自己PRでの「観察力」の書き方ポイントと例文・上手にアピールする方法
自己PRで観察力をアピールする人は多いですが、観察力のアピールは場合によっては相手を不快にさせたり、誤解を生んだりする場合があります。観察力をアピールするために必要な要素をしっかり意識して、伝わる自己PRを作成しましょう。
自己PRでの観察力アピールには工夫が必要
就職活動における自己PRでは、学生と社会人の考え方の違いによってアピールが思ったような結果にならない場合があります。その代表的な例が「観察力」をアピールする自己PRです。
観察力そのものは非常に有用な能力であり、学生・社会人を問わず求められるものですが、自己PRに使うとあまり良い印象をもってもらえません。観察力をアピールし、企業側に好感をもってもらうためには、ちょっとした書き方のコツを意識しておく必要があります。ここでは、自己PRで観察力をアピールする場合のノウハウを紹介します。
自己PRでアピールする観察力にも色々な種類がある
「観察力」というのは当然「観察する力」なのですが、色々な種類があり、観察する対象によって観察力の種類も違ってくるのが普通です。そのため、面接の自己PRの際に観察力と一言で言ってしまうと、それぞれが自分のイメージで考えてしまい、話が合わなくなることがあります。
また、曖昧な部分がある言葉ですので、誤解を防ぐための方法として、より具体的に観察力を表現するのが良いでしょう。観察力の種類をいくつか見てみましょう。
人をよく観察できる「人間観察力」
多くの場合「観察力」と言うと、この「人間観察力」を連想します。対象となる人をよく観察することで、その人に関する様々な情報を集め、心理や考えを知る手がかりにすることができます。
自分が置かれている環境や状況をよく観察できる「状況観察力」
「状況観察力」は自分の置かれている環境や状況についてよく観察することができ、適切な行動をするために必要な情報を集めることができる力です。
自分をよく観察しセルフコントロールできる「自己観察力」
「自己観察力」は自分自身についてよく観察することで、自分の状態を理解して、セルフコントロールできるようにする能力です。
企業が求める就活生に観察力は「状況観察力」と「自己観察力」
このように観察力には種類がありますが、基本的に企業が就活生に求めているのは状況観察力と自己観察力です。人間観察力は一部の対面接客業では求められる場合がありますが、基本的にそこまで重視されず、どちらかと言えば面接の自己PRのテーマにすると、あまり良い印象になりません。
人間観察は興味深いものですが、観察される側からは不快なものになりがちです。「人間観察が得意」「人間観察が趣味」と言われた場合には、「自分も観察の対象になるのでは」と恐れる気持ちが湧いてきてしまうので、あまり一緒には働きたくないという思いが生じてしまいます。
一方で状況観察力や自己観察力は、自分をコントロールし、場に合わせた行動を行うことを助けてくれるので、ビジネスパーソンには非常にありがたい特性と言えるでしょう。そのため、自己PRで観察力をアピールするのであれば、人間観察力ではなく状況観察力や自己観察力をアピールするのが無難です。
自己PRで「観察力」を上手アピールするための書き方ポイントと例文
自己PRで観察力を上手にアピールするためのポイントを見てみましょう。例文も紹介するので、自己PRでの観察力の書き方の参考にしてください。
自己PRでは観察力の種類を具体的に示す
自己PRで観察力をアピールする時には、自分のどのような観察力が優れているのかを具体的に示します。必ずしも「観察力」という単語にこだわる必要はありませんので、具体性を失わない程度に短いフレーズでまとめてみましょう。
- NG例文「私は観察力があります」
- 良い例文「私は周囲の状況を読み取って、適切に行動できます」
自己PRで観察力をアピールするためのエピソード構成は問題解決型を意識する
自己PRの内容は自由ですが、企業で採用されるためにはそのアピール内容がビジネスでも活用できるものであることをイメージさせる必要があります。そのため、実際のビジネスの場面と同様に問題解決型のエピソードを用意しましょう。問題解決型のエピソードの構成は、「問題(課題)」と「解決のための障害になるもの」「解決のための行動」「行動による成果」となっているのが基本です。ある問題があった場合、以下のように観察力によって解決できた例を挙げられると良いです。
「観察力」のアピールで問題解決型の自己PRの例文
