素直さを自己PRするのは選考に有利か不利か
就活生が自己PRを考える時、自分の考えたPR内容が就活で適切なのか悩むものです。実績か、能力か、または性格か、どれをアピールするのが適切かは相手や状況で異なります。「素直さ」を自己PRのテーマにしたいと考える人もいますが、就活では有効という声もあれば不適切だという声もあります。ここでは、自己PRで素直さをアピールすることは、有利に働くのか不利に働くのかを考えてみましょう。
「素直さ」の自己PRを企業側はどう見ている?
「素直さ」は、企業側から見ても重要な要素の一つです。素直であることは、自分の限界を認め、周りの人のアドバイスや指導に素直に耳を傾け、自分自身を改善することができるということを示します。また、素直であることは、コミュニケーションの円滑化やチームワークの向上にもつながります。
企業側は、求職者が素直であることを求める場合があります。例えば、新卒採用の場合は、未経験の若手社員に対して、自分の意見や主張を押し通すのではなく、先輩や上司の指導に従い、自ら学び成長する姿勢が重視されます。また、転職の場合には、過去の経験に固執せず、新しい職場での仕事に柔軟に取り組むことが求められる場合があります。
しかし、素直であることが必ずしも全ての企業で評価されるわけではありません。一部の企業では、主体性や独創性を重視する場合があるため、適材適所の採用を行う必要があります。したがって、「素直さ」は、あくまでも一つの要素であり、企業によって求められる人材像は異なるということを忘れずに、自己PRを考えることが大切です。
素直さを自己PRするなら企業に与えるメリットを示そう
友達を作るための自己PRと、就職活動における自己PRは違います。友達作りでは自分がどういう人かを売り込むために、性格をアピールするのは良いことです。しかし、就職活動では、「自分を採用することで企業にどんなメリットがあるか」を示す必要があります。そのため「素直な性格です」というだけのアピールであれば、不適切と言わざるを得ません。
成長力・適応力がある
採用する側の立場では、実は素直な人材は非常に好ましい面があります。先入観や自分の考えを入れずに新しいことにチャレンジし、アドバイスを聞いてどんどん成長していく人が多いので成長力が高く、環境への適応力がある人が多いからです。
感情をオープンにするため付き合いやすい
友人関係でもそうですが、ビジネスシーンでもある程度素直に感情を表現してくれる人は付き合いやすいです。感情を溜め込んである日突然爆発させる人や、裏表がある人は働いているうちにどこかで大きな問題を起こすリスクが高くなります。素直に感情を吐露し、コミュニケーションができる人は付き合いやすく、管理もしやすいので企業に好まれます。
上司や先輩の助言を聞き入れることができる
先輩や上司のアドバイスをまったく聞かなかったり、本やネットで仕入れた情報を優先して自分勝手に仕事をしていたりしたら、自分自身は良くともチームや組織に不和を生じさせてしまいます。企業が求めているのは、意見や助言を素直に聞き入れて周囲と調和することができる人材です。
悪い部分を認めることができる
社会人になれば、学生時代には見えなかった自分のアラが見えてきます。悪い部分に自分で気づいたり、周囲から指摘されたりした時に、「そんなことはない」と否定してしまう人は人間としても社会人としても成長が止まってしまいます。自分の悪い部分を認めることができる素直さを持っている人は、それだけ仕事面でも人格面でも成長力が高いのです。
正直である
素直さを持っているということは、正直であるとも言えます。例えば何か分からないことがあった時に素直に「わからない」と言えたり、すぐに「ありがとうございます」と気持ちを表現できたりする素直さは、周囲とのコミュニケーションを取る上でとても好ましいものです。
素直さをアピールする際に気になるデメリットも知っておこう
素直な人というと良いイメージはありますが、一方でデメリットと考えられる面も持っています。就活で素直さを自己PRする際は、企業の採用担当者に次のようなデメリットを見せない伝え方を心がけましょう。
単純で思慮が浅い
素直さがあるというのは良い性格ではありますが、単純で思慮が浅い面も持っていると言えます。人の話をそのまま信じて鵜呑みにすることは、ビジネスの場では思わぬ不利益となる可能性もあります。素直なだけでなく、しっかり考えて判断できるという面もアピールできれば、採用側の心配を取り除くことに繋がります。
自分の意見がない
