給与明細の正しい見方ポイントは控除と支給と手取りの3つ
給与明細の見方について説明します。給与明細の支給額と控除額と手取り額について説明した後、それぞれの項目にどのようなことが書かれているのかを紹介します。また、給与明細を何年保管するべきかについても説明します。
給与明細の見方を知ろう
給与明細をもらっても、その見方がわからなくては意味がありません。しかし、実際に給与明細を受け取っても、どの項目が何の意味を持っているのかわからないという人も少なくないでしょう。
給与明細の見方を知っておかないと、自分の給料について十分に理解することができなくなってしまいます。万が一にも給料の計算が間違っていた場合などのことを想定すると、給与明細の見方は知っておくべきであると言えるでしょう。
給与明細の正しい見方ポイントは3つ
給与明細には、大きく分けて支給額と控除額という項目があります。まずはそこに注目してみてください。給与明細の見方としては、自分がいくら給料をもらっているのかということは、支給額と控除額、そして手取りから考えることがわかりやすいでしょう。
1.支給額はもらえるお金
給与明細に書かれてある「支給額」は、その月に会社が自分に対して払ってくれるお金のことを指します。毎月決まった額が支払われる基本給の他、様々な手当てが合算され支払われます。
2.控除額は支給額から差し引かれるお金
「控除額」とは、会社が払ってくれる支給額から差し引かれるお金のことです。主に税金と保険料が支給額から控除されます。
3.手取り額は支給額から控除額を引き算したお金
世間でよく言われる手取りとは、自分が実際に手にするお金のことです。会社が払ってくれる支給額から税金と保険料からなる控除額を差し引いて自分の手元に残ったお金を指します。
手取りは給与明細の差引支給額の欄に記入されています。最終的に自分の手元に残る手取りの見方がわからなくなったら、差引支給額の欄をチェックしましょう。一番下の欄に書かれているはずです。
給与明細の控除額欄に書かれている項目
給与明細の控除額欄の見方ですが、控除は主に保険料と税金のために引かれていると考えてください。会社が社員に給料を支払う前に、国や地方に納めるべきお金を給料から控除するのです。給料から天引きされている保険料を社会保険料と呼びます。ここからは社会保険料の内訳と税金を紹介していきます。
健康保険料
まず健康保険料です。健康保険は、病気や怪我で病院などにかかった場合に、治療費や薬代にかかる費用を軽減してくれるための公的な制度です。健康保険には、組合健康保険、国民健康保険、協会けんぽがあり、職業によって加入先が変わります。
給与の平均月額である「標準報酬月額」に、保険料率を掛けて保険料を算出します。標準報酬月額は、年に1回、4,5,6月の報酬の平均額で決まります。健康保険は、会社が加入しているものであれば、会社と半分ずつ支払うことになるため、給与明細に書かれているのは半分の数字となっています。
介護保険料
次に、介護保険料です。介護保険料は、40歳以上64歳未満の人が会社と折半して支払う保険料です。きちんと給与明細の見方を確認して、39歳以下であるのに介護保険料を支払っていたりすることのないように注意しておきましょう。
介護保険料は、保険料を支払う本人の給与の額や、会社の加入している健康保険組合の規定などによって支払う額が変わります。実際に自分がいくら支払っているのかを毎月確認してみてください。
厚生年金保険料
厚生年金保険料も社会保険料に含まれています。厚生年金保険料は、退職後に年金を受給するために支払っているもので、標準報酬月額×保険料率で計算されます。これも会社と従業員がそれぞれ半分ずつ支払うことになっています。
雇用保険料
雇用保険料は失業した際に支払われる保険です。これは会社と半分ずつではありませんが、それぞれ負担して支払っています。失業した際に、再就職までの生活の支えにするためのものであるとされています。
所得税
所得税は国に納める税金で、所得が多いほど課税される税率が上がる累進課税です。毎月の給料から概算した所得税を控除しますが、年末調整や確定申告によって正式な所得税が決定され、調整を行います。
国税庁の給与所得の源泉徴収税額表(平成30年分)によると、所得税の課税対象は88,000円からとなっています。つまり、給料が88,000円未満の人は、所得税を納める必要がないという事になります。
住民税
住民税は、前年度の所得に対して10%課税される税金です。国ではなく、住んでいる都道府県と市町村に納めます。新入社員は前年度の所得がありませんので、初年度は控除されることがありません。住民税の控除は入社2年目から始まりますから、控除が始まった途端「給料が減った、どうしよう」と思わないように、あらかじめ覚えておきましょう。
