履歴書不要求人の「なぜ」について解説
インターネットの求人サイトや求人誌などで、履歴書不要という求人が出ているのを見かけることがあります。一般的に、求人には募集要項欄に履歴書や職務経歴書などを提出する旨が記載されているので、履歴書の提出不要という一文を見たとき、不思議に感じる人も多いでしょう。履歴書不要と書かれた求人を見た人の中には「なぜなの?怪しい感じがするし、ブラック求人ではないの?」と考える人もいるのではないでしょうか。
ここでは、履歴書不要求人へ応募する前に知識として役立つよう、履歴書不要の求人とはどんな業種が多いのか、また応募から面接の仕組みはどうなっているのか、応募前に気をつける点など、履歴書不要求人の実態を分かりやすく解説します。
履歴書不要求人の多くは派遣会社から出ているもの
履歴書不要の求人で一番多いのは、実は派遣会社の求人です。その求人広告を良く見てみると、履歴書不要という記載と併せて「短期のお仕事」「日払いOK」「お仕事多数」「登録会開催中」「登録随時」などという文字が書かれていないでしょうか。
実は、こういった求人のほとんどが、派遣会社の「短期の派遣(日雇い派遣)」の広告なのです。一見したところ、どこかの企業やお店が、履歴書の提出が不要で、直接採用をしているようにも見えるため勘違いしてしまう人もいます。
履歴書不要求人の多くは短期の派遣(日雇い派遣)
例えば皆さんが、すぐにお金が必要になり、お給料を「日払い」や「週払い」してくれるお仕事を探しているとします。そこで求人情報を見たときに「履歴書不要」「日払いOK」「今すぐ登録」というような記載のある求人を見つけた場合、そのほとんどがこの「短期の派遣(日雇い派遣)」の事だと考えていいでしょう。確かに、すぐにお給料がもらえるという仕組みは、状況によっては魅力的な求人です。
ですが、この「短期の派遣(日雇い派遣)」の契約を、派遣会社と結ぶには、労働者派遣法で定められた一定の条件があります。実は2012年(平成24年)10月の労働者派遣法の改正により、原則的には「短期の派遣(日雇い派遣)」が禁止となりました。ですが、あくまでも原則としてなので例外もあります。
短期の派遣(日雇い派遣)は原則的に法で禁止されている
現在、労働者派遣法で禁止されている「短期の派遣(日雇い派遣)」とは、以下になります。
- 派遣会社との労働契約期間が1~30日の場合(31日以上の場合は該当しません)
- もともとは継続的な労働契約期間があったが、業務上の関係で新たに1~30日の労働契約を結ぶ場合
実は、これだけです。この労働契約日数に該当する派遣会社の契約は、原則的に禁止されています。
例外として「短期の派遣(日雇い派遣)」の契約を結べる18業務
次の18業務に関しては、例外としての日雇い派遣が認められています。
- ソフトウェア開発
- 機械設計
- 事務用機器操作
- 通訳、翻訳、速記
- 秘書
- ファイリング
- 調査
- 財務処理
- 取引文書作成
- デモンストレーション
- 添乗
- 受付・案内
- 研究開発
- 事業の実施体制の企画、立案
- 書籍等の制作・編集
- 広告デザイン
- OAインストラクション
- セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
契約者の条件によって契約を結べる場合もある
また、以下のずれかに当てはまる方も「短期の派遣(日雇い派遣)」の契約を結ぶ事ができます。
1.年齢が60歳以上の方
短期の派遣には年齢制限があります。
2.雇用保険の適用を受けない、昼間の大学に通っている学生
昼間は学校へ通い、夜にお仕事をする学生さんの事です。この昼間学生に当てはまる方は、短期の派遣の契約が認められています。
3.年収500万円以上の主な仕事をしており、短期の派遣を副業とする方
年収500万円以上の、生業としているお仕事をしており、あくまでもその副業として短期の派遣の仕事をする場合は、その契約を認められています。(いくつかの仕事を掛け持ちしている場合、その内のひとつに年収500万円以上の仕事が無い場合は、短期の派遣は認められていないので注意して下さい。)
4.世帯年収が500万円以上である、主な生計者以外の方
世帯全体の年収が500万円以上ある場合、その年収を一番多く占めている方以外の、家族の方は、短期の派遣契約が認められています。
履歴書不要の日雇いなどの短期の派遣求人の場合、このような例外条件に当てはまる人しか派遣会社と契約が結べない事になっています。求人広告を見て応募し、派遣会社の登録まで済ませたものの、実際に派遣契約を結ぶ事ができなければ、せっかくの働く意欲も台無しになってしまいます。
そのような事態を防ぐ為にも、短期の派遣求人に応募する前には、どんな業務を募集しているのか、もしくは上記の1~4に当てはまるかどうかを必ず確認しましょう。「短期の派遣(日雇い派遣)」の登録から契約までの流れ
派遣会社の登録方法の種類としては下記のようなものがあります。
- 派遣会社へ行き登録をする(ここで派遣会社の様式のエントリーシートに記入する)
- 派遣会社が会場を借りて開催する登録会に参加し登録をする(ここでも派遣会社の様式のエントリーシートに記入する)
