを参考にして、今度こそ就職活動を成功させましょう。
就職活動を振り返る
まずは、前回の就職活動をしっかり振り返りましょう。どういう業界の就職試験を受けていたか、何が足りなかったか、どの選考過程が苦手だったかなど思いつく限りのすべて書き出すことで、2回目の就職活動で同じ轍を踏まないようにします。
就職活動スケジュールをしっかり組む
就職活動の肝は、スケジュール設定です。いつまでに内定をもらうか、理想でいいので目標を立てて逆算していきましょう。そうすると、就職活動の大きな流れが見えるかと思います。
自己分析・企業分析をやり直す
前回の就職活動でも自己分析・企業分析をしたかと思いますが、就職活動を通して考え方が変わったり、業界が変化したりしています。再度分析をしましょう。
何らかのスキルを身につけたり、経験を積んだりする
就職留年中は、ただ就職活動するだけでな、く何か1つでもいいのでスキルを身につけたり、自分なりに経験を積んだりしましょう。例えば、次のようなことをすると良いです。
- 資格取得
- 海外留学
- インターンシップ
- 町おこしなど社会と繋がる活動
自分のやりたいことかつ、就職してからも役立つスキルが身につくものが望ましいでしょう。本気で打ち込めば企業からの評価も上がることはもちろん、自分自身のためにもなります。
就職留年以外の選択肢は?
ここまで就職留年について説明してきましたが、就職活動をもう1年チャレンジする場合、必ず就職留年しなければならないことはありません。留年以外にも就職活動を続ける方法がいくつかあります。
学生でも社会人でもない状態の就職浪人をする
浪人と名の付く通り、学生でもなく、社会人でもない状態で就職活動を続けることです。大半の人はアルバイトで生活費・就職活動費を稼ぎながら就職活動をしているようです。
新卒扱いになる就職留年とは違って、就職浪人は既卒扱いとなります。つまり中途採用枠となるため、高いスキルを持った転職者と同じ土俵で戦わなければなりません。
しかし今日では第二新卒という枠も増えてきました。準新卒として扱ってもらえるので、単に就職浪人=既卒と見られず、就職活動が進めやすくなっていると言えます。
就職浪人で気を付けること
当然ではありますが、何年も就職しない状態でいると企業は不信感を抱きます。また第二新卒というチケットも手放すことになる場合もあるため、実績のないまま就職活動を続けなければなりません。これは非常に厳しい状況です。就職浪人の道を選ぶ場合には、きちんと将来のプランを立てた上で決断しましょう。
アルバイトなどの非正規雇用形態で働く
世の中には、アルバイトやインターンシップといった働き方が存在します。専門職と言われるような仕事は、初めは非正規雇用で、経験を積んでいくと正規雇用となる場合も多くあります。また、フリーランスとして収入を得るのも、立派な仕事の1つと言えるでしょう。
建築関係の仕事では、アルバイトとして新人を雇い、経験を積んで一人前になったら正社員に登用するケースがあります。アパレル関係もこのようなケースが多いですね。専門的なスキルがあり、やる気があればこのような働き方もできるのです。現場で働くことで、その仕事を肌で経験できる環境だと言えます。頑張り次第ではキャリアがより広がるでしょう。
非正規雇用で働く際は期限を決めることが大事
安定した収入・福利厚生を手にしたいのであれば、いつかは正規雇用として働かなければいけません。希望業種の非正規雇用で働く年数をあらかじめ決めておき、先が見えないようであれば就職活動を再開するという方法もあります。一定年数働いた実績と必要なスキルが身に付くため、未経験で就職活動をするより採用されやすいメリットがあります。
就職留年するなら計画をしっかり立てて有意義に過ごそう
留年という言葉がつくために、就職留年はイメージが悪いと思う人もいるかもしれませんが、就職留年を選択する学生は年々増えてきています。また正規雇用で働きたい、自分らしく働きたいと思う学生にとっては、大変有意義な選択肢とも言えます。
就職留年を考えている人は今回紹介したことを参考に、就職留年中の計画をしっかり立てて有意義に過ごし、自分の望む未来をしっかりと掴み取りましょう。