失業保険の延長制度とは?受給の流れ・申請方法
失業保険の延長制度をご存知ですか?「妊娠して退職後、失業保険の手続きに行けない」「失業したけれど病気になってしまい不安だ」「失業保険がもらえるまでの間、どうすればいいの?」「職業訓練ってなに?」など、様々なケースで役立つ、失業保険の延長の手続き方法について解説しています。
失業保険の期間延長制度を利用しよう
失業保険の制度を皆さんは利用した事がありますか?失業保険とは、雇用保険に加入されていた方が、ご自身の都合や会社の都合などで退職した後に、ハローワークから支給されるものです。一定の条件を満たしていれば、ハローワークで定期的に手続きをする事により、一般的に「失業手当」や「失業給付金」などと言われる「基本手当」を受け取る事ができます。
ですが、離職後に所定の日数を過ぎてしまうと、失業保険が受給できなくなってしまいます。失業保険の受給期間が終わるタイミングで、次の仕事を見つけられると良いのですが、様々な事情からそうはいかない場合があります。 そんなときに利用してほしいのが、ハローワークに申請をして認定を受ければ、最長で3年間失業保険の手続き期間を延長できる制度です。これは、失業保険の受給期間延長制度というものです。
失業保険とは、どんなもの?
失業保険の受給期間延長制度について説明する前に、失業保険とはどんなものかを改めて見ていくことにしましょう。会社都合や自己都合、または定年退職などで離職したあと、一定の期間国から基本手当が受給される仕組みが失業保険です。
失業保険の延長制度はすぐ働くことができない場合に利用する
退職したけれど妊娠中だったり、育児で忙しかったりしてハローワーク通いが難しい、また、病気やケガのために失業保険の受給中に求職活動ができないなどの場合には、失業保険の受給期間の延長制度を利用できます。
妊娠、育児、介護、定年退職などのやむを得ない理由で、すぐに求職活動をする事が難しく、失業保険の手続きが出来る1年間の期間を延長したいのか、それとも、公共職業訓練を受け、失業保険を受け取れる日を早くし、失業保険を受給出来る期間を延長したいのか、もう一度ご自身で考えてみましょう。それでは、これから例を上げながら分かりやすく説明して行きます。
育児のために仕事を退職したAさん(女性/30歳)の場合
Aさんは、育児に専念するため、2年間勤めていた会社を自己都合で退社しました。ですが、育児に忙しくなるため、失業保険を受給出来る1年の間にすぐに求職活動を行う事は難しく、このままだと失業保険を受け取る資格がなくなってしまいます。
因みに、Aさんがすぐに失業保険の手続きをしたとしたら、どのくらいの金額をハローワークから受け取る事が出来るのでしょうか。失業保険の受給額の算出は、退職前からさかのぼって、6ヶ月間の給与の総額(賞与などは除く)で計算されます。その6ヶ月間の平均日額に、給付率(0.5~0.8%)を掛けた金額が、失業保険の受給日額となります。
Aさんは退職日からさかのぼって、6ヶ月間に900,000円の給与がありました。
失業保険の受給日額の計算方法の目安は下記になります。
900,000(円)÷180(日)×0.5~0.8%=失業保険の受給日額(注1)
また、Aさんは勤務年数(雇用保険の被保険者であった年数)が2年、年齢が30歳で自己都合による退社でしたので、失業保険を受け取れる期間は90日となっています。(注2)
これを見てみると、いざ育児がひと段落つき、求職活動が出来る状態になったとしたら、失業保険を利用したいと思われる事と思います。ここで、この失業保険の手続きが出来る期間を延長する制度を利用しましょう。
失業保険の延長手続き退職日の翌日から1ヶ月以内
失業保険の受給延長手続きは、退職日の翌日から30日経った後の、1ヶ月以内が申請可能な期間になっています。少し分かりにくいので、具体的に例で説明します。
退職日が2017年2月1日
受給期間を延長する手続きが可能な期間:2017年3月5日~4月2日
この間にハローワークで手続きをし、認定されれば、本来の受給期間1年間に3年間を延長する事が出来ます。つまり通して、最長4年間へ受給期間を延ばせることになります。ですが、このわずか1ヶ月間の間に手続きをしなくては、原則として失業保険の延手続きは出来なくなってしまいますので、くれぐれも注意するようにしましょう!
