「縁の下の力持ち」を正しく自己PRしよう
就職活動で悩ましい自己PR。特に、普段前に出て目立とうとすることがない、奥ゆかしい性格の人は普段から自分をアピールすることが少ないため、どうしたものかと悩んでしまいがちです。
日本語には、目立たないとしても皆の役に立っている人を「縁の下の力持ち」と表現しますが、これを自己PRの内容として考える人もいるようです。しかし、人によっては「縁の下の力持ち」はアピールとしては地味すぎると考えてしまうようです。自己PRで「縁の下の力持ち」を使う場合について考えてみましょう。
自己PRで「縁の下の力持ち」を言うなら意味を正しく理解しよう
自己PRで「縁の下の力持ち」という言葉を使う場合は、その意味や用法を正しく理解して使うようにしましょう。中途半端な理解で間違った使い方をしてしまうと、内容を誤解されたり、また話の筋が通らず、論理的でないという評価を受けることになりかねません。
「縁の下の力持ち」とは目立たずとも陰で全体を支えるために頑張っている人を指す言葉です。縁側の下で縁側や家を支えている柱や構造が由来で、なくてはならない存在であることを示します。
そのため、縁の下の力持ちだと言いながらエピソードでは部活動のキャプテンなどの目立つ位置だったりすると矛盾が生じます。また、目立つのが嫌いだから縁の下の力持ちであるということでもありません。表からは目立って見えないとしても、その働きや重要性をみんなが認めてくれるような人に対して使います。
また、「縁の下の力持ち」は自称ではいけません。「私、縁の下の力持ちなんですよ」と自分をアピールするような言い方をすると、その意味から外れてしまいます。あくまで周囲からそう評価されているという形で使うのが正しい使い方です。
自己PRの「縁の下の力持ち」は言い換えることでもっと有効になる
「縁の下の力持ち」という言葉は、様々な場面で使うことができる便利な言葉です。しかし一方で、何を意図して使っているかが見えにくい言葉でもあります。自己PRのエピソードから、自分がどのような形で「縁の下の力持ち」としての役割を果たしているのかを具体的に考えてみる必要があります。
具体的にするためにも、「縁の下の力持ち」について別の表現に言い換えてみるのが有効です。たとえば、周囲に気を配って全体が機能するように働きかけるなら「内助の功」とも言えますし、実行するのは他の人で情報収集や計画を立てたりする「マネージャー」、また面倒な仕事を走り回って担当してくれる「汗かき役」など様々なものがあります。
自分が表現したいものについて、別の表現に言い換えができないかぜひ考えてみてください。「縁の下の力持ち」は自己PRで使用する人が多くはないため、言い換えて上手に表現をすることができれば、他の人にはないアピールとして選考通過に有利に働くこともあります。
「縁の下の力持ち」は企業のニーズを考えて自己PRする
「縁の下の力持ち」は自己PRにおいては地味でアピールに欠けるという見方をする人もいますが、就活でのアピールは派手か地味かではありません。また、特段地味ということもありません。地味に見えてしまうのは、内容や表現が地味なものに落ち着き、アピールになっていないからです。
就職活動では、企業が欲しい人材を探していますから、その求めている人材像にうまく合っていることや、企業における仕事でその特徴が活かされることがアピールできることが大切です。企業に売り込むわけですから、企業側のニーズを踏まえた自己PRが大切です。売り手市場だからと言って、自分の売り込みたいように自己PRをしても結果はついてきません。
自己PRで「縁の下の力持ち」を使う場合は、企業のニーズをしっかり考えた上で一緒に仕事をしたいと思えるような内容をよく考えるようにしましょう。
自己PRで「縁の下の力持ち」を用いた例文
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文を見てみましょう。NG例一つと、良い例を二つ、全部で3つの例文を順番に紹介していきます。
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文1(NG例)
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文1(NG例)
私の長所は、「縁の下の力持ち」になれるところだと思っています。
私は委員長や部長など、いわゆるリーダーの立場に立ったことがありません。しかし、常に私の近くにはリーダーになる人がいました。私は役職もつかず、目立つ位置ではありませんでしたが、いつもそのリーダーたちの話を聞き、一緒に考え、一緒に様々な問題の解決に取り組んできたのです。そのため、友人たちからは「一緒にいてくれて、フォローしてくれて本当に助かる」とよく言われています。「一家に一台欲しい」などと言われたこともありました。