給与明細に書かれている控除額の見方は、きちんと覚えておかないといつの間にかよくわからないけれど天引きされている、といった状態に陥ってしまいます。自分の稼いだお金が知らないうちに引かれていってしまうのは納得いかないものですから、きちんと見方を知っておきましょう。
給与明細の支給額欄に書かれている項目
給与明細の支給額欄に書かれている内訳を具体的に見ていきます。もらえるお金の意味、見方を知っておくようにしましょう。
基本給
基本給は、その人が毎月もらうことができる決まった金額の給料を指します。基本給は必ずもらえるものであり、変動することはありません。実際にもらうことができる給料は、これに手当が上乗せされているということになります。
残業手当
さまざまな手当の中で、一番大きいのが残業手当です。これはサービス残業やみなし残業のように会社に届出を出していない残業でない限りは支払われているものであるので、必ず確認するようにしましょう。
もしも残業手当が正しく支払われていない場合は、会社の経理担当などに残業手当について聞いてみる必要があります。そのためにも、自分がどれくらい残業したのかきちんと記録をつけておきましょう。
通勤手当
通勤手当は、法の定めがないため会社に支払う義務はありません。規定もそれぞれの会社によって異なり、何kmまで○○円といったように、いくつかの区切りを設けて支給をしているケースが多いです。
しかし、通勤手当は非課税になる限度額が10万円という税制上の上限規定があります。このため、交通費の上限を10万円と規定していることが一般的となっています。
役職手当
役職手当は、部長や課長など、何らかの役職がついた場合に特別に支給される手当です。一般社員に求められる仕事と比べ、するべき仕事の幅が広がったり、責任の所在が大きくなったりした時に支給されます。
扶養手当
扶養手当は会社の就業規則によって支給するかどうかを決めて良いものなので、金額や支給の有無そのものが会社に委ねられています。扶養する人の範囲も扶養手当の金額も、支給されるのであれば、それだけでありがたい手当です。
住居手当
住居手当とは、対象となる従業員の家賃の負担を一部会社が肩代わりしたり、ローンなどの補助をしたりするための手当であり、一定の条件を満たせば支給される場合が多いです。しかし、支給条件の線引きの難しさから廃止する企業が増えている事実もあります。
資格手当
資格手当は特殊技術を必要とする職種などで見られる手当で、会社が定めた資格を取得していると支給されるものです。システムエンジニアや建築関係など、その職種は多岐に渡ります。
この他にも、会社によって色々な手当があります。給与明細では、基本給とそれ以外の手当があるという見方をしておくことが基本であると覚えておきましょう。
給与明細の勤怠欄に書かれている項目
給与明細には、支給額と控除額の他にも勤怠という項目があります。その見方にもきちんと注意しておきましょう。
勤怠項目には、「出勤日数」、「欠勤日数」、「遅刻・早退回数」、「有給回数」、「有給残回数」などが記載されています。なかには、残業時間が記載されている場合もあるため、細かく見ておくべきです。
勤怠項目は、自分が何日働いたかといったことが正しく記されているはずですから、毎月確認しておきましょう。もし誤りがあった場合は、給与にも誤りがある可能性があります。有給を使った月などは、特にチェックしておく必要があると言えます。
給与明細は何年保管するべきか
給与明細の保管期間は、未払い賃金請求の時効が2年であることから2年以上保管しておいた方がいいでしょう。給与明細は原本を保存しておくことはもちろん、パソコン上に取り込んで画像として保存しておくこともおすすめします。こうしておくことで、万が一原本を紛失してしまった場合にもすぐにデータを引き出すことができます。
アルバイトの場合は給与明細を発行してもらえない場合がありますが、その時は必ず発行してもらうようにお願いしましょう。
給与明細は、年金の確認や、確定申告の際などに使う可能性があるために保管しておくべき大切な書類です。離婚の際に親権を決めるために必要となることも考えられます。一度もらった給与明細は、すぐに捨てたりしないようにしましょう。
給与明細の見方は必ず確認しておくべき
給与明細は自分が働いた証です。その見方がわかっていないということは、結果的にどのような報酬を受け取ることができるのかがわからないということになります。給与明細は確かに少し見にくいところがありますが、一度見方を知っておけばその月から詳細を知ることができます。これを機に、改めて受け取った給与明細を見直してみてください。今までとは違った見方をすることができるでしょう。