もはやネタとも言い切れない「嫁ブロック」
転職に関係した話の中では、「嫁ブロック」と言われる妻からの反対意見によって思うような転職先を選ぶことができなかったというケースも耳にします。もともとは妻に反対されたことを笑いのネタとして表現していた嫁ブロックですが、もはや笑いごとでは無くなってきています。
嫁ブロックについて十分な知識が無ければ、自分の思うようなワークライフバランスでの働き方ができなくなる可能性があります。家族をお持ちの方は、常に「転職には嫁ブロックがある」と考えておくことがスッキリとした転職活動をする上で大切です。
「嫁ブロック」とはどういうこと?
「嫁ブロック」とは、既婚男性が転職や起業などを検討する際に、最終的な決定の前に家族に相談をしたところ妻に反対されてしまうことを言います。
嫁ブロックは、もともとは採用側の企業の担当者や人材会社などで使われていた業界用語ですが、今は一般にも広がり、仕事のみならず、妻の反対によって思うようにいかなかったケースで様々に使われるようになってきています。
嫁ブロックが発生する原因
どうして嫁ブロックが発生するのか、その原因をきちんと理解することは、嫁ブロックを突破するためには必要不可欠となります。「多分こうだろう」と考えるだけでなく、しっかりと相手の立場や事情に寄り添って考えることが必要です。
安定したい
嫁ブロックが発生する大きな原因は、やはり「安定したい」という願望です。家庭の財布を握っているのが奥さんという家庭は多いですが、家計を管理する側としてはできるだけ不安定な状態は避けたいものです。特に収入に大きな変化が生じる可能性がある場合には、その不安も大きくなりますので、よく話をし、長期的な視点から理解してもらうことが大切です。
就職した時と同じく、収入や昇進・昇給の見込み、福利厚生、転勤の可能性などを良く説明して、条件が良くても悪くてもきちんと理解してもらう必要があります。奥さんが実際に家計を握っている場合には数字にシビアになりますので気をつけましょう。特に自分で家計の状況を知らない男性は要注意です。
夫の仕事に対して理解が少ない
夫婦の間で、仕事に関する話が少ない時に嫁ブロックは生じやすくなります。仕事を変えたいと思う時には必ず理由があるものですが、仕事に関する対話が普段から少ないと仕事を変えたいと思ったときに背景を理解してもらえません。そのため、自分や家族を取り巻く環境が大きく変わるという事実だけが目につき、自分の事情で仕事を変えようとする夫がワガママを言っているように思えるのです。
肩書を気にする
好ましい話ではありませんが、肩書を大事にするからこそ嫁ブロックをする奥さんも少なくありません。「大手企業のマネージャー」の方が「中小企業の部長」よりもイメージが良いという人もいますし、夫の勤め先が自分にとってもひとつのステータスと考える女性は少なくないのです。
「今はそんな時代じゃない」と男性は考えるかもしれませんが、ご近所づきあいや家族・親戚づきあい、ママ友たちの中でのポジションを取っていくために、実は肩書は大きな影響力を持っていることを理解してあげる必要があります。
仕事と家庭のバランスが悪くなる
嫁ブロックが発生するケースとして多いのが、「仕事と家庭のバランスが悪くなる」ことが予想される時です。共働きなのに夫の仕事(通勤含む)時間が長くなって育児が妻に任せっきりになったり、現在の家事などのバランスが大きく変わったりするようなケースです。
専業主婦だとしても、夫があまり家にいる時間が多い(少ない)のが嫌だという人もいます。嫁ブロックにあわないように、転職によって仕事と家庭のバランスに支障がないか、よく考えてみることも必要です。
夫の将来をきちんと考えている
自分のパートナーの性格や気質、特徴について他の誰よりもわかっているからこそ、転職に反対するケースもあります。「あなたは根暗だから営業はムリ!」のように表現がきつくなることも多く、ついつい反発してしまいたくなることもありますが、将来のことをきちんと考え、夫や家族の負担をできるだけ減らしたいと思って嫁ブロックをする場合もあるのです。
転職者が嫁ブロックに合わないための対策
では、転職者が転職に反対する嫁ブロックに合わないためにはどうしたら良いのか、具体的な対策を見てみましょう。
1.仕事に関する対話を普段からしておく
嫁ブロックにあわないために一番大事なことは、仕事に関する対話を普段からしておくことです。何も会社の業績や自分の仕事のこまごまとした内容について話す必要はありませんし、妻も興味は持ちにくいのでそういった内容ではありません。
