就活の自己PRの定番「サークル活動」の書き方には勘違いが多い
就活においては定番課題である「自己PR」ですが、その内容に苦心する学生も少なくありません。部活動ほどのキャリアではないとしても、「サークル活動」を題材に自己PRを試みるという就活生も多いものですが、そこには多くの勘違いが潜んでいます。サークル活動を通しての自己PRに潜む勘違いと、効果的なアピール方法について考えてみましょう。
自己PRで「サークル活動」のアピールは何の意味もない
自己PRにおいて「サークル活動」をアピールすることは、何の意味もありません。まずはそのことをしっかり認識しましょう。就職活動における自己PRは「企業が欲しい人材」を選考するための材料です。
しかし、そのつもりがあっても無くても、「サークル活動」の紹介に終始する学生は多いものです。特に「社会起業研究会」「AI投資同好会」など、ビジネスと関連やつながりがあるサークルに所属していた人は、そのサークルがいかにビジネス要素を多く含んでいたかを熱心に語る傾向が見られます。
ですが、「サークルの活動内容」と「本人のビジネス能力」は必ずしも一致しないことを実際に企業で働く社会人たちは良く知っています。企業が注目しているのは、「サークル活動の様子を通して見える個人の行動や考えの特徴」なのです。
そのため、「学生なのにサークルでこんな活動していたんだ、すごいでしょ」というアピールをするとほぼ失敗に終わります。自己PRで中心にするべきは個人のアピールであり、サークルの宣伝や紹介ではありません。うっかりそのような内容になっていないか注意しましょう。
自己PRを書く時は企業の視点を考えて書く
自己PRというと学生は「自由に自分をPRして良い場」だと考えますが、企業側は常に「採用活動」という文脈の中で自己PRという言葉を使っていることを忘れてはいけません。学生の中には「クラブが好きで、よく週末は朝まで踊っていました」というようなアピールをする人もいますが、大多数の企業としては、それを材料にして採用を判断することができないため、アピールとしては失敗です。
自己PRをする際には、自分のことを「採用したい人材」としてアピールすることが大前提となります。サークル活動をアピールするとしても、採用したいと思えるようなエピソードがなければ、自己満足の自分語りで終わってしまいますので注意しましょう。
企業側のニーズは、会社説明会や企業の公式サイト、求人サイトなどで確認できることが多いので、どのような人材を求めているのかよく考えてみましょう。
自己PRでサークル活動を用いる際の例文
早速、自己PRでサークル活動を用いる場合のNGと良い例文を見ながら、ポイントを確認・整理してみましょう。
「サークル活動」を使った自己PR例文1(NG例)
私は大学時代に学外のイベントサークルに所属していました。
私のサークルは、都内の学生たちを中心にしたイベントを年に3回開き、フリーペーパーの発行や著名人を招いての講演会活動など様々な催しを行ってきました。かれこれ10年以上も続いているサークルで、OBOGにはすでに起業家として実績をあげていらっしゃる方も多くいます。こうしたサークルで得られた知見や人脈は今の私にとって、大きな財産となっています。
サークルで磨き上げた運営能力やコミュニケーション能力で、同期の中でもトップクラスの営業実績をあげて貴社に貢献できたらと思います。よろしくお願いします!
