自己PRで「思いやり」はどう表現するのがベスト?
就職活動におけるエントリーシートや面接において、自己PRを求められる場面は非常に多いですが、その回答で多く見られるのが「私は思いやりがあります」というものです。
「思いやり」があるのは良いことであることは間違いありませんが、それを上手にアピールすることができないと就職活動における強みにすることはできません。自己PRにおいて「思いやり」はどのようにアピールするのが効果的なのか考えてみましょう。
「思いやり」は何を指している?
自己PRで「思いやり」をアピールしようとする人の中には、その「思いやり」が何を示しているのかが不明瞭な人が多く見受けられます。
思いやりは「他者をいたわり、優しくする気持ち」ではありますが、辞書的な意味がわかっていてもどうしてもその理解や程度は個人差があります。中には、「気弱」「人に厳しいことが言えない」などの自分のネガティブな面を「思いやり」と良い言葉で表現してみただけという人も少なくありません。
他の人よりも断然「思いやり」があるか、もしくはその「思いやり」がビジネス上の強みになることが伝わらない限り、就活における自己PRのテーマにはなりにくいことに注意してください。
自分が表現したい「思いやり」について、「共感ができる」「気が利く」「人の話をじっくり聞ける」「困っている人は助けたくなる」など、別の表現を色々と考えてみて、自分が強みにしようとしている「思いやり」の真意をしっかりと確認することが大切です。
企業受けする自己PRの思いやりアピールとは
思いやりがあることは、人間として大きな魅力であることは間違いありませんが、企業が面接を通して知りたいのは「優しいかどうか」ではなく、「共に企業の利益のために働くにふさわしいか」であることを忘れてはいけません。
また、人格的であることが利益に結び付くとは限らないため、その思いやりがあることで、企業に利益になる人材だと思わせる必要があります。
1 エピソードはより具体的な内容にする
「思いやり」というのは非常に抽象的な概念です。そのため、言わんとしていることや自分の価値を示すためには具体的なエピソードから「思いやりが成果につながる」イメージを持たせることが必要となります。
「部活動では気落ちしそうな後輩たちを見つけては声をかけたり個別に対話する機会を設けていた。引退時に、モチベーションアップに貢献したことが顧問や後輩たちから高く評価され、たくさん感謝された」などのエピソードが必要です。「よく優しいと友達に言われます」では、思いやりがどう行動に表れるかわかりません。具体的なエピソードを通し、思いやりから生じた行動とその成果について、うまく伝えましょう。
2 「思いやり」とビジネスとの関係を示す
「思いやり」はビジネスにおいて強い武器となりうる要素です。管理職になれば周囲のメンバーの調子に気を配り、それぞれが最大限能力を発揮することができるようにすることが大切になります。また、営業職などではちょっとした思いやりが決め手となって受注が決まることもあります。
「左利きの社長のためにホッチキスを止める位置を反対にした資料を作った」ことで受注が決まったり、「お薬が飲みたいと言ったお客さんのために普段は出していない常温のお水を提供した」ことでリピーターがついたカフェなど、思いやりがビジネスの成功に直結する事例はたくさんあります。エピソードの中にビジネスで成功しそうな要素を入れるようにしてみましょう。
3 「思いやり」の表現は客観的にする
「思いやり」は主観的になりやすいため、それを裏付けるエピソードや周囲からの評価が必要です。具体的なエピソードにも客観的に見て「思いやりがある」ことが必要ですし、「毎年のように通知表の担任からのコメントに書かれていた」などの客観的な評価があると良いでしょう。
「正義感がある」ことで行動したケースと「思いやりがある」ことで行動したケースは似ていて混同しやすいです。正義感からの行動は自分本位であり、思いやりによる行動は他人本位です。本当に「思いやり」を表現する内容として適当か、できれば第三者に客観的にチェックしてもらいましょう。
4 「思いやり」には説得力を持たせる
「思いやりがある」と言いつつも、困っている人を全く助けなかったり、また不作法な振る舞いをしてしまうと、心象が大きく損なわれてしまいます。「思いやり」などの人格面をアピールする場合には、そのアピールが嘘にならないように立居振舞いに注意しましょう。
また、緊張しているがゆえに、普段できることができなくなることは誰しもありますが、ビジネスはある程度緊張した中で行うものですから、緊張したからとできなくなるようでは困ります。
思いやりがあるとアピールするなら、「自分は思いやりがある人なんだ」と自己暗示をかけるくらいでちょうど良いでしょう。大げさにしたり、無理矢理に思いやりを表現せずとも、自分を思いやりがある人として定めることで自然に言動も整っていきます。
