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志望動機で経営理念を書くなら「共感」より「感動」を使ってみよう

就活の志望動機で企業の経営理念を用いることはあまり良くないという情報がありますが、基本的に企業側とっては嬉しいものです。しかし、経営理念の正しい理解や表現ができないと逆効果になりますので、注意深く内容を作成することが必要になります。

志望動機で「経営理念」を使うのは良くないって本当?

新卒で就活をする際には、初めてのことも多く、先輩たちから様々な情報があっても難しく感じてしまうものです。その中でも、エントリーシートの作成時に求められることの多い「志望動機」は特に悩みのタネになっています。

この志望動機を作成する際に、志望する企業の「経営理念」を使いたいという人もいると思いますが、実は「志望動機で経営理念を使うのは良くない」としばしば言われています。噂の真偽や、実際に経営理念を使った志望動機は大丈夫なのかについて考えてみましょう。

「経営理念」とは何か

経営理念とは簡単に説明すると「企業経営上の基本的な目的・考え方を明文化したもの」と言うことができます。あくまで、「企業経営上の」という断りがありますので、いわゆる企業理念とは少し異なるものとなります。

経営理念は、企業を経営するに際して、会社として何を重視するのか、またその表れとしてどのような行動を心がけるのかということが端的に示されているものとも言えます。株主への還元を大事にするのであれば、「利益創出を第一にした経営」、従業員を大事にするなら「従業員のための労働環境改善を定期的に行う」などの経営理念が考えられます。

経営理念は、変化する経営環境の中で変化することもありますが、主に経営層がどのような考えをもって事業を進めていくかということを表していますので、志望動機への使用の有無によらず確認しておくと企業の理解に役立ちます。

学生が誤解しやすい経営理念に似た概念がある

学生は普段経営理念に触れることが少ないため、経営理念に似た言葉を間違って経営理念と誤解して使ってしまうことがあります。誤解しやすい概念について経営理念との違いを確認しましょう。

「企業理念」と「経営理念」

「企業理念」は、企業が存在する目的や、企業としての在り方を端的に示すものです。経営理念は、企業理念からより経営という部分に絞り込んで、より具体的なものとして表現されているものです。企業理念と経営理念は混同しやすく、企業の中には一緒としている所もありますが、別々になっている場合は間違って使わないように注意が必要です。

企業理念の志望動機の書き方は共感をいかに表現するかが大事

「経営理念」と「組織風土」

経営理念は経営上の考え方や活動方針などを示すものと言えますが、「組織風土」というのは組織の中で培われた明文化されていない考え方の傾向や雰囲気などを言います。経営理念を実践してきた結果、組織風土ができていくことが多いです。

「経営理念」と「社風」

「社風」というのは、会社の雰囲気などを表す言葉です。「風通しの良い社風」などと使います。経営理念では「風通しの良い社風の実現のため、定期的に部署横断的な親睦会や研修を実施する」などの項目を具体的に挙げていることもあります。基本的には経営理念は経営陣が決めますが、社風は自然に社内でできていくものであり、一致するとは限りません。

社風を志望動機にする場合に気を付けたいポイントと回答例

志望動機で「経営理念に共感」は本気度が疑われる

志望動機でありがちな表現として、「貴社の経営理念に共感し」というフレーズを耳にしたことがある人も多いと思いますが、実際にはあまり有効ではありません。下手に使ってしまうことで、その本気度が疑われる場合もありますので注意しましょう。

ここで、「経営理念に共感した」ことを志望動機として書く場合に、その本気度が疑われてしまう理由を見ていきましょう。

理由1:経営理念への共感は難しいから

まず最大の理由は、経営理念への共感そのものが難しいからです。言葉の上では、共感できるものも多く、感銘を受けることも多いと思いますが、実際に事業を運営している役員たちがその経験や労苦の中から作り出した理念に対して、十分に共感ができていると自信のある人はどれだけいるでしょうか。本当に共感を示すなら、それだけの説得力のあるエピソードや、経営層に近い感性を示す必要があると考えた方が良いでしょう。

理由2:具体的な理解が足りないから

経営理念に共感すると言った場合に、経営理念だけを読んで理解している人も多く、間違った理解をしている場合も多いものです。たとえば、「販売よりも技術」という経営理念があったとして、「そうだそうだ」と技術畑の人は共感できるかもしれませんが、なぜそう言うのか、背景・ストーリーを理解し共感できていなければ、真の共感には至りません。