アルバイトでレストランのホールスタッフをしていましたが、あるお客様が立ち上がってしばらく着席せずに周囲を見回している様子が見えました。私は足元に注意しながらお客様に近づき、『コンタクトレンズをお探しですか?』とお声がけしました。お客様が「はい」と答えられました。
コンタクトを探してさしあげようと思いましたが、他のお客様も数組おり、離席や配膳・接客のためにレンズが破損する危険がありましたので、近くの席のお客様とスタッフに事情を伝え、通路の安全を確認・確保してから席の近くの床で捜索を行いました。何とか無事な状態でレンズも見つかり、お客様にも大変感謝してもらうことができました。
自己PRの最後は観察力をどう仕事に活かし企業貢献したいかビジョンを語る
観察力をテーマにする自己PRでは、その観察力を活かしてどのように仕事で活躍したいかをアピールしましょう。この時、自分だけに有益な内容ではなく、企業に貢献している様子が浮かぶような内容にしましょう。
- NG例文「観察力に磨きをかけて成長していきたいです」
- 良い例文「観察力に磨きをかけ、顧客の課題を解決し信頼構築に努めていきたいです」
自己PRで観察力をアピールする例文
自己PRで観察力をアピールする例文を見ながら、自己PRをうまくまとめるポイントを整理していきましょう。ここでは、3パターンの例文を紹介します。
自己PRで観察力をアピールする例文1
自己PRで観察力をアピールする例文1
私は常に周囲の状況を観察するようにしていて、観察して得たことを行動に活かすようにしています。
学生時代、サークルで部長の立場でしたが、サークル活動の中で各メンバーの参加率や表情などを常に気にしていました。様子からサークルへの関心度がわかりますし、また周囲に働きかけて一緒に辞めようとする人などもわかります。サークルの人数を維持し、より多くするために、私は注意するべき人物を早めにマークし、幹部たちに協力してもらって影響を受けそうな周囲のメンバーたちのフォローを徹底しました。こうした取り組みの甲斐あって、私の代は過去最大の人数を抱えるようになりました。
様々に変化する状況の中でも、冷静さを失わずに状況を観察して、自分の取るべき行動をしていきたいです。営業職ですので、顧客訪問の際には接する相手だけではなく周囲の様子も良く観察して、多くの情報を得て営業に活かしたいと思います。
この例文では、観察力を実際にどのような形で活かしたのかを中心にエピソードが述べられています。冒頭で「観察して得たことを行動に活かす」とアピールしていますが、その通りにサークルのメンバーの様々な様子を観察し、そこから辞めないように働きかけるという行動を起こしています。
企業が求めているのは、観察ができるだけでなく、行動ができる人であるため、こうした実践例を持っていると企業からも良い評価を受けることができます。
最後の企業への貢献でも、営業としてどのように仕事をしたいかが述べられており、具体的に活躍がイメージされます。履歴書やエントリーシートの記入欄に文字数に制限がある場合は表現が難しくなりますが、余裕があればこのくらい細かく描写すると観察力のある様子がよく伝わります。
自己PRで観察力をアピールする例文2
自己PRで観察力をアピールする例文2
私の特徴は観察力にあります。私は人の表情や仕草をよく読み取り、言葉にならない相手の考えや感情を理解できます。
私の弟は幼い頃に交通事故に遭ってしまい、言語機能がうまく発達できなくなってしまいました。そのため、手話や、ジェスチャー、表情の変化などから気持ちを察してあげる必要がありました。共働きの家庭だったため、家で弟の世話をすることも多かったので、相手の様子を細かく見ることが身についたのだと思います。
私はこの観察力を活かして、顧客の問題を冷静に読み取れる営業になりたいと思っています。よろしくお願いします。
自己PRでは、この例文のような観察力アピールがよく見られます。観察力の種類が述べられているのは良いのですが、いわゆる人間観察力にあたるもので、「相手のことがわかる」という種類のものです。履歴書やエントリーシートなどの書類上ではまだ良いですが、面接の自己PR時に話す場合は面接官へ良い印象を与えるのは難しいかもしれません。
この例文からは、その観察力がビジネスに応用できるかどうかが良くわかりません。主な内容としては、自身の観察力が身についた環境についての紹介であり、実際に観察力を発揮して活躍・貢献したという話ではないためです。自己PRでは、個人の行動や考え方がわかるような内容を伝えるべきで、身の上話や観察力の証明を求めているわけではないことに注意してください。
