社風を志望動機として伝える際には何を考えるべき?
就職や転職の際には面接の中で志望動機を答える場面も多いですが、ここで「社風」を志望動機とする人は多いです。しかし、実はこの社風を志望動機として書くということは、効果的な場合もあればマイナスの印象を与える可能性も否定できない諸刃の剣でもあるのです。
扱い方が難しい社風を志望動機として伝える際には、どのような点について考える必要があるのでしょうか。ベストな回答例や答え方のポイントを詳しくまとめました。
そもそも「社風」とはどういうもの?
社風というのは簡単に言えば「その会社の雰囲気」です。その雰囲気というのは実際のところ会社に所属してみないとわからない部分があります。人材採用のためのサイトなどで情報公開を行っている企業なら、社長や先輩社員などのコメントから社風を窺い知ることができますが、そうでない場合は社内に知人でもいない限りはなかなか知る由がありません。
よく誤解されるのですが、社風は企業理念や経営理念とは異なります。もちろん、理念から組織の風土が生まれるものではありますが、理念とは裏腹の実態であることも多いことに注意が必要です。
また、トップが変わる場合や、他の企業と合併したりした場合など、組織変更に伴って社内の雰囲気は大きく変わるものです。そのため、企業に対してもっているイメージだけで話を展開すると事実と合わないこともあるので気をつけましょう。
社風を志望動機にすると採用側にどのように見られる?
社風を志望動機にする人は多いため、採用する側としては正直に言ってあまり印象には残りません。
しかし、それは「志望した理由は社風」ということについてです。むしろそこを聞き流して、その後に続くあなたの意見やエピソードについて強い関心を示します。自社の社風についてどのように捉え、それに対してどのような印象を持っており、相性が合うのかどうかに頭を巡らせるようになります。ですから、「御社を志望したのは社風が合うと思ったからです」で終わることなく、その後のスピーチをしっかり考えておきましょう。
また、採用をする側としては社風に合うような人を探すというのは基本です。ですから、あえて「社風に合います」というアピールをする必要は無いとも言えます。問題は社風に合うということを、どのように伝えるかにあるでしょう。
そして、社風は変わるものですから、変わった場合でも大丈夫と思われる柔軟性があるのか、そういったところも面接の態度などから洞察していますから、「この社風でないとやっていけない人」だと思われないように注意が必要です。
社風を志望動機にする場合の例文とポイント
社風を志望動機にする場合には、どのような点に注意するべきか解答例を交えながら考えてみましょう。履歴書やエントリーシートに書く場合も面接で答える場合も基本は同じですから、しっかりポイントを押さえましょう。
1 その社風が確かなものか確認する
自分ではその企業の社風はこうだと思っていても、実際には違う場合もあります。ですから、社風については必ず確認するようにしてください。もしも違っていた場合は企業研究が不十分だと思われてしまいます。
また、独自の表現をしないように注意が必要です。社風というのは曖昧な表現となりやすいものではありますが、企業サイトなどで社風について述べられている場合はその表現をそのまま使った方が無難です。
もしくは「OB訪問をした際に先輩が『若手にチャンスを与える雰囲気がある』と仰っていて」といった具合に、誰がそのように述べていたのかを明確にした方が良いでしょう。自分で勝手に社風を解釈していると思われないように気を付けてください。
2 どの社風についてなのか明確にする
社風と言っても、その表現や内容は同じ企業でも様々です。ですから「御社の社風に惹かれました」というのではなく、「御社の『お客様第一主義』という社風に惹かれました」といったように、企業のどのような社風に対して良い印象を持ち、志望動機となっているのかを明確にする必要があります。
3 社風が志望動機になっている理由を述べる
その社風が志望動機となっていることを、具体的なエピソードと共に伝えると効果的です。共感できるストーリーを無駄なく伝えられるように準備します。
こんな答え方もおすすめ
前職では大手のレストランチェーンで働いていましたが、ラストオーダーギリギリに入ってきたお客様から注文を受けるとキッチンでは嫌な雰囲気となり、心苦しく感じていました。お客様はお食事を楽しみに来てくださっているのに、スタッフに快く迎える雰囲気が足りないのを見て、転職を考えるようになりました。何度か御社のお店に閉店間際に入ったことがありますが、どこも笑顔で応対してくれました。こうしたところから御社の“お客様第一主義”の社風が感じられ、ここでなら自分の望む仕事ができると感じ、志望させていただきました。
社風と合う人を採用するのは人事としては当然のことでもありますから、社風に合うことをあまり強調しても意味はありません。社風を志望動機にする場合には「社風が合うと思ったからです」では不足です。希望する企業の社風を正確に理解し、それがどのように志望動機となっているのかを明確に示すようにしましょう。この時、共感できるエピソードの有無は重要となりますので、しっかり準備しておいてください。
4 人間関係のネガティブな社風の話は避ける
人間関係のトラブルはどの職場でもあります。そのため「人間関係のトラブルが回避できる」が志望動機の本質と見られ、採用する側としては対人ストレスに弱い人、将来的には退職リスクのある人と考える可能性があります。ですから、人間関係のネガティブな話は避けた方が無難です。
こんな答え方は避けるべき!