失業保険の受給延長手続きに必要な書類は、以下の通りです。
- 受給期間延長申請書(ハローワークでもらえます)
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
- 印鑑、本人確認書類、母子手帳などの証明書類
上記は、育児が理由で申請する場合の例です。延長の申請をする理由よっては、条件が変わってきます。また、これらの提出手続きは郵送でも受け付けています。詳しくは、お住まいの所轄のハローワークにお問い合わせをして下さい。
求職しながら職業訓練を受けることにしたBさん(男性/26歳)の場合
Bさんは、ある会社の仕事に付いて行く事が出来なくなってしまい、半年間の勤務後、自己都合で退社をしました。自信をすっかり喪失してしまい、何とか新しい仕事を探したいとは思っていますが、なかなか上手いように行きません。仕事を探すにもお金がかかり、何か資格を取りたいと思いますが、やはり失業中なので経済的にも苦しい状況です。とりあえず、失業保険の手続きはしようと考えている所です。
それでは、Bさんが失業保険を受け取れるのはいつからでしょうか?答えは「失業保険を受け取れるまでの流れ」でご説明した通り、自己都合での退社の場合は、3ヶ月間の給付制限がある事から、実際に初回の失業保険が振り込まれるのは、「第一回目の失業認定日」の約3ヶ月後になってしまいます。またBさんの場合、半年間の勤務期間(被保険者であった期間)は、1年未満とされ、年齢の区分は30歳未満となり、失業保険を受け取れる期間は90日です。
そこで、ハローワークに相談してみると、ハロートレーニングと呼ばれる、離職者対象の公共職業訓練を受ける事により、様々な免除を受けられる事を知りました。
ハロートレーニングのメリット
ハロートレーニングを受ける事により、失業保険の制約が一部免除されることは、あまり知られていないようです。情報も少ないため、もし利用する場合はお住まいの管轄のハローワークへ相談するのが良いでしょう。
また、各都道府県で開講されているコースも様々ですし、無料のものや有料のものもありますので、申し込み方法や、通所、試験に関してなど、ぜひ色々と相談してみてください。ここで、ハロートレーニングにあたってのメリットを挙げてみます。
- 離職者対象の公共職業訓練を受けることにより、3ヶ月間の給付制限が免除され、すぐに失業保険を受け取る事が出来ます。
- 本来ならば4週間に1度の認定日に、ハローワークへ足を運び認定手続きをしなくてはなりませんが、職業訓練を受けている=継続的に就労への努力をしていると見なされ、受講中の職業訓練校がハローワークへの手続きを代行する事になっています。
- 受給期間が終わってしまっても、離職者対象の公共訓練コースを修了まで、失業保険の受給を延長出来る。
などです。
失業保険の正しい呼び方は「雇用保険」
私たちが一般的に、普段使っている「失業保険」という呼び方は、実は正しくありません。雇用保険料を毎月のお給料から支払っていた方が、退職後ハローワークへ申請手続きをし、条件に合った金額を、一定期間受給できることから、公的には「雇用保険」と呼ばれるのが正しいのです。
また、「失業保険料」などの表現の場合は、「雇用保険制度の中の基本手当」の事を指しています。意味は同じでも、正しい呼び方と混同しないように気を付けましょう。また、一般的な呼び方の「失業保険」でも意味は通じますが、いざハローワークで申請手続きの時に、正しく「雇用保険」と呼び変えて相談を進めた方が、よりスムーズに手続きを進める事が出来ます。
失業保険を受け取るまでの流れ
失業保険の受け取るまでには、多くの書類を揃え、何度もハローワークへ足を運ばなくてはなりません。また、ここで紹介する失業保険受給までの流れは、会社都合退職の場合と自己都合で退職した場合とでは、失業保険を受け取れる時期が変わってきます。
自己都合退職の場合、初回認定日の後の3ヶ月間は、失業保険を受け取る事ができません。つまり、この場合は、失業保険を受け取れる日が「第2回目の失業認定日」以降になり、大幅に遅くなってしまうのです。また、失業保険を受け取れる資格として、再就職する意思と就職できる能力があり求職活動を積極的に行っているが、職業に就けない状況の方々とされています。
ここで実際に、退職をして失業保険を受け取るための簡単な流れを「会社都合による退社」を例に説明します。
1.離職した会社へ次の3つの書類を発行してもらう
会社は退職日より10日以内に、以下の書類を発行しなくてはならない事になっています。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
- 雇用保険被保険者証
2.上記の書類3点と以下のものをハローワークの窓口に持参する
- マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票
- 印鑑
- 写真2枚
- 写真付きの本人確認書類
- 本人名義の貯金通帳
これらの必要書類を持参し、ハローワークの窓口で失業保険の受給申請の手続きを行います。離職日の翌日から原則として1年間が、失業保険の受給期間であり、また手続きが可能な期間でもありますので気を付けましょう。
3.申請後の7日間は待期期間になる
ハローワークで申請を終えたら、その日から7日間は待期期間となります。待期期間というのは、失業保険の申請者が本当に失業しているのかを判断する期間です。
4.待期期間終了後はハローワークの説明会に参加する
待期期間が終了してから数日後の指定された日に、ハローワークでの「雇用保険受給者初回説明会」に必ず参加するようにしましょう。この日に「第1回目の失業認定日」が決められます。
5.失業認定日の申請をする
「第一回目の失業認定日」に再度ハローワークへ行き、「失業認定日」の申請をします。
6.指定の口座に基本手当が振り込まれる
失業認定日の申請完了後、数日経ってから指定の口座へ「雇用保険の基本手当(失業保険料)」が振り込まれます。
失業認定日から、再度28日ごとに「失業認定日」の申請をハローワークで行うことにより、1年間は失業保険を受け取る事ができます。
失業保険の延長制度について正しい知識を得ることが大切
失業保険の延長制度については、受給期間を長くできると勘違いしている人もいるかもしれませんが、この制度は受給開始日を先に延ばせるというものです。原則の受給期間1年に働けない期間を最長3年まで+でき、延長できる期間は最長で離職日の翌日から4年以内までになります。この期間中に働けるようになった場合は、ハローワークで受給期間の延長を解除する手続きをすれば、失業保険を受け取る事ができます。
受給期間の延長を含め、失業保険の制度について正しい知識を得て、正しく理解する事が大切です。失業保険(雇用保険)の受給や延長の手続きで迷ったら、今回紹介したことを参考にしたうえで、所轄のハローワークへ問い合わせしてみましょう。
参考文献
- 注1:「ハローワークインターネットサービスー基本手当について」
- 注2:「ハローワークインターネットサービスー基本手当の所定給付日数」