このNG例ですが、典型的な「サークル活動をアピールする」自己PRです。
文章を読んでみると、自己PRとして方向がズレていることはすぐにわかると思いますが、いざ書いているときや、また面接で話している時には意外と気づかないものです。これは、自己分析が中途半端で終わってしまっていて、「サークルの価値」と「自分の価値」を混同していることから来ています。学生の間ではサークル活動の内容を聞くと「すごい」と賞賛しますが、それは「組織」に向けての賞賛です。企業は「個人」を見ているため、組織自慢は何の意味も持ちません。
そして、最後に「運営能力」や「コミュニケーション能力」を自己PRしていますが、個人としてサークル活動の中で何をしてきたかが見えない中では、その言葉も説得力を持ちません。企業に言わせれば「会社で仕事をしていても運営能力やコミュニケーション能力に問題を抱える人が多くいるのに、サークル活動に所属していただけでは運営能力やコミュニケーション能力は測れない」のです。
「サークル活動」を使った自己PR例文2(良い例)
私のストロングポイントは「調整能力にある」と思っています。
私は大学時代に学外のイベントサークルに所属し、サークルの渉外チームのリーダーをしていました。サークルでは、都内の学生たちを中心にしたイベントを年に3回開き、その他フリーペーパーの発行や著名人を招いての講演会活動など様々な催しを行ってきました。
外部の学校や、すでに社会で活躍されている方々との日程調整やイベントへの出演依頼は思いの外難しいものでした。ある時は、有名なAI研究者の方に講演を依頼したのですが「メリットが感じられない」と一蹴されました。しかしその時、「一週間だけ待ってください。提供できるメリットについてまとめてご説明にあがります」と言ってその場を離れました。
それから一週間、講演料として出せる金額を会計と相談し、また広告部と相談して動員できる客数の予測、またイベント会場での演者の書籍の売買可否などを確認して、数字化した資料をもとに具体的なアピールを考えて持っていきました。結果、「思った以上の規模でメリットがあるし、講演料も必要ない。こちらからお願いしたい」と快諾を得られるようになりました。
社会でも調整が必要な場面は多くあるかと思いますが、サークルで培った能力を活かし、周囲にWin-Winを広げていきたいです。よろしくお願いします。
NG例文の内容を具体的に掘り起こし、自己PRとして伝わりやすくまとめた例文です。
まず、冒頭で「調整能力」をアピールする内容であることを示し、その後にサークル活動がエピソードとして続きます。サークルの活動内容はあくまで簡潔に、話の展開上最小限に抑えておくようにしています。
そして、3段落目で解決すべき問題が発生しています。「メリットが感じられない」と講演を拒否された研究者に対して諦めるのではなく、猶予をもらってメリットをアピールする材料集めに奔走した様子が描写されています。その中身も、様々な部署との折衝によって相手が期待するメリットをかき集めた様子がありますし、快諾を得た結果と共に高い調整力・コミュニケーション能力を伺わせるのに十分な内容となっています。
社会でも当然このような場面が多くありますが、ただ調整をするだけでなく「Win-Winを広げたい」との考えも持っていることはどの職場でも好感されるでしょう。サークル活動の内容ではなく、個人の印象がしっかり残る、魅力的な自己PRになっています。
「サークル活動」を使った自己PR例文3(良い例)
私は大学時代にバスケットボールのサークルで2年間部長を務めました。活動の中で培われたキャプテンシーが私の武器です。
サークルでは、楽しい雰囲気を求める人と、高いレベルで技術を磨きたい人が2分化していく傾向があります。私はサークルの中の分裂していく雰囲気を早期に感じ、サークルとしての一体感を出すことに全力を尽くしました。
まず、多くのメンバーを技術レベルから3つの層に分けました。そして、毎回中間層と下位層のグループに上位層から1人ずつ担当者を送り、指導にあたらせ、ゲームにも1人ずつ上のレベルの選手を入れさせました。上位層に育成の観を持ってもらうことと、下位層に技術への憧れや敬意を与えるためです。
私は部長として方針を示すだけでなく、実際にビジョンを体現する必要がありました。実際、「わからない」「意味があるの?」という声も多かったです。私は、上位のメンバーとゲームをする時と、下位のチームに入るときとではチームの引っ張り方も、声の掛け方も変えました。上位のメンバーにはプレーで態度を見せ、下位のメンバーにはなるべく声をかけ、任せて経験を積ませフォローに徹しました。明確に違う姿を見て、また互いが互いのプレーに関心を寄せるようになってきたのを感じたメンバーが1人ずつついてきてくれるようになりました。結果、技術の壁が雰囲気を壊さない、よい雰囲気ができるようになりました。
私は組織においても常にビジョンを描き、行動をしながら引っ張るリーダーでありたいと思います。貴社でも良いチームづくりを通し、高い成果を見せていきたいです。よろしくお願いします。
これは文字数に余裕がある前提となりますが、しっかりとした自己PRの例文です。アピールに際して、具体性を高めるために思考の過程や実際の行動・施策が具体的に書かれているのが特徴です。