以前に働いていた職場では年功序列の雰囲気があり、上司の指示が絶対と言うのが暗黙のルールとなっていました。そのために現場の雰囲気は非常に悪く、息苦しさを感じておりました。御社は『風通しの良い社風である』と採用サイトで見て、ここなら気持ちよく働けるのではないかと思い、志望しました。
上記の例文はよくあるエピソードであり、共感もできるのですが、一方では「この人は上司の言うことに素直に従えない可能性がある」とも捉えることができます。特に、まだまだ若い場合にはそういった印象を持たれがちです。自己都合の退社の場合に、責任を企業側に押し付けるような言い回しをする人もいますが、転職の面接では不利な印象を持たれることもありますので注意しましょう。
5 その会社の社風でないといけない理由はあるか?
社風というのは様々ですが、たいていは似通った表現に収まるものです。その中で、どうしてその会社を選んだのかということが、明確に表現できないのであれば、あえて社風を志望動機に出す理由はありません。
あなた「御社の『あたたかい家族的な雰囲気』が合っていると思い志望しました」
面接官「同業ではB社も同様の社風で有名ですが、どうして弊社を志望されたのですか?」
このように、詳細について突っ込んで聞いてくる場合もあります。その場合もきちんと答えられるよう、その会社や商品・サービスなどと絡めてうまく答えられるように準備しておく必要があります。
こんな答え方もおすすめ
御社の『あたたかい家族的な雰囲気』が合っていると思い志望しました。他にも同様の雰囲気を持っている会社はあるかと思いますが、大学の先輩から、御社では「少人数のチーム単位での活動を基本にしている」と伺っています。少人数だからこそ、より濃密なコミュニケーション、助け合いも可能となるのではないかと考えています。そのような中で私も働きたいと思い、御社を志願するようになりました。
社風はどうやって知ることができる?
面接や履歴書で社風を志望動機とする場合には、きちんとした情報源がある方が望ましいです。採用サイトやホームページなどから断片的には情報を得ることはできますが、はっきりと社風が述べられていることは多くはありません。
新卒なら会社説明会に参加したり、OB訪問をしてみたり、インターンシップなどを行っているなら企業の内側に入ってみて、生の現場の声を聞いてみると良いでしょう。
転職の場合は、転職エージェントから情報を聞いてみる方法や、同業者や取引先に伝手があればそこから情報を得ることもできます。また、個人向けにサービスを展開しているような企業であれば、実際にそのサービスを受けてみるなどしながら、様子をうかがうことも効果的です。
その他にも、昼休み時間などに出てくる社員の様子を観察したり、従業員が通いそうな近場の食堂などで食事をしてみるなどの方法も良いでしょう。特に、自社の食堂を一般客に開放している企業であれば、一度は訪れてみることをおすすめします。上司と部下、同僚同士など、どのような雰囲気なのかを間近でチェックできるでしょう。
社風を志望動機にするならエピソードを大切に
企業の社風や文化に共感することは、就職や転職の際に重要なポイントの一つです。そのため、自分が志望する企業の社風や文化をしっかりと理解し、それに合致する自分自身のエピソードをアピールすることが重要です。
ただし、単に「この企業の社風が好きです」といった表層的な理由だけを述べても、他の応募者との差別化が難しく、採用担当者に印象を与えることはできません。そこで、エピソードを活用することが大切です。
例えば、企業が「チームワークを重視している」という社風であれば、「大学の時にチームでプロジェクトを進めた際に、チームメンバーと密にコミュニケーションを取り合い、プロジェクトを成功に導いた経験があります」といった具体的なエピソードを交えることで、自分自身がチームワークを重視する姿勢を持っていることをアピールすることができます。
また、企業が「社員の成長を支援する」という社風であれば、「前職での研修や業務において、自己学習に努め、自己成長に繋げた経験があります」といった具体的なエピソードを交えることで、自分自身が企業の成長文化にマッチしていることをアピールすることができます。
したがって、企業の社風や文化に共感することが自己PRの重要なポイントである場合、単に表層的な理由だけではなく、自分自身のエピソードを交えることが重要です。具体的なエピソードを通じて、自分自身が企業の社風や文化に適合していることをアピールすることで、採用担当者に強い印象を与え、選考の有利な状況を作ることができます。