面接で「最近読んだ本」について聞かれたらどう答える?
みなさんは本をどれくらい読んでいますか。人によっては月に1冊も読まないという人もいますし、100冊以上読むという人もいるでしょう。
就職活動における面接でも最近読んだ本について聞かれることは少なくありません。その際にどのように答えればよいのかというと、ただ読んでいるだけではダメなのです。面接官はその質問にどんな意図を含めているのかを考えることが重要です。面接で「最近読んだ本は何ですか?」という質問にどう答えるべきなのか、ポイントや回答例を詳しくまとめました。
企業が面接で「最近読んだ本」を聞いてくる理由
そもそも企業はなぜこのような質問をするのでしょうか。この答えはすべての会社に共通するものではありませんが、以下の3点が多い傾向にあります。
1 緊張をほぐすためのジャブ
実はこのパターンが非常に多いです。新しく人事部などの採用担当者になって話がうまく続かなくなってしまい仕方なくこの質問をする方もいらっしゃいます。お互いに緊張をほぐして会話がしやすいよう根掘り葉掘り聞いてみようという試みでもあります。
しかし、これでも緊張がほぐせず会話がうまくいかない場合は、コミュニケーション能力に問題があるとされる恐れがあるので注意が必要です。話に広がりが持たせられないような返し方は控えましょう。
2 あなたの興味のある分野を探る
「あなたはどんな本を読みますか」という質問には、あなたの思考がどのような方向性を持っているかが含まれています。その方向性を知ることは今後のあなたがどういったことをしようとするのかを推測するカギになります。そのカギに対応した扉を企業が持っていればよいのですが、カギだけ持っていても仕方がありません。つまるところ「今回の人はどんなことに関心があり、その関心がウチで活かせるのか」ということを見極めています。
これはその企業ごとに偏りがある、つまり企業の主観がモノを言いますので内情を見ないことにははっきりと言えません。
例えば、あなたがマーケティングについての本を読んでいると仮定します。その本は専門書ではなく「一週間で分かるOO」や「面白いOOの世界」などと表記された、いわゆる関係者以外の方でも親しみが持てる概要が書かれた本です。そのとき、応募して企業のマーケティング担当の方にはガチガチの理論派で、毎週勉強会まで開催している熱心な方が多いとしたら少し入社させるのにためらいが生まれてしまうでしょう。
要は、どんなジャンルのどんな種類の本を読んでいるかで適性検査を行うパターンです。この場合、配属部署に大きな影響を与えることは容易に想像できます。
3 あなたの一般教養を見ている
本を読むということは頭が良い、つまり賢いと一概には言えません。いくら本を読んでいても、その知識をキチンと整理されていなければ実際に使えなければ意味がないからです。
しかし、採用担当者にとって、「本を読む習慣がある=定期的にインプットがされている」という判断材料のひとつになるのは事実です。何がインプットされているのかというと一般教養です。この一般教養というのは自分の中から自然発生するのではなく、他者の意見を吸収することで得られる世間一般の考え方に対する知識のことです。つまり、相手の言うことを正確に理解できるだけの知識を有しているかを判断する重要な行為です。
企業側はこの習慣があるかを見てあなたがどのくらい賢いかを判断します。読んでいる本のジャンルや種類、量およびその内容に関しては自由ですが、そこから得られた知識がどのように吸収されたかが企業側にとって一番の関心事なのです。つまり、「読んだ内容を暗記できますか」ではなく「その中でどういった箇所に重要なところがありますか」という質問をしているわけです。
面接での「最近読んだ本は?」に対してちゃんと答えるためのポイント
面接は一問一答形式ではなく、唯一の解を見つけるわけではありません。あなたの人となりを見ているわけで、その内容をしっかりと把握するためには話をするしかないわけです。そのため、面接で「最近読んだ本」について聞かれた場合、そこから話が広げられるような工夫が求められます。
1 「読まない」という回答はNG
最近読んでいる本というのは、厚生労働省の公正な採用選考の基本ガイドラインにある「採用選考時に配慮すべき事項」に該当する質問でもあるため、面接では聞かない企業もあります(注1)。しかし、本は応募者の興味や志向を知るヒントであり、今後の仕事配分にも重要な役割を果たす質問ですので、聞かれた際にはしっかり答えておけるよう準備しておきたいところです。
この質問に対する答えとして言ってはいけないのが「本は読みません」「どうも本は自分に合わなくて」といった一言です。これを言った瞬間に会話が終了し、せっかくのチャンスを不意にすることになります。
また、読書する習慣がないというのは勉強意欲がないと判断されかねません。これから身に着けていけばよいというのはあくまで会社内部でしかできないことです。読書はそこに含まれておらず、自分でできることをしないといった評価につながってしまう危険な回答と言えるでしょう。無理をしてでも、せめて1冊は読むようにしておきましょう。
2 書店に足を運ぶ
社会人の方や就職活動をしている方へのお勧めの本は書店に行けば必ずあります。普段は書店に足を運ばないという方、「本なんかネットで買えるし、便利だ」「図書館で借りればいいじゃないか」とお考えの方もぜひ書店に足を運んでください。
書店の方はやみくもに本を入荷し、陳列しているわけではありません。それぞれに意味を持たせて陳列しています。まずはビジネス本の面陳や平台に置かれている本を選ぶとよいでしょう。そこには売れ筋商品やそのときの社会情勢に合わせた本が並んでおり、面接官をはじめとする先輩方との会話の種になりやすいのでおすすめです。
書店の方に聞けば類似商品も教えてくれますので、一種の社会調査となり今のトレンドを測るカギになるでしょう。
3 漫画や雑誌、ライトノベルは避ける