貴社に入ってからも、目立たなくても人の役に立てる仕事を行いながら、上司やリーダーの役割を支えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
この例では、「縁の下の力持ち」であることは伝わるのですが、あえてリーダーのような役割や立場を遠ざけているような印象を受けます。就職活動ではリーダーシップが取れることやリーダー経験があることはプラスに評価されますが、そこに興味や意欲がないことが伝わることでマイナスの評価を受けてしまうこともあるので注意が必要です。
また、この例ではエピソードに具体性がありません。リーダーの立場の人と共にして、様々な問題の解決にあたったことはわかりますが、その際にどのような仕事をしたのかがよくわかりません。話を聞いて一緒に考えるなら、相談役だったのかもしれませんが真偽は不明です。
全体的に具体性が乏しいことと、ネガティブな雰囲気があることが気になります。自己PRは印象の形成に影響が大きいので、読み手がどのような印象を抱くか考え、前向きな内容を心がけましょう
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文2(良い例)
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文2(良い例)
私の長所は、「縁の下の力持ち」になれるところだと思っています。周囲の友人たちからは「いつもフォローしてくれて助かる」「一家に一台欲しい」などと言われることもあります。
私はリーダーの立場に立つことは少ないですが、他の人がリーダーになったとき、話を聞いたり、一緒に考えたりすることを大事にしています。リーダーは責任を背負い、大事な判断や発表などをしなければならないため、できるだけ些末なことに気を遣わないで済むようにしてあげたいし、孤独にならないように支えてあげたいと思っているからです。
友人が文化祭の実行委員長でしたが、私は実行委員ではありませんでしたが毎日のようにチラシの印刷や軽作業、連絡ごとの手伝いなどをしました。すべてが終わった後、実行委員の打ち上げにも呼んでもらい、たくさんの感謝の言葉をいただきました。
貴社でも、自分の位置や立場に固執せず、強みを活かして上司やリーダーがより良い仕事ができるよう様々な形で支える働きができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
先のNG例を少し修正した内容になります。この例では、どうして自分がリーダーでなくとも支えるようにしているのか、また実際の例としてどのようなことがあったかを追加し、具体性を持たせています。
エントリーシートや履歴書では文字数の制限がある場合がほとんどですが、できるだけ具体的に書いた方が読み手が状況をイメージしやすく、印象的な内容になります。
最後の段落は「目立たなくとも」は若干卑屈な感じがしますので、ポジティブに「位置や立場に固執せず」という表現にしました。意図は同じでも表現によって与える印象は変わってきますので、できるだけ前向きに聞こえるようにしっかり表現は練っておきましょう。なお、面接など対面して話す場合は相手企業を「御社」と言い、書類などの書き言葉では「貴社」と言います。
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文3(良い例)
自己PRで「縁の下の力持ち」を使った例文3(良い例)
私の長所は、「縁の下の力持ち」を喜べるということです。リーダー的な立場にも魅力は感じますが、裏で支えることにより喜びを感じます。
私はずっと野球でキャッチャーをしていました。野球ではうまくいけばピッチャーが褒められ、うまくいかないとキャッチャーが叱られます。ある時は、強打で鳴らしたチームを0点に抑えて勝利しました。試合の一週間前から毎晩対戦相手のビデオを見て有効な配球を考えたのが功を奏しました。その日、ヒーロー扱いを受けたのは当然ピッチャーで、私への周囲の評価はいつも通りでした。しかし、監督とピッチャーは後で「ナイスリード!ありがとう」と声をかけてくれました。
縁の下の力持ちは、一番評価されている人から評価されるので、それが嬉しくてたまりません。貴社でも、多くの人が気づかないとしても、わかる人にはわかる、いい仕事を着実に行って、全体を支えていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
自己PRとして「縁の下の力持ち」を使った例ですが、野球のキャッチャーでのエピソードを通してその様子を伝えてくれています。このエピソードでは、強打のチームを抑えるため、一週間前から相手を研究し、対策を考えるという努力をしています。こういった姿勢は仕事にも通じるものがあるため、企業側としても入社後の活躍を期待しやすいでしょう。
