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キャッシュフロー計算書とは?会社が使えるお金はいくら?

企業について知りたいならキャッシュフロー計算書を読み解く力をつけましょう。キャッシュフロー計算書は企業のお金の動きが分かる書類です。間接法・直接法から作るキャッシュフロー計算書の見方を理解すると、企業にどれくらいのお金があるのかが分かるようになります。

会計でキャッシュフロー計算書が必要となるのはなぜか

従来の日本式会計にとって、財務諸表と言えば損益計算書と貸借対照表の2つを指していました。2つの会計情報を読み取ることで企業の財務体質が明らかになり、十分な情報が得られると信じられていたからです。

しかし、近年においては、財務諸表のメインとなる損益計算書と貸借対照表の2つでは、到底企業の財務体質を見つめ直すことが難しいと考えられています。これは、損益計算書が期首と期末の2つの時点を見て判断することと、貸借対照表が期間中の取引の総合的仕分けをする中で共通する考え方があったためです。

共通する考え方というのは実際のお金の流れではなく、将来的に持ちうる資産に関してもあらかじめ算入させてしまい、全体的に把握するというものです。網羅性を築くものである一方で、お金の実際の流れを偽ることになってしまうので、キャッシュフロー計算書はその正確性を期待されて作られた面があります。

キャッシュフロー計算書とは

そもそもキャッシュフロー計算書とは、企業のお金の流れを見るための会計報告書のひとつです。どのような時点で資産をプラスあるいはマイナスに影響させる事態が発生したかを記したものであり、記載時点で起こっていない取引に関しては見ないことになっています。

例えば、売掛金について述べるならば、貸借対照表との違いが顕著です。仮に100万円の製品を卸売り業者に売ったとしても、即座に100万円が買い手から売り手へ現金あるいは預金口座に反映させるわけではありません。翌月や当月末まで返済が延びたり、特殊な場合であればいくつかの期間に分けて返還されることも考えられます。

従来通りの記載であれば、貸方には売掛金100万円、借方には製品100万円の記載が残り、売り手の純利益には100万円の利益がプラスされることになります。しかし、実際には100万円を使えるわけではなく、返済してもらう権利があるだけの状態なのです。貸借対照表や損益計算書から実際に使える金額を割り出すことは難しいのです。

キャッシュフロー計算書は自由に使えるお金を見るシート

キャッシュフロー計算書に何が書いているのかを一言で言うのであれば、現時点で使えるお金がどの位あるかを書いてあるシートと言えるでしょう。投資しようにも現時点で使えるお金、つまり回収できている資産がどの位あるかが分からなければ企業の動きが読めず、意思決定に揺らぎが生じてしまいます。

事実上の企業の残高を正確に判断できるようにしておくために、キャッシュフロー計算書が役に立ちます。自由に使えるお金が少なく株式を増やそうとしている場合は、営業キャッシュフローや財務キャッシュローを見て、乱高下を起こさず堅調な波が作れていることが確認できれば、好転する可能性のある企業であることが予測できます。

従来では見えてこなかったお金の波を金額ベースで図るためには、もしくは企業の出入金が実際のものに即したものとして客観的に把握したい場合は、キャッシュフロー計算書が大いに役立ちます。

キャッシュフローとは?企業のお金の動きを読み解こう

キャッシュフロー計算書を作るときに書くこと

キャッシュフロー計算書なんていうモノはExcelが使えれば誰でも作れてしまう代物です。実際にはキャッシュフロー計算書のフォーマットが中小企業庁などから無料でアップされていますので、会計のプロでなくとも作成が可能です。

作成側が用意するものは二期分の決算書だけで事足ります。もちろん作る必要性を感じたのであれば、何期分でも決算書さえあれば作ることが可能です。しかし、直近の二期分の決算書だけで大体の内容が読み取れてしまうため、無理に作成する必要がありません。

キャッシュフロー計算書には、大きく分けて3つの区分が存在します。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローです。この3つの区分ごとに何を書いていくのかをご紹介していきます。

営業キャッシュフローに書くこと

キャッシュフローの計算の中でも、特に苦労を要するのが営業キャッシュフローです。計算方法としては直接法と間接法がありますが、ひとまず多くの企業が用いており、中小企業庁が作っているフォーマットにも採用されている間接法で話を進めていきます。営業キャッシュフローを計算していくには、損益計算書から情報を集めることになります。営業キャッシュフローを計算して行くには、3つの注意項目があります。

1.当期純利益

営業キャッシュフローの当期純利益は、損益計算書の当期純利益と同一のものとなります。実はキャッシュフロー計算書では、純利益をもとにしてお金の流れを整理している計算書です。ゆえに最終的な利益が異なることはありませんので、純利益ベースでの計算書と言われています。

2.非資金の費用項目

非資金と言われても難しいかもしれませんが、損益計算書や貸借対照表ではお金が実際に動いていない場合でも計上してしまうので、資産があったり、逆に引当金を取り崩しているのに減っていなかったりします。キャッシュフロー計算書では、このような支出を伴わないお金の動きを基軸として考えており、将来的な資産変動に関しては含めません。