この質問に対して本のジャンルは関係ありません。あなたの好きな本を選び、事前に読み直しておくとよいでしょう。ただし、漫画や雑誌、ライトノベルは避けるのが無難です。これは、その本が陳腐だったり駄作だったりするからではなく、これらは「読書」として認められないと考えている採用担当者も少なくないためです。
4 身の丈に合った本を読む
難しい本や自分の能力を大幅に超えたような本を選ぶのは避けるのがベストです。例えば、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を選んだとしましょう。名前を聞いたことがある方は多いでしょうが、長編で内容に機微が富んでおり、かなりの名著であることは疑いようがありません。
しかし、その良さや学ぶことは1分程度で話すことはできませんし、難しすぎる本や複雑な内容の本は誤解されやすく、内容に対する解釈の違いで訝しがられる恐れも出てきます。まとめた内容を説明できない場合は身の丈があっていないと考えるべきでしょう。
おすすめの本は以下の5つですが、そのときの情勢によって異なるので、詳しくは書店の方に尋ねてみるとよいでしょう。
- 完訳 7つの習慣 人格主義の回復/スティーブン・R・コヴィー
- 結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる/藤由 達藏
- 「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方/岩田松雄
- 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人の10の違い/紫垣 樹郎
- 入社1年目の教科書 単行本(ソフトカバー)/岩瀬 大輔
面接で使える「最近読んだ本」についての回答例文
企業によってはあなたの興味や志向を尋ねる会社があります。そうした企業の場合、あなたがその本からどのようなことを学び、どのように処理したかが求められます。
面接で最近読んだ本について質問された場合も、この点を忘れずに回答するようにしましょう。
1 ビジネス書
最初はビジネス書に関連した答え方の例です。今回は「入社1年目の教科書 岩瀬 大輔著 ダイヤモンド社」を参考に作りました。
ビジネス書の例文
私が最近読んでいる本は『入社1年目の教科書』という本です。この本には入社間もない新人が社会で生き抜くためのコツが書かれている本です。中でも私は「50点でもいいから早く出せ」という言葉が印象的でした。重要なのは1人で100点を目指すことではなく、先輩方に相談して100点に近づけることだと思うからです。いわゆる報・連・相を徹底した仕事をしなければならない理由を改めて感じました。
2 自己啓発本
自己啓発本でやってほしくないのが思想の押し付けです。こう言った本は「こうした方がいいですよ」といった説明や説得ではなく、モチベーションを上げるための1つのツールに過ぎません。そのため、あくまで私は「こういったことからやる気を出せます」というメッセージに終わってしまうことが多いので注意してください。
今回は「あなたは絶対!運がいい 浅見 帆帆子著」を参考にしています。
自己啓発本の例文
現在、読み進めている本に『あなたは絶対!運がいい』という本があります。一時期、これからのことを悲観するときがありました。そのときに出会った本がこれです。この本には人に感謝する大切さについて書いてあり、実践してみることで将来を悲観することから脱却することができました。この大切さを忘れないために改めて読んでいるところです。
3 小説
意外と答える方が少ないのが小説です。これは、物語として終わらせてしまって「面白かった」や「あのシーンが良かった」などの感想で終わってしまいやすいためです。
しかし、小説から学ぶということは他者の人生から学ぶ力を身につけることです。ぜひ、皆さまもその力を身につけるためにトライしてみてください。今回は「神様のカルテ 小学館文庫 夏川 草介著」を参考に作成しました。
小説の例文
私がここに来るまでに読んできた本に『神様のカルテ』という本があります。この本の魅力は医療現場の過酷さや人生の重みについて人間味あふれる文体で書かれているところにあります。この本から、どんなにつらいことがあっても何かの目的や理念を自分の中に持ち続けることで大きなやりがいが見つけられるということを学びました。また、この気概を忘れずに仕事へ取り組むことで何度でも取り組む姿勢が重要だと感じました。
4 専門書
ある種の企業では専門知識が求められます。例えば、会計事務所や研究機関などがあります。もちろんそれ以外の企業でもMBA取得レベルの人材が欲しくてそのような意図を持っている場合があります。ただし、この場合ではあなたが持っている知識のほかに問題意識について求められていることがあるので注意しましょう。
最後に「豊かさの貧困 ポール・L・ワクテル著」を参考にした例文をご紹介します。
専門書の例文
少々難しくすべてを理解したわけではありませんが、『豊かさの貧困』という本を読んでいます。現在、卒業論文を執筆中であることと心理的側面から今の経済がどうなっているのかを確かめたかったためにこの本を愛読しております。私たちがあるものを欲しがるときは価値観が変わったときと書いてあり、私はその変わり目に敏感になるべきだと考えさせられました。今の日本では安くて良質なものだけでなくそこに付加されるプラスαが必要だと思います。そのプラスαが何なのかを詳しく調べている途中です。
面接で「最近読んだ本」の質問に答えるために本を読もう
「どんな本でもいいから読むことが大事」といった考え方も浸透していますが、最も重要なのは自分がそこから何を感じ、どうしたいと思ったかです。
最後に紹介した専門書の類は難解ですが、やはりどんなことに問題意識を持っているかは企業側が欲するところでもあります。常に面接官が何を気にしてその質問をしているかに気を配りながら答え方を考えていきましょう。
参考文献
- 注1:厚生労働省「公正な採用選考の基本」