自己PRでは「行動特性」と呼ばれる個人が問題にあたった場合の対応や考え方が評価されている傾向があります。具体的な施策や行動、考え方を示すのは、この行動特性を知る助けになるので有効です。「スキルによる雰囲気の問題」は企業においても度々起こる問題で、採用に関わる人も興味深く聞くことができるでしょう。
リーダーシップやキャプテンシーといった「人を引っ張る力」は、当然社会人として望ましい資質であり、エピソードからも実力を感じられるのではないでしょうか。入社後の活躍も期待できそうです。
自己PRでサークル活動を採り上げる際の基本構成
良い自己PRは、基本の形がきちんとできています。自己PRでサークル活動をアピールする場合には、以下のような形を意識しましょう。
冒頭に自分の特徴に関する自己PRを入れる
まず、文の冒頭に結論となる自己PRを入れます。この時、「私はバレーボールのサークルに所属していました」ではいけません。それでは、社会人になってサークルを引退した途端に自分の特徴が無くなることになります。本当にアピールしたいのは「協調性」「根性」「リーダーシップ」などの個人の特徴であるはずです。話の主従を間違った自己PRを入れてしまう人も多いので気をつけましょう。
サークル活動のエピソードは問題解決型で書く
サークル活動のエピソードを語る際に、「地域の大学8つと交流戦を行い、トップの戦績を上げることができました」「私達のボランティアサークルでは春にゴミ広い、夏に募金活動などを行っています」など、活動紹介をする人が多いです。ディテールを伝える上で大事ではありますが、メインになる話は問題解決型の話をもってきましょう。
「地域の大学で交流戦を企画しましたが、参加してくれる大学が予想より少ないという問題がありました」などの展開であれば、それをどのように解決したのかという過程から、ビジネスパーソンとしての活躍を想像しやすくなります。問題解決型のエピソードは話としても面白く、評価も受けやすい王道パターンです。
自己PRでは今後の活躍を期待させる一言を忘れない
就活生にとって自己PRをする目的は自分をアピールすることではなく、企業から内定をもらうことです。ですから、採用担当者が入社時の活躍をイメージしやすいように一言添えて終わると良いでしょう。「サークル活動で培われた調整能力を武器に、たくさんの顧客と質の高いコミュニケーションを取れる営業になりたいです」など、サークル活動と今後の仕事を結びつけてみましょう。
実は「サークル活動」の自己PRは幹部受けがいい
サークル活動を行ってきた人の中には、部長や幹部としてサークルの運営を担ってきたという人も少なくないでしょう。幹部経験者たちのエピソードは、ツボさえ間違えなければ、社長などの役員や部長クラスなどの企業幹部に受けの良い内容になります。
その理由は、サークルの運営も企業運営と同じく「組織の運営」であり、組織の運営の中で生じる資金繰りの問題や、実績・伝統の問題、人材の問題などはどこも同じです。こうした問題に対して、責任感を持って対応してきたエピソードは共感を呼び込みやすく、またその中心になった人材は将来の幹部候補としても魅力的に映るものです。
そのため、サークル活動で何か役職を背負って活躍したエピソードがあれば、自分をうまくPRできる材料になりますので有効に活用するべきです。
最後にチェックするべきポイントはサークル活動の自己PRに「ブレがないか」
自己PRでサークル活動を取り扱うなら、最後に必ず「ブレがないか」確認するようにしましょう。
自己PRとして書き始めたのに、気がつけばサークル紹介になっていたり、また強みとして取り上げたポイントがエピソードの中で出てきた他の強みに変わっていたりしがちです。また、あれもこれもと複数の強みが強調されていたりすることは少なくありません。
ブレなく一つのテーマでエピソードを作るというのは意外に難しいものです。特に、サークル活動などはネタも豊富で、書きたいことも多くなりますから、その過程でブレが生じやすくなります。ブレをなるべく作らないためにも、ネタが多い題材の場合は文章はできるだけ短く、最低限を心がけるのが良いでしょう。
自己PRでサークル活動を扱う際は誰に何をアピールしているかよく考える
自己PRでサークル活動をアピールする際は、どのような企業や職種を志望しているかを考慮し、その企業や職種が求める能力や特徴につながるようにアピールすることが大切です。
例えば、営業職を目指している場合、サークル活動で責任ある役職を担当していた経験があれば、リーダーシップやチームワーク、課題解決能力といった営業職に求められる能力をアピールすることができます。また、サークル活動でイベントを企画した経験がある場合は、企画力やプロジェクトマネジメント能力をアピールすることもできます。
一方で、企業や職種に関係のない、ただの趣味や興味に過ぎないサークル活動をアピールするのは避けるべきです。また、単にサークル活動に参加していたというだけでは、自己PRとして十分な説得力を持たせることが難しいため、どのような役割や業務を担当し、どのような成果を出したかを具体的にアピールするようにしましょう。