素直さがある人は、周囲の人の意見を聞き入れてそのまま行動に移すため、しばしば「自分の意見がない」と批判されることもあります。自己PRでは自分の意見をしっかりと持っていることを示すことによって、素直さがあるだけでなく、芯の通った人だという印象を企業側に与えることができます。
素直さの他に長所がない
就職活動において素直さを自己PRする場合、どうしても「他に長所はなかったのか」と思われてしまうリスクがあることを覚悟しなくてはなりません。エピソードによっては、素直さがあることは素晴らしい長所に思えますが、平凡な内容で終わってしまうと企業側も評価しづらくなってしまいます。無理に素直さを長所にせず、他に自己PRできることはないか、じっくり自己分析をしましょう。
素直さを自己PRする時は別の表現でも考えてみよう
もしも素直さを自己PRのテーマに選ぶのであれば、企業側の求める人材像を意識して別の形で表現することを考えてみましょう。ここで、素直さの代わりになる表現をいくつか紹介します。
吸収力がある
「素直」と性格として表すのではなく「吸収力」と能力の形に言い換えて表現してみましょう。教えてもらったことをそのまま吸収することのできる人材は、企業にとってとても好ましい人材です。具体的なエピソードで、吸収力があることを上手にアピールできれば好印象は間違いありません。
思いを言葉にできる
どんなに良い心の持ち主でも、それがそのまま言葉として出てくる人は多くありません。素直に感情を表現できることを、「思いを言葉にできる」と言い換えてみると魅力的に映ります。プレゼンテーションや、案出しなどの場面で上手な表現ができる人はそれだけ重宝されますし、感謝や反省の言葉がすぐに出てくる人は好感が持てるものです。
自分の考えを置くことができる
素直さがあると、自分の考えを置いて他人の言葉や指示を受け入れることができます。「自分の考えを置くことができる」というのは、日々周囲に学びながらアウトプットをしていく必要がある社会人には必須の能力です。「自分の考えを置くことができる」という自己PRによって、素直さが持つ短所である「自分の意見がない」「思慮が浅い」などを感じさせずに、素直さの良い面だけをアピールすることも可能です。
自己PRで素直さをアピールする例文
素直さを自己PRする例文を見ながら、細かい点を確認してみましょう。自己PRのテーマに「素直さ」を選ぼうと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
素直さをアピールする自己PR例文1
私は、いつも他の人からの意見をしっかり聞いて、それを行動に活かすことを心がけています。飲食店でアルバイトをしていた経験がありますが、私が入った時に、年下の先輩がいて、いろいろと教えてくれました。生意気だと思うことも特になく、やはり仕事上は後輩だからと、後輩らしく指導を仰ぐように心がけました。実際、仕事ができるのはその後輩の方でしたから、素直に尊敬できました。
会社に入っても、同様のことはあるかもしれません。しかし、年齢や立場に関係なく、アドバイスには素直に耳を傾けていきたいと思っています。
私はこのように素直な性格が長所だと思います。どうぞよろしくお願いします。
この例文1には、就活の初期に見られる失敗が多く含まれています。自己PRでは、冒頭にアピールの核となる部分を述べることが鉄則です。そうしないと、何を話そうとしているのかすぐにわからないまま読み進めないといけないからです。ビジネス文書では、質問に対する答えがまず先に来ますが、この文章では最後に「素直な性格が長所だと思います」とアピールが来ており、素直な性格がアピールされているか確認するために再度読み直さなければなりません。
また、エピソードの内容に、どれだけ「素直さ」が盛り込まれているかと言われるとやや難しいところです。先輩後輩の序列を守り、素直に尊敬したということはわかりますが、企業が求めているのは先輩への敬意ではありません。素直さが企業への貢献にどう結びつくかを考える必要があります。
「素直さをアピールしている作文」から「自己PRとしての素直さのアピール」に変えるためには、読み手を意識することが欠かせません。読み手の視点を意識しながら、構成や表現を工夫しましょう。
素直さをアピールする自己PR例文2
私は、いつも年齢や立場に関係なく、意見や助言から学び、素直に実行することができます。