3.回収と支払

営業活動において支払を済ませたり、回収が完了するというのは、必ずしも取引完了時と同一ではありません。受取手形や売掛金に関しては回収した分だけがキャッシュフローとして計上され、回収分が全て計上されるまではマイナスとして計上されることになります。逆に棚卸資産が減っていれば、それだけ売れたということになりますのでプラスの計上となります。

投資キャッシュフローに書くこと

投資は将来の利益に備えた資源のための費用です。将来持ちたい利益のために、どの程度のお金が動いたのかを判然とさせるために投資キャッシュフローがあります。投資キャッシュフローを計算するには、貸借対照表から情報を集めることになります。

固定資産では有形・無形は関係なく、取得すればキャッシュフローが減り、売却すれば増えます。固定資産で注意しなければならないのは減価償却費の有無です。貸借対照表には減価償却による増減分の記載がないため、損益計算書と照らし合わせて考える必要があります。

また、有価証券についても固定資産と同様の扱いで計上します。しかし、貸付金に関しては貸出の際にマイナス、返還時にプラスのキャッシュフローが働きます。

財務キャッシュフローに書くこと

経理業務において最も重要な財務キャッシュフローでは、資金調達および返済に関するお金の動きを計上することになります。借入金は借金になるため貸借対照表では負債となってしまいますが、実際にはお金が増えているのでプラスになり、返還時にはマイナスのフローが発生します。社債や株式についても同様の扱いをします。

キャッシュフロー計算書を作る直接法とは

営業キャッシュフローを作るときは、直接法と間接法から作り方を選びます。直接法を用いる場合は少ないですが、知識として知っておくことで柔軟に対応することが可能となります。

直接法を利用するということは、資金の流出入を単純に合わせることで差額として出てきた金額をそのまま計上することです。例えば、営業収入が500万円で仕入れによって200万円の費用が発生している月があれば、当該月では300万円のプラスキャッシュフローが営業キャッシュフローに発生されることになります。

直接法の長所と短所

商品の仕入れや給料の支払いなど項目ごとに総額で流れをとらえられる直接法を用いることで、営業キャッシュフローが単純計算の結果として表示されるため、該当する会計期間での収支が分かりやすくなるメリットが生まれます。これは、経理業務を行う者としてもミスが少なくなり計上しやすいものとなっています。また、調整が行われていないため、将来キャッシュフローについても予測がつけやすいという特徴があります。実際に国際会計基準としては、直接法が推奨されています。

しかし、直接法は間接法と比べると細かい項目ごとにまとめなければならないため手間がかかってしまい、キャッシュフロー計算書としてのメリットを引き下げる面があります。また、利益とキャッシュフローの差が見えにくいため扱いにくいデメリットがあります。

キャッシュフロー計算書の間接法とは

営業キャッシュフローの計算方法として、9割以上の企業が採用しているのが間接法です。間接法は損益計算書の当期純利益を出発点として捉えてお金の動きを確かめるものです。そのまま転記するだけではお金の動きは追えませんので、各項目を調整していくことになります。

調整というのは発生主義のもとに記載されている項目を収支ベースにする、つまり実際の営業活動における回収と返還が完了している状態に直すということになります。結果として得られる当期純利益は同一のものですので、合致させなければなりません。

間接法の長所と短所

間接法による営業キャッシュフローは、損益計算書に記載されている当期純利益にどれだけキャッシュとしての裏付けが行えているかを示すことになります。間接法によるキャッシュフロー計算書の作成は比較的容易に行えるため多くの企業が採用しています。

ただし、間接法ではキャッシュフロー自体が調整されて算出されたものであるため、直接キャッシュ項目を把握することが困難であるというデメリットが生じます。間接法の短所は、営業キャッシュフローに登場する項目を簡単に把握できないことと言えるでしょう。

キャッシュフロー計算書では減価償却費は加算する

キャッシュフロー計算書は、実際のお金の動きを見るための計算書です。減価償却費というのは徐々に費用計上していき資産価値を減らすものでありますが、キャッシュフロー計算書では、減価償却するものをプラスのフローとして捉えます。

減価償却を行っていても実際にお金が動くわけではないので変化なしのままにしておけば良いのですが、間接法によって当期純利益から計算を出発しなければなりません。このとき支払っている途中の費用があり、加算しないことには当期純利益と齟齬が発生してしまいます。よってキャッシュフロー計算書では、減価償却費を加算することになっています。

キャッシュフロー計算書は企業を正しく見るためのツール

企業の経営状況をしっかりと見るためには、期首と期末の書類を見るだけでは不十分です。その企業がどのくらいのお金をどのように使っているのかというお金の流れを追う必要があります。そのためにキャッシュフロー計算書というものがあるのです。決して難しい書類ではないので、是非積極的に取り入れていきましょう。