労災とは?保障や認定の請求手続きを知っておこう
労災とは何かについてご紹介します。労災だと認められない場合についてご説明した後、給付される労災保険の種類についてご紹介します。また、労災保険の給付手続きについてご説明します。労災と認められる過労死についても触れます。
労災は他人事ではない
自分は労災に関係ないだろうと考えている人にこそ知っておいてほしいのが、労災とはなにかということです。労災は働く全ての人に起こり得ることです。
労災というと肉体労働者の怪我のイメージが強いかもしれませんが、デスクワークであろうとも、労災が発生する可能性する可能性は十分あるのです。ですから、オフィスの中にいたとしても労災が完全になくなったというわけではありません。
労災にあうことが絶対にない職業などないのだということをきちんと認識しておく必要があります。ですが、その労災とはそもそもどういったもののことを指すのでしょうか。働いていて怪我をすること、という漠然としたイメージを抱いている人は多いでしょう。
しかし、労災とは、それだけを指すわけではありません。もっと多くのケースが含まれますし、それに対応するために労災保険が用意されているということも忘れてはいけません。
労災が自分にも起こり得るものであるということを改めて認識するためにも、ぜひ労災とは何かということについて知識を深めていってください。
労災とは?
労災の正式名称は「労働災害」といって、仕事にまつわることが原因で怪我をしたり、病気になってしまったり、障害を負ってしまったりすることを指します。
業務上の事故、例えば棚から重い物が崩れ落ちてきて大怪我をしてしまったとか、高い足場から落下してしまったとか、そういった物理的な怪我のイメージを持っている人が多いでしょう。
しかし、労災とはそれだけではなく、精神的な苦痛を伴うもの、パワハラやモラハラなどによって引き起こされた疾病や過労から来る疾病や、有害物質を長年取り扱ったために引き起こされた疾病も労災であると認定される可能性があるのです。ですから、労災とは必ずしも怪我だけを指して言うわけではないと言えます。
労災の認定は労働基準監督署が行う
どういったケースを労災と認めるかということは、労働基準監督署が調べることになっています。労働基準監督署は、労災と考えられることがどのように起こったのかについて詳しく調査をして、慎重に判断を下します。労災とは、労働基準監督署が、仕事によって怪我、病気、あるいは死亡したと判断した後に、初めて認められます。
労災に認定される要因は仕事中であるかどうか
実際に、労災の認定に必要なのはどういった要因なのでしょうか。まず、労災に繋がる業務をしている最中であったかどうかということです。わかりやすいのは、怪我をした時に機械を扱っていたとか、ちょうど作業をしていたといったところでしょう。実際に労災に繋がる行動をとっていた場合は、文句なしに労災であると認められる必要条件を満たしています。
ただ、これは怪我の場合の労災としては認められやすいケースではありますが、精神的な苦痛から引き起こされた疾病の労災としての労災としての認定がなかなか難しいことも事実です。
そして、業務と労災に何らかの因果関係があったかどうかということも考慮されます。業務上、労災と呼べる怪我や疾病に繋がる何らかのトラブルがあったことを労働基準監督署が認めれば、労災として認定されます。
疾病の労災認定は難しい
仕事が原因となって労災が発生したとなると、怪我だけではなく判断が難しい疾病の方が、業務に起因するものなのか、この点について追及されることになります。労災とは、疾病と仕事との因果関係の立証が非常に難しく、認められることが難しいものでもあります。
労災は通勤中の事故も含まれる
労災とは、通勤中の事故も含んでいます。通勤中の事故に関しても、労災と認められるケースがあります。しかし、これには条件があり、通勤として定められたルートを利用していないと、途中で事故にあっても労災とは判断されないのです。
労災が認められない場合とは?