理由3:ありきたりな話が多いから

「経営理念に共感している」ことをアピールする志望者は割と多くいます。その中から違いを出すためには、ユニークであることが求められます。しかし、同じフレーズに結びつけられる内容はパターンも少なく、ありきたりな話になりがちで、採用担当者も見飽きてしまっていることもあるのです。

志望動機で経営理念を使う時のポイント

履歴書やエントリーシートに志望動機を書く時は、必要なポイントを押さえて書きましょう。経営理念を使う時のポイントを整理しておきます。

まずは正しく経営理念を理解する

まずは何はともあれ、経営理念を正しく理解しましょう。経営理念をただ読むだけでなく、企業理念や企業の沿革、社長や社員などのコメントなどと照らし合わせながら、この企業は何を考え、何を言わんとし、何を実現しようとしているのかに注意して理解を深めましょう。

自分の志望動機と経営理念の繋がりを考える

志望動機として経営理念を使うのであれば、自分がどのような企業を探し志望していたのかを考え、経営理念と関連する部分がないのかをよく考えましょう。この時に大事なことは、経営理念ありきで繋がりを考えるのではなく、自分の志望動機を中心に考えることです。

志望動機経営理念との関連性を裏付けるエピソードを探す

志望動機と経営理念の関連性は、ただ「考えが合うと思いました」では弱いものです。自分がどのような経験・体験から志望先に対する考えを持つように至ったのか、しっかりしたエピソードがあると説得力が増します。

志望動機に経営理念を使った例文

志望動機に経営理念を使った例文を見ながら、細かい点を確認しましょう。

地域密着型企業における経営理念を用いた不動産会社の志望動機の例

私が貴社を志望したのは、「地域に価値ある不動産開発を大切にする」という経営理念に深く共感したからです。

私が生まれ育った地域は自然豊かな地域として知られる所ですが、私が幼い頃と比較すると工場も増え、多くの人が移り住んでくるようになりました。最初の頃は発展して便利になって良かったと思いましたが、この数年は工場の増加による排ガスの問題や、人口増加による渋滞の慢性化や治安の悪化などの問題が生じるようになりました。河川では昔見かけた魚や動物たちもほとんどいなくなってしまい、自然豊かな地域の魅力は失われてしまいました。

私は故郷の姿を見ながら、画一的でない、地域に合った開発があると思い、大学でも地域開発を学びながら地域に根差した開発に携われる企業を探していました。その折、御社の説明会で経営理念や実績について伺ったとき、「ここしかない」と思い志望するに至りました。

日々研鑽を重ねながら、貴社にも地域にも貢献できるよう精進していきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

経営理念への共感を示し、志望動機にした例です。少し志望動機にあたる部分が長くなっているため、志望動機では文字数に制限もある場合がありますので、可能ならもう少し簡潔にしたいところです。

この例でも見られるように、経営理念を志望動機に用いる際には、必ず具体的に経営理念のどの部分に共感したのかを示すようにすることが大切です。「経営理念に共感した」との説明だけでは、どの部分かがわからず、後のエピソードなども唐突に聞こえるかもしれません。

例文では、どうして「地域に価値ある不動産開発」に共感したのか、故郷の例をあげて示しています。説得力のある内容であることに加え、大学でも地域開発を学んでいたことなどもこの分野ではアピールとして有効と考えられます。

人材派遣会社における経営理念を用いた志望動機の例

私が貴社を志望したのは、「従業員や派遣スタッフのワークライフバランスを実現する」という貴社の経営理念に共感したからです。

私は大学在学中から言語障害を抱えた子供たちを支援するボランティア活動を行っていますが、正直、就職により支援を続けるのは難しいだろうと思いました。同様に、就業がハードルとなって、育児や介護など、支援が必要なところに手が回らないことも多いのではないかと考えるようになりました。

人材派遣会社を志望しているのは、そういった多様な働き方を応援できる仕事だと考えたからで、その中でも御社は明確に従業員やスタッフを大事にする姿勢を打ち出していて、私がしたい仕事ができるのではと思いました。

貴社に入社できたら、私は任された仕事をしっかりこなし、一方でボランティアも継続して貴社におけるワークライフバランスのモデルになれるよう頑張りたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