自己PRで「思いやり」を扱った例文2パターン
「思いやり」を使った自己PRの文例を見ながら、詳しくポイントをチェックしていきましょう。自己PRで思いやりがあることを述べたいと考えている人は、参考にしてください。
「思いやり」を使った自己PRの例文1
私の長所は、思いやりがあるところだと考えます。
周囲の友人たちからも良く言われているのですが、自分では特別に意識しているわけではありません。友人にどんなところにそう感じるのか聞いてみたところ、ひとつのエピソードを教えてくれました。
友人が留学のための試験勉強を頑張っているとき、私が普段と比べてLINEのメッセージを送るのを控えていたり、また勉強を頑張れるように学校で食べ物を色々とくれたことが嬉しかったと言っていました。
私は自宅生で、当時、難関大学を目指していた弟が受験勉強まっただ中であり、いつも「集中したい」「食べる時間も惜しい」といつも言っているのを聞いていたので、友人もきっとそうだろうと、応援したい気持ちでそうしていたのですが、結果友人が留学できて本当に嬉しく思いました。
御社のビジネスは、顧客本位の提案が命だと会社説明会で伺いました。私も自分の都合ではなく、相手への思いやりをもって、顧客に寄り添った仕事をしていけたらと考えています。よろしくお願いします。
自己PRの例文1では、冒頭で自分の長所を「思いやりがあること」と述べていますが、面接などでは最初に結論を述べて、それから具体的なエピソードに入るのが基本です。
「思いやり」は自称になってしまいやすいので、客観的に言われているということをアピールし、自分が思うエピソードではなく、友人が教えてくれた話という形で客観性のあるエピソードとして紹介しています。これだけでも自分が思う話ではないことが伝わり、印象も違ってきます。文書だと展開が冗長に感じる可能性がありますが、対面しての面接だと面白く聞こえます。
最後の意気込みの部分は、「思いやり」が「どう仕事に結びつくのか」が少し弱いです。「顧客の問題に寄り添って考え、適切な仕事・行動を通して企業や顧客に貢献していきたい」といった表現がより好ましいでしょう。
「思いやり」を使った自己PRの例文2
私の長所は、思いやりがある部分だと思っています。
私は相手本位で行動をすることができます。
友人の相談を受ける際は、自分の知識や経験から答えを言うのではなく、できるだけ相手の事情や状況について細かく聞いてから、相手の立場や性格から実現できそうなアドバイスをするようにしています。
ある友人は「アルバイトを辞めたい」という相談をしてきました。辞めたい理由は「シフトに入ることが多く時間的に厳しい」ことでした。詳しく事情を聞いてみると、店舗の人員が少なく、自分が辞めると他の人ももっときつくなるし、またお店にも悪いので辞められないということでした。私は、辞めるよりもシフトを減らすことを相談してみて、また他のアルバイトを集める方向で頑張った方がいいとアドバイスしました。友人も「そうか、その方がすっきりする」と言って、その通りにしてアルバイトを続けていました。
ビジネスでも、顧客の問題を知らずに商品やサービスを販売するなら押し売りと言われるでしょうし、顧客の問題をしっかり知ることが問題解決につながると考えます。相手本位で思いやりを持って寄り添うことをいつも意識して、貢献していきたいと考えています。
例文2でも「思いやりがある」ことをアピールしていますが、この自己PRでは優しいだけでなく、「相手の立場に立つ」ために「細かくヒアリングをしている」ことがエピソードから伺えます。こうした情報収集力があると、営業などでは活躍が期待しやすいでしょう。
締めも、ビジネスへの適用についてしっかり考えている様子が伺えて好印象を与えることができます。
「思いやり」をうまく自己PRすると「売り込み上手」として目立つ
自己PRとは、自分自身をアピールすることで、自己ブランディングを図るための手段です。ビジネスにおいては、求人募集やプレゼンテーションなどで自己PRを行うことが一般的です。自己PRにおいて重要なのは、自分の強みやスキル、経験を具体的にアピールすることです。また、自分の持つ価値観や考え方を伝えることも大切です。
「思いやり」を自己PRする場合は、相手の気持ちに寄り添い、コミュニケーションにおいて思いやりのある対応を行うことが重要です。また、チーム内で協調性を発揮し、信頼関係を築くことも「思いやり」の大切な要素です。自己PRにおいては、これらのポイントを具体的な事例や経験を交えて説明することで、自分が「思いやり」を大切にし、周りと良好な関係を築くことができる人物であることをアピールすることができます。
ただし、自己PRはあくまでも相手にアピールするためのものであり、相手のニーズや状況に応じた柔軟なコミュニケーション能力を併せ持つことも必要です。自己PRにおいては、自分自身を最大限アピールすることが重要ですが、相手に適切な対応ができる人物であることもアピールすることが大切です。