自分の仕事に関する考え方や、仕事や職場に関するちょっとした愚痴、将来へのキャリアビジョンなどを普段から少しずつ伝えておくことです。日々の情報伝達の積み重ねが、大事な決断について一緒に考えてくれるかどうかを左右します。
特に、子供がいる家庭では、夫婦の会話の中心がどうしても子供のことになってしまい、互いのことについて話す時間をなかなか取りにくいものです。夫婦二人の時間をうまく活用するようにしましょう。
2.転職は早めに相談する
嫁ブロックを防ぐために大事なことのひとつが、早く相談するということです。相談なしに唐突に転職についての話をされると、不安を感じさせてしまい、感情的に反発されてしまいます。転職を考え始めた時から、できるだけ早く相談をしておくべきです。
具体的な企業が出てきてからが本格的な相談となりますが、事前に転職の意向や動きについての相談があるかないかは、その後の協力や理解に大きな違いを生じさせますので、早く相談するようにしましょう。「条件が良い企業が出てきたら相談しよう」などと後回しにするのは絶対にやめてください。
3.転職の理由やメリットを説明する
急に「転職したい」と言われても、それを聞く側としてはどう反応したらいいかわかりません。転職するにあたっては、理由やメリットについて整理しておき、それをしっかり伝えることが大切です。転職がしたいという思いや情熱はいくら語っても、なかなか気持ちがついていきません。まずは理性的に納得しやすいように、判断ができるように具体的な材料を整理して説明しましょう。
この時、転職をする本人についてのメリットと、また家庭についてのメリットは分けて説明するようにしてください。本人のメリットばかりを主張されても、家族を顧みていないかのように感じさせてしまい、嫁ブロックが起きてしまう可能性が高まってしまいます。本人にも、家族にも、両方にメリットがあることを丁寧に伝えましょう。
4.妻が夫に求めるものを聞いておく
転職となると、どうしても「自分の仕事のこと」ですから、自分中心に進めてしまいがちです。しかし、実際には様々な形で妻も夫をサポートしているものです。その妻の意見を全く、あるいは少ししか聞かずに転職活動を進めてしまうのはどうしても問題が発生します。
できるだけ普段から、妻が夫の仕事に求めるものを聞いておくようにしましょう。収入が大事という人もいますし、収入よりも休みが安定しているのが良いと考える人もいます。勤務地や勤め先に魅力を感じる人もいます。こうした情報がわかっていると、転職先を選ぶ際にも「妻の気に入る」仕事を見つけやすく、嫁ブロックの発生を抑えるためにも役立ちます。
嫁ブロックされちゃったらどうする?
実際、嫁ブロックが発生した場合には4割くらいの人は内定しても辞退すると言われていますが、ある調査会社の追跡調査では、その後およそ6割の人が「辞退して良かった」と考えているそうです。
転職活動をしている本人には転職したい事情がありますし、転職エージェントたちも転職に向けて気持ちを盛り上げてくれますから、ついつい熱に浮かされたような状態になってしまいがちです。冷静に、地に足をつけて状況を判断してくれる嫁のブロックが良い結果になる場合も多いのは当然かもしれません。
嫁ブロックをもしもされてしまった場合は、まずは転職するしないは置いておいて、まずは自分の状況について落ち着いて考えてみましょう。本当に転職がしたいのか、転職した先で上手くやれるのか、自分に合った仕事なのか、家族に対して不安や負い目はないのかなど、冷静に考えて判断をし直してみるようにしてください。
結果として転職するべきならしっかり説得し、転職するべきでないなら諦めて家族にもそう伝えましょう。どちらの場合も、親身になって意見をくれたパートナーに感謝することは忘れないようにしたいものです。
嫁ブロックを防ぐには対話が重要
転職で度々発生する嫁ブロックは、夫婦間のコミュニケーションがうまくできていないことによって生じやすい傾向があります。時にパートナーは自分以上に自分のことをよく理解していると考えて、その意見にしっかり耳を傾けつつ、自分の考えや希望を早めに伝えるようにしましょう。
転職は自分の問題だと考えず、家族に関わる問題として、家族の意見や立場も尊重して判断するようにすることです。そのためにも、普段からの対話が、嫁ブロックされないために特に重要です。