保健師になるにはどうすればいい?
保健師になるには3年制、または4年制の専門学校か大学へ通わなくてはいけません。その後看護師と保健師の国家試験に合格して免許を取得することで、晴れて保健師として就職できます。病気や怪我を予防し、国民の健康を守る保健師という職業に必要な能力や、気になる給料などを紹介します。
人気の職業である保健師になろう
看護系の中でも特に人気の高い「保健師」は、年々その必要性が高まっている職種でもあります。また、保健師は一般的にイメージする医療や看護という業界の中では少々毛色が違うといえる職業です。医療や看護という言葉を聞くと、ケガや病気を治すイメージが強いですが、保健師は「治すこと」ではなく予防することに専念した職業です。保健師について勉強する予定の方や、すでに次の試験に向けて勉強されている方も、改めて保健師になる方法を確認してみてください。
保健師はどのような仕事をしているのか
医師や看護師の役割が傷病の治療であることに対して、保健師の仕事はケガや病気の予防が主な役割です。つまり、人々の健康管理とケガや病気の予防、健康管理を図ることが主な業務なのです。
ケガや病気を治すために病院へ行きますが、出来れば身体に不調なく過ごしていたいものです。あらかじめ怪我や病気の予防に努め、その知識を常に学び、予防システムの構築を考えられる職業が「保健師」です。
具体的な保健師の仕事内容は健康に関する相談、予防注射、乳幼児の検診、健康診断など、業務内容は活躍する場所によって様々です。「子どもの成長が遅いかも」「最近、体調が良くない」といった幅広い年齢層から健康相談を受けますので、的確なアドバイス出来るだけの広範囲な知識が必要になります。
保健師になるにはどうすればいいの?
保健師になるためには以下の手順を踏みます。保健師になる際に重要なポイントは「看護師にならなければ保健師になれない」ということです。
保健師になるための流れ(4年制)
- 4年制大学の看護学科、または4年制の看護専門学校に進学
- 看護師国家試験に合格
- 保健師国家試験に合格
- 就職活動
4年制の大学や専門学校へ進学した場合、保健師を志す方の多くが看護の専門的な知識を学んだ後に看護師と保健、両方の国家試験を受験します。保健師国家試験は看護師資格がなければ受験資格を与えられませんので、看護師国家試験の勉強を重点的にしましょう。また、看護師国家試験に合格したあと保健師養成学校で半年から1年学んでから、保健師国家試験に挑む人もいます。
免許取得後は地方公務員か企業あるいは病院や学校へ就職活動することになり、採用されると保健師としての業務を行えるようになります。
保健師になるための流れ(3年制)
- 3年制の短期大学、または看護師専門学校に進学
- 看護師国家試験に合格
- 保健師養成学校に進学
- 保健師国家試験に合格
- 就職活動
3年制の大学や専門学校へ進学した場合、4年制で学ぶ人と同様に看護師免許取得を目指します。看護師免許取得後に、保健師養成学校で半年から1年ほど学んでから保健師国家試験に受験します。合格後は、前者と同様に就職活動することになります。
保健師になるために必要な資格
保健師に必要な資格は保健師免許と看護師免許です。保健師国家試験は看護師免許を取得していないと受験できないので、保健師試験の勉強ばかりではいけません。
看護師国家試験
1年に1回受験でき、平成29年度に実施した試験の合格率は88.5%で、新卒のみに絞って見てみると94.3%と、既卒者よりも高くなっています(注1)。試験科目は人体の構造・機能、健康支援と社会保障制度、基礎看護学、小児看護学など11科目で、全国11都道府県で試験が行われます(注2)。
保健師国家試験
1年に1回受験でき、平成29年度に実施した試験の合格率は90.8%でした。新卒は94.5%と、看護師国家試験同様に合格率が高いです(注1)。試験科目は公衆衛生看護学、疫学、保険統計学、保健医療福祉行政論の4科目で、全国11か所で試験が行われます(注3)。
保健師にとって重要な能力は?
ただ保健師の資格を取るだけであれば必要な知識が頭に入っていればいいですが、保健師として働いていくにはそれだけでは足りません。身に着けた知識以外に求められる能力を3つを紹介します。
思いやりの心
傷病の予防に関する専門知識を身に着けている保健師は人々の前に立って指導する立場にありますが、いくら正しい指導や助言を与えても、高圧的で偉そうな態度では人々から受け入れられにくいです。淡々と業務をこなすだけでいいということではなく、声掛けや名前を呼ぶなど、相手と同じところに立つという思いやりの心も大切です。
コミュニケーション能力
そういった面からもコミュニケーション能力というのは必要不可欠でしょう。とはいっても、高度なコミュニケーション能力は必要なく挨拶やちょっとした世間話などをする程度で十分です。上手い下手は些細な違いに過ぎませんので気にせず、相手の緊張を和らげることを目的にしましょう。
データ分析能力
保健師は知識、思いやり、コミュニケーション能力の他に、「データを見る力」があるかも問われます。教科書で学んだ見方や事例は、あくまでも画一的なものでしかありません。教科書にもあまり載っていない珍しい問題が起きる可能性は少ないですが、ゼロではありません。集団という膨大なデータの中から「異常」を早めに見つけ出すようにするには、分析能力を磨いておく必要があります。
気になる保健師の給料
保健師には行政保健師、産業保健師、学校保健師の3種類があります。産業保健師や学校保健師の給料は幅があるので一概には言えません。そのため今回は給与にある程度一定である行政保健師の給与についてご紹介します。
保健師の給料は平成28年度で月額307,771円、さらに賞与などがつき年収500万円程度になります(注4)。週休二日制で有給休暇もつきますので、かなりホワイトな職場といえます。ただし数値は平均的なものであり、年齢によってばらつきがあります。上記の例は40歳後半から50歳後半の給与とお考え下さい。
行政保健師の給与は一律で決まってしまいますが、産業保健師の場合では年収1000万円を超える方もおります。また、学校で働くという道もあり幅広い給与体系が保健師にはあります。
保健師は30代の人が多い
保健師の数は年々増えており、看護師から保健師に転職された方や一般企業に勤めていた方が一念発起して保健師免許を取得して勤め始めた方もいます。平成26年時点では48,452人もの方が保健師に登録されており、中でも30代の方が多いです。
また、保健師の方の中には長年勤めてきた職場を離れて独立される方もおり、開業保健師と呼ばれています。彼らを支援する日本開業保健師協会があり、保健師が独立するための環境を整えるサービスも充実してきているため、今後も保健師は広く門戸を開けています。
保健師は社会から求められている職業
現在の日本が少子高齢化という問題を抱えているのは周知の事実です。元気な高齢者がいる一方で、在宅治療を受けている要介護の方が増えており、治療だけでは患者自身も人でも不十分な状況になっています。
そこで必要なのが予防のプロである保健師という仕事です。保健師の目線で高齢者の健康を維持したり、必要時に医療機関と橋渡し役をしたりすることが求められています。また、2008年から「特定健康診査、特定保健指導」が実施され、生活習慣病として診断された方は医師や保健師の指導を受けなくてはいけなくなりました。まさに、社会から「保健師」という職業が求められているのです。
参考文献
- 注1:厚生労働省『第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験及び第106回看護師国家試験の合格発表について』
- 注2:厚生労働省『看護師国家試験の施行』
- 注3:厚生労働省『保健師国家試験の施行』
- 注4:人事院『平成28年国家公務員給与等実態調査の結果 第6表』