また、「リーダー的な立場にも魅力は感じる」中でも「裏で支える」方を選んでいるというポジティブな選択や、その背景にある「評価されている人から評価される」という考え方も職人気質で面白いです。仕事に対する考え方や姿勢がわかると、入社後の管理もしやすくなりますから、採用する側にとっても安心できます。
「縁の下の力持ち」を自己PRで使う場合のポイント
「縁の下の力持ち」を上手に表現できれば、自分が持つ支えることができる力を十分アピールすることができます。「縁の下の力持ち」を自己PRで使う場合のポイントについて紹介します。
自分の立場や役割を明確にする
「縁の下の力持ち」というのは、置かれている立場や個人の性質について表現するものです。そのため、集団の中での自分の立場や役割を明確に表現するようにしましょう。部活動のマネージャーだったり、名前もないような役割の場合もあります。
縁の下の力持ちを示唆する周囲の評価を入れる
今の若い人は「縁の下の力持ちだよね」と日常会話の中で使うことはあまりないでしょう。しかし、それでも「陰でいつも支えてくれている」など、同じような意味でかけてくれている声や評価があるはずですので、それをエピソードの中に盛り込みましょう。客観性のある意見は、エピソードの信頼性を高めてくれる効果があります。
縁の下の力持ちであることを説明しない
自己PRでよく見られる失敗例に、「自分がいかに縁の下の力持ちなのか」の説明に終始してしまうものがあります。最初に「縁の下の力持ち」だと言ってしまえば、それで十分です。後に続くエピソードは、その特徴がどのような場面で発揮され、どういった活躍をしたかが問われています。エピソードの中身は、企業側が採用後の活躍をイメージするためにも重要です。
「縁の下の力持ち」のアピールが効果的な職種なのかを考えよう
「縁の下の力持ち」を自己PRにする場合は、営業職などの積極性やアピール力が求められる職種を志望する場合には避けておいた方が無難です。仕事の内容と、本人の気質や性質が合わないと思われてしまうからです。
また、企画や研究開発などは営業職ほどアピール力を必要とはしませんが、職種として求められている能力や性格を考えるなら、縁の下の力持ちが効果的とは感じられません。センスや分析力などを武器にした自己PRの方がより効果的でしょう。
事務・経理・総務・秘書などの事務職全般の職種は、いわゆる企業の活動のサポートスタッフになり、顧客からはほとんど見えない部分です。まさに「縁の下の力持ち」タイプが活躍する職種だと言えるでしょう。目立たなくとも、真面目に着実に仕事ができることが信頼につながりますので、有効なアピールになることが期待できます。
職種によっても、アピールが効果的かどうかが分かれますから、何を目的にした自己PRなのかをしっかり考えて、適切な自己PRの内容を選択するようにしましょう。
「縁の下の力持ち」の自己PRは工夫次第で強い印象を与えられる
「縁の下の力持ち」という表現は、目立たないが周囲を支える重要な役割を果たす人を表現する言葉です。自己PRにおいて、この表現を用いることで、自分が日々地道に努力していることや、周囲を支える役割を果たしていることをアピールすることができます。しかし、単に「縁の下の力持ち」という言葉を使うだけでは、あまりにも抽象的すぎて伝わりにくい場合もあります。
そこで、自分がどのように周囲を支えているのか、どのような具体的な仕事をしているのかを、わかりやすく説明することが重要です。また、自分自身がどのような性格で、どのような強みがあるのかをアピールすることも効果的です。例えば、「コミュニケーション能力が高く、チーム内の円滑なコミュニケーションを促進することが得意である」といった具体的な強みをアピールすることで、単に「縁の下の力持ち」という言葉だけではなく、自分自身の魅力をアピールすることができます。
さらに、自分がやってきた仕事の成果や、自分が果たした役割がどのように組織やチームの成果に繋がっているのかを示すことも効果的です。自分自身が地味な仕事をこなしていると感じるかもしれませんが、その仕事が実はどのように大切な役割を果たしているのかを説明することで、自己PRの力を最大限に引き出すことができます。
要約すると、自己PRに「縁の下の力持ち」という表現を使うことで、自分が日々地道に努力していることや、周囲を支える重要な役割を果たしていることをアピールできます。しかし、具体的な仕事内容や自分自身の強みをアピールすること、仕事の成果や役割がどのように組織やチームの成果に繋がっているのかを説明することが大切です。工夫次第で、自己PRの「縁の下の力持ち」が、強い印象を与えることができます。