こちらの例でも、経営理念と自分の志望動機の繋がりをエピソードから表現しています。

このエピソードでは「ワークライフバランスの実現」がテーマになっていますが、このテーマの場合はうまく扱わないと企業にとってメリットを感じさせない内容になってしまいますので注意しましょう。

例文では、企業へのメリットとして「貴社におけるワークライフバランスのモデルになる」ように頑張るという姿勢を見せてアピールにつなげています。志望動機のアピールではありますが、入社した際のメリットや、活躍している様子が想像できるようなフレーズが入っていると効果的です。

工業用機械メーカーにおける経営理念を志望動機にした例文

私が貴社を志望したのは「技術は人間力のひとつ」という経営理念に感動し、この会社でぜひ働きたいと思ったからです。

会社説明会で社長がお話になっていた「技術は人を幸せにするための力。技術を磨くということは幸せへの想像力と、幸せを実現する力を磨くことに他ならない」というお話に感動し、ここでその人間力を磨きたいと思いました。

機械メーカーはたくさんありますが、技術を何のために磨き使うのかをここまで考えているメーカーを私は他に知りません。貴社でなら、ただ機械を作り、直すだけでなく、機械を通して顧客の幸せを考えることができると感じています。どうぞよろしくお願いします。

工業用機械メーカーへの志望動機ですが、特に理系のエンジニアでの採用では、技術に焦点を当てた志望動機も多く見られます。経営理念でも、技術に重きを置いている会社も少なくありません。

ここでは、経営理念への「感動」が志望動機であるとしています。よく「感動」と「共感」を一緒に考えがちですが、「共感」は「自分にもそれがわかる」ことで起こり、「感動」は「自分の理解や予想を超えている」ときに起こるものです。「共感」が少し偉そうだなと感じる場合は、「感動」という言葉を使うと良いでしょう。

しかし、感動を中心にした場合には、エピソード全体が軽くなりがちで、このエピソードでも志望理由の多くが感動ばかりになっています。企業側も嬉しい内容ではありますが、感動に関する内容が多いと、「同じように感動を受けたら他社にも行くのではないか」と思われてしまうリスクがありますので、地に足のついた志望理由もプラスできるとより良くなるでしょう。

なお、エントリーシートなどの書類上では企業のことを「貴社」、面接など口頭では「御社」と表現します。特に減点になるようなものではありませんが、場合によってうまく使い分けられるよう意識はしておきましょう。

志望動機に経営理念が出てくると企業は嬉しいもの

志望動機で経営理念が使われている場合、基本的に企業側としては「嬉しく」感じます。企業としての理念が感心されたり共感されることは、存在を認められることでもあり、甲斐を感じることだからです。

確かに、志望動機として経営理念を用いることには、若干のリスクがある部分はあります。生半可な理解や共感で志望動機として経営理念を取りあげることは、内定を目指す上では良い戦略ではありません。ただし、本当に深い理解や共感があれば、それは面接官や採用担当者、会社の役員たちの心に必ず響きます

志望動機の内容が決められず、仕方なしに経営理念を使うようでは心に響くような内容は難しいかもしれませんが、本当に心から経営理念に感動したり共感できたのなら、必ずそれを効果的に伝える方法があるはずですので、ぜひ考えつくして志望動機を作成してみてください。企業側も高く評価してくれるはずです。

志望動機で経営理念を使うときはよく理解して使おう

経営理念は、企業の目的や価値観、ビジョンを示すものです。志望動機として経営理念を使う場合、企業が何を大切にしているのかを理解し、自分自身の志望動機とリンクさせることが重要です。

たとえば、ある企業が「お客様の満足度向上を最優先とする」という経営理念を持っている場合、自分がその企業で働くことによって、自分自身がお客様に貢献することができると考えることができます。このように、経営理念を理解することで、自分自身の志望動機と企業の理念を結びつけることができます。

しかし、ただ経営理念を述べるだけでなく、具体的なエピソードや経験を交えて説明することが重要です。例えば、自分が過去にその企業の商品やサービスを利用した経験から、その企業がどのようにお客様に対して貢献しているのかを具体的に説明することができます。

つまり、経営理念を使った志望動機を作成する際には、企業の理念を理解することと、自分自身の経験やエピソードを交えて具体的に説明することが大切です。