最後に、観察力によって「顧客の問題を冷静に読み取れる営業になりたい」と話していますが、個人相手の営業なら良いのですが、もし企業を相手に商取引をするBtoBのビジネスの場合、顧客の抱えている問題は人間観察からは読み取ることはできません。
「観察力を活かして何をするか」を具体的に考えず、本やWebサイトの自己PR文を真似ると話の辻褄が合わない内容になることがありますので注意しましょう。
自己PRで観察力をアピールする例文3
自己PRで観察力をアピールする例文3
私の強みは観察力に基づいた正確な予測の力です。
昔から物事の状況をよく見るように心がけており、観察をもとに予測をしています。
私は家庭教師のアルバイトをしていますが、生徒が推薦入試のために小論文の練習をしたいと言ってきました。しかし、その生徒の学力はまあまあですが、普段から本や新聞などを読まないために、時事問題や社会常識に疎いところがありました。試験までの期間は長くなかったため、徹底的に過去問を見て、また最近の時事問題などから傾向を絞り込み、予想問題をたくさん作って練習させました。
試験後、生徒が私に電話をくれて、「先生と練習したテーマがピッタリ出た」と喜んで報告してくれました。1週間後、合格できたと報告がありました。
この観察力と予測力を活かし、貴社のシステム部門で問題解決や業務の効率化に取り組んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。
「観察力に基づいた予測の力」が自己PRの内容になっている例文ですが、観察力と言うよりも情報収集、情報処理の能力と言った方がしっくりくるかもしれません。
こうしたケースのように、一般的に観察力と言われるものと少し違う場合は、自分の考えている観察力について一言でも注釈を入れておいた方が良いでしょう。無理に観察力という単語を使う必要もありません。何となくウケの良さそうな単語を選んでこじつけてしまわないよう注意して、適切な言葉を選ぶように心がけてください。
自己PRでアピールする「観察力」は「洞察力」と混同しやすいので注意
「観察力」と「洞察力」は似たような印象を持たれることがあり、混同されやすいかもしれません。しかし、自己PRでアピールする場合は、正確な表現を用いることが大切です。
「観察力」とは、目の前の状況や現象を冷静に観察し、その情報を正確に把握する能力を指します。一方で、「洞察力」とは、そうした情報を分析・判断し、本質的な理解や深い見識を得る能力を指します。
例えば、新商品の販売戦略を考える際に、周囲の状況や市場動向を冷静に観察することが「観察力」であり、それらの情報を分析・判断し、競合他社との差別化ポイントや顧客ニーズを洞察することが「洞察力」です。
自己PRでアピールする際には、自分自身の経験や実績を具体的に示し、それらを「観察力」として表現するのであれば、誤解を避けるためにも、「観察力」という表現を適切に使い分けるように心がけましょう。
企業が就活生に自己PRを求めるのは、採用する人材を選ぶため
就活では自己PRほぼ確実に求められますが、それは企業が採用する人材を選ぶためです。逆に言えば、採用選考するための情報が自己PRの中にあるということです。
採用を考えるための情報とは、その人の強みや特徴がどんなものかという情報ではなく、自己PRを通して見える「応募者の人間性や考え方」であり、また「この会社で働きたいという気持ち」です。
「自由に自己PRをしてください」と言われ、どんなに自分の優秀さを証明できても企業側の知りたい情報を含まない自己PRでは、選考に通るのは難しくなります。超人的な観察力があるとしても、そもそも観察力は採用の基準となる項目ではなく、他の強みや長所についても同様のことが言えます。
一緒に働きたいと企業側に思ってもらうためには、企業が求める情報を与えなくてはなりません。自己満足の自己PRでは企業は見向きもしないことを覚えておいてください。
自己PRでの「観察力」はできるだけ具体的にアピールしよう
自己PRで観察力を挙げる場合は、できるだけ具体的にアピールすることを心がけましょう。どんな種類の観察力で、どのような問題を、どのように解決したのかまで具体的に説明してこそ優れた観察力の持ち主ということが伝わります。
具体性がないと観察力が疑われることもありますし、そこが曖昧だとイメージのズレから誤解を招くこともありますので気をつけてください。