- 求人サイトや派遣会社の運用する登録サイトに入力し仮登録をする
まずは、求人広告に出ている派遣会社へ電話やインターネットで連絡や予約を取ります。この時に、派遣会社への登録日の調整まで進む事が多いので、皆さんのスケジュールや予定を確認しておきましょう。その方が、登録の予約がスムーズに進みます。
求人広告に出ている電話番号に直接電話をかけるか、求人サイトや派遣会社で運営しているウェブ仮登録という、簡易の入力フォームに基本的な情報を入力し、派遣会社からの連絡を待つというどちらかの流れが主流になっています。その他、専門のスマートフォンアプリなどを配信している会社も多くなってきています。スマートフォンを使っている場合は、アプリを使用するもの便利です。
電話で直接応募する場合
電話で応募する場合は、求人に記載されている電話番号に直接かけましょう。派遣会社の担当者が電話に出たら、何の求人誌や求人広告を見てのか、そして何の求人に応募したいかを伝えます。名前・性別・年齢・住所・現在の仕事の有無などを聞かれる場合があるので、答えられるようにしましょう。
派遣会社が登録日時の調整をする
電話で求人応募すると、派遣会社が登録日時の調整をします。「最寄りの派遣会社へ来て下さい」と言われる事もありますし、応募者の住まいの近くで派遣会社が会場を借りて登録会を行う場合もあります。応募者のスケジュールを考慮したうえで、登録の日時が決まります。
履歴書が不要かどうかを再確認する
登録日時の調整が済んだら、本当に履歴書が不要なのかを担当者に再確認しましょう。ごく稀に、求人には履歴書不要と記載していても、登録をスムーズに進めるために、履歴書を持参して下さいと言われる事もあります。その場合は、履歴書きちんと用意しなければいけません。
登録日当日に持参するものを確認する
「短期の派遣(日雇い派遣)」に応募する場合は、年収が証明出来る所得証明書や源泉徴収票、学生証などの提示が必要になります。また、契約には本人確認書類や印鑑などが必要な場合もありますので、採用担当に当日持参するものは必ず確認を取るようにして下さい。
ウェブサイトやスマートフォンのアプリから応募をする場合
電話での応募以外に、求人サイトや派遣会社が運営している仮登録用のサイト、スマートフォンのアプリなどを利用して応募する方法もあります。自分自身の基本情報を入力して送信すると、その後派遣会社から登録した電話番号宛てに電話がかかってくるという仕組みになっています。
また、派遣会社の登録日時の指定や学歴・職歴などをあらかじめ入力しておく事ができるサイトやアプリもあり、「履歴書不要」と書かれている求人では、この形式を採用しているケースも少なくありません。派遣会社によっては、ここで入力した内容をエントリーシート代わりに利用する場合もあります。いずれも派遣会社への登録作業を簡略化できるがメリットと言えるでしょう。
短期の派遣(日雇い派遣)登録日当日の流れ
登録日当日は、履歴書の持参が不要の場合、派遣会社で用意しているエントリーシートに記入する事が多いです。特に「短期の派遣(日雇い派遣)」の場合は、通称「スポット」と呼ばれる単発の仕事なので、継続的な労働契約ではない事から、記入するエントリーシートは履歴書の簡易版のようなものと考えて良いでしょう。
また、履歴書は労働契約を結ぶ前に、応募者が仕事をできる状態か、紹介する仕事に適しているかどうかなどを、派遣会社が判断するためのものでもあります。もし、記入に自信のない略歴などがある場合は、メモ帳などに書いて、別途用意しておく事をおすすめします。
仕事の説明をしっかり聞き、疑問点があれば質問する
登録日当日には派遣会社の担当者から、簡単な質問や説明を受ける時間があります。採用面接の簡易版のようなものです。担当者の説明を聞き、疑問や不安に思ったことがあれば質問しましょう。特に、給料の支払いに関してなどは、希望の支払い方法に対応してもらえるかなどを確認しておく必要があります。
短期派遣契約を結ぶ
登録が無事に済み、仕事の紹介が決まったら、派遣労働契約を結ぶ事になります。所定の契約書類を渡されますので、内容をよく読んで、理解・同意したうえで署名や捺印をするようにしましょう。契約にあたっての規約などは、後からトラブルのもとにならないよう、不安な点や不明点に関しては契約の時点ですべて確認を取るようにしましょう。
必要書類の確認後、仕事がスタートする
「短期の派遣(日雇い派遣)」の契約が認められている、上記の1~4の仕事に該当する場合、派遣会社で各種の証明書類を確認した後、「該当に間違いはありません」という覚書にも記入する事になります。それが終わったら、いよいよ仕事がスタートします。
履歴書不要の求人に応募する際には必ず「なぜ」の確認を取ること
求人情報の中にも、掲載の内容があいまいで内容が分かりにくいものが多くあります。特に「履歴書不要」と記載されている求人には要注意です。
せっかく応募して派遣会社の登録の際に、詳しく話を聞いてみたら条件が合わなかった・・・そんな事にならないよう、今回紹介したことを履歴書不要求人に応募する際は役立ててください。働こうとする意欲を削がないためにも、「履歴書不要って本当?」など怪しいなと思った事は事前に必ず確認を取る事が大切です。