労災とは、通勤における怪我も含まれますが、例外もあります。労災における通勤とは、業務に就くため、あるいは業務が終了したために行われる行動のことを指します。ですから、帰り道に友人の家に寄ったり、居酒屋に行ったりして怪我をした場合にも、労災とは認定されません。
また、労災とは、業務起因性と業務遂行性が認められなければいけません。
業務起因性とは、業務が原因となって労働者に負傷や疾病、あるいは障害、または死亡などの損害が起こったという関係性のことを指します。こういった因果関係が認められない限り、労災とは判断されません。
業務遂行性とは、怪我や疾病が仕事中に発生したものであるということを指します。この証明は難しい場合もありますが、労災であると認められるためには必要な条件であると言えます。
また、業務とは関係なく、直接関係のない人の手助けをしていたなどの場合に怪我を負ったといったケースでも労災とは認められません。労災とは、あくまでも自分が業務に関係することにおいて負った怪我や疾病などを指しているのです。
業務上の災害でなければ労災とはならないということは、休憩時間中に遊んでいて怪我をしたという場合も労災とは判断されません。遊んでいるという行為は私的行為と判断されるため、気をつけましょう。
給付される労災保険の種類
労災が発生した場合、労災保険に頼ることになる場合がほとんどでしょう。しかし、労災保険といってもいくつか種類があります。では、具体的にどのような労災保険があるのか見ていきましょう。
療養補償給付
まず療養補償給付です。これは業務上の負傷としての労災や、病気の治療を必要とする労災に対して給付されます。この労災保険では、業務災害でかかる全ての治療費が支給されます。
休業補償給付
次に休業補償給付です。これは休業4日目から給付を受けられるもので、労災によって働けなくなった日数分の賃金の保証として支給される労災保険です。また、休業補償給付によって給付されるのは、1日につき給付基礎日額の60%です。
障害補償給付
障害補償給付は、労災によって障害が残ってしまった場合に、その等級に応じて障害補償年金が支給されるというものです。
遺族補償給付
そして遺族補償給付は、労災にあった労働者が死亡した場合、遺族に支給される労災保険です。ただし、妻以外の遺族である場合には、高齢であるか年少であるかなど、受け取るためには一定の条件を満たす必要があります。他にも、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付などが労災保険として挙げられます。
労災保険給付の手続き
実際に労災保険を給付してもらうためにまず覚えておきたいのが、労災、給付金の内容によって手続きが異なっているということです。
労災保険給付にまつわる書類は厚生労働省のホームページにある
労災保険を申請するための書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。これに必要事項を記載して、労災が起こったことをはっきりとさせましょう。また、給付金の種類によって必要な書類の種類も違うため、事前に確認しておくことが必要です(注1)。
療養補償給付は治療を行った病院に提出をしますが、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料は労働基準監督署に書類を提出することになります。
労災保険の時効に注意しよう
労災保険の申請には時効があります。例えば療養補償給付では、療養に要する費用の支出が具体的に確定した日の翌日を起算日として時効を2年としています。休業補償給付では、労働不能のため賃金を受けない日ごとにその翌日を起算日として時効を2年としています。こういった申請の時効を無視してしまうと、労災保険を受けることができなくなってしまいます。
このように、労災とは心身が傷ついただけではなく、労災保険を請求するためにも大変な思いをしなくてはならないのです。しかし、労災保険の請求を怠ってしまうと、金銭的な面で大きな損失を負うことになってしまうため、面倒でも手続きをしておく必要があると言えます。
労災と認められる過労死ラインは80時間が目安
労災と認められるのは、精神的なストレスももちろんありますが、ここでは過労死ラインをご紹介します。過労死ラインとは、残業時間の長さが過労死の原因のひとつであるという考え方です。
過労死が発症する前の1か月に100時間残業をした、あるいは発症する前の2か月もしくは6か月にわたって1か月あたり約80時間を超える残業をしたというのが、過労死ラインの基準です(注2)。
これは非常に危険な数字ですが、当てはまっていても働かざるを得ないという人も大勢いるのが現状です。過労死ラインを越えて死亡してしまった場合は、労災として認められるはずなのですが、その認定も必ず行われているのかどうかというのも疑問視されるところです。
万が一に備え労災の補償や請求手続きを知っておこう
労災とは誰にでも降りかかってくるものです。万が一自分がその対象になった時に、実際にどのように行動するかということを常に考えておきましょう。労災は日常のあらゆる場面で直面する危機であると言っても過言ではありません。
労災に対応するための方法を知っていないと、いざという時にどう動けば良いのかわからずに労災保険の申請が遅れてしまう可能性もあります。また、労災に関する様々な書類に対しての対応に追われてどうしたらいいかわからなくなってしまうことも予想できるでしょう。
労災に対しての知識は深めておくべきであるものです。労災とは何か、これまで特に考えたことがなかったという人も、これを機にぜひ一度見直してみてください。
参考文献