飲食店でアルバイトをしていた経験がありますが、私が入った時、先輩として教育してくれた人が自分よりも年下でした。その先輩は年下ということで最初は遠慮がありましたが、私は常に仕事について先輩に尋ね、素直にその助言に従って仕事を覚えました。すると、仕事をテキパキできる後輩にも自然に尊敬する気持ちが起こりましたし、良い関係で仕事をすることができました。その結果、同じ時期に入ったアルバイトの中で一番覚えが早いと評価してもらうことができました。
会社に入っても、様々な立場の方からアドバイスをいただけると思います。自分の考えで大事な助言を妨げてしまわず、素直に耳を傾けて成長していきたいと思っています。
これは、例文1を書き直してみたものです。まず、冒頭にどういう自己PRなのかが端的に示されており、続いて裏付けになるエピソードが紹介されています。最後に、まとめと企業での長所の活かし方についてアピールしています。
「素直」という性格を自己PRするのではなく、「意見や助言から学び、素直に実行することができます」と自分の行動をアピールする表現に変わっています。行動が基準になることで、エピソードから客観的に判断しやすくなりますし、企業内での活躍の様子もイメージしやすくなります。
自己PRエピソードは具体的に状況を描写することで、読み手が共感しやすくなります。先輩が年下であったことや、仕事での接し方、そして結果と、具体的に描写されています。過去のエピソードの具体的な描写は、将来の会社に入ってからという不確かな状況を具体的に想像させる効果がありますので、伝わるだろうと簡単に考えずしっかり内容を確認しましょう。
最後の文では、自分の長所が会社に入ってからどのように活かされるのかアピールしておくと、企業側も活躍しているイメージを持ちやすくなります。
素直さをアピールする自己PR例文3
私の長所は「人の意見や指導をよく聞くことができること」です。
私はずっとサッカーをしていましたが、大学から軟式野球を始めました。全くの初心者だったため、野球は非常に難しく感じました。しかし、監督や周囲の経験者から、基礎をしっかり教えてもらえたことで、3年生のときには交代要員ではありましたが、試合にも使ってもらえるようになりました。
皆がいろんな方法論で教えてくれたのですが、時には意見がぶつかっているようにも聞こえ、こんがらがってしまうこともありました。しかし、わからない所や疑問に思っていることを素直に聞いていると、表現が違うだけで同じことを言っていることがわかりました。このことから、表面的に聞くだけでなく、しっかり深く聞いてみることが大切だといつも自分に言い聞かせています。
御社に入社してからも、上司や先輩からの指導をよく聞いて、わからない部分はわからないと素直に聞いて正しく早く仕事を理解できたらと思います。野球の時のように、早く成長して会社のお役に立てる人材になりたいです。
例文3では、「意見や指導をよく聞くことができる」と自己PRし、その後のエピソードが続きます。
素直さのアピールでは、素直な性格や行動だけでなく、マイナス面をいかに打ち消すかも大切になります。
この例文では、「素直によく聞ける」面と「わからない所は質問できる」という面がエピソードから表現されています。素直な人は意見がない、あまり考えていないと思われがちですが、このエピソードからは「聞いた内容をもとに自分でもよく考えている」様子が伺えます。そのため、素直さの持つネガティブな面が無く、企業としても安心して採用できます。
素直さは本来自己PRするものではないことに注意する
素直さを自己PRする際に注意しなくてはならないのは、自分で「素直だ」と言い切ってしまうことです。素直さというのは、本来は性格であり、周囲が評価するものです。本人が「素直だ」とどんなに主張しても、客観的にそう見えるとは限りません。
あまりに素直さを自己PRするのはかえって疑わしく見えますので、エピソードを通して素直さが出ている場面を表現しましょう。大事なのは、「本当に素直なのか、企業は気にしていない」ということです。企業の立場では「素直な特性がどのように仕事に活かせるのか」が関心事ですので、素直であることの証明に躍起にならないように気をつけてください。
素直さを自己PRする際は仕事へのメリットを示そう
企業が就活生を評価する際に、素直であることはとても好感の持てる性質です。しかし、素直さという性質は、その人の言動から出てくるものであり周囲が認めるものです。そのため、自己PRで積極的にアピールするテーマとしては不向きな性質です。自己PRで素直さをアピールするのであれば、それが仕事に活かせるようなメリットとして表現するよう気をつけましょう。