自己PRで集中力を出すならどのようにアピールする?
就活中の学生にとって、慣れない自己PRは難しく感じる課題のひとつです。その自己PRの題材を何にするか、自己分析を行った結果、「集中力」を選ぶという人も多くいます。しかし、その集中力のアピールは実は企業の求めるものとは違う、独りよがりなものになってしまいがちです。
集中力がある人材は企業から見ても望ましいのですが、自己PRではどのように集中力をアピールすると企業側によい印象をもってもらえるのでしょうか。
自己PRの「集中力がある」を企業側の目線でも考えてみよう
自己PRで学生が陥りがちな失敗として、「企業の目線でなく自分目線でのアピールになる」というものがあります。これはテーマが集中力であったとしても、そうでないとしても往々にしてあります。
デスクワークの仕事で「力自慢」をアピールするなど、最初から方向性が間違っているような場合もありますが、より多いのが「いかに自分がその能力を持っているか」を必死で説明するというものです。たとえば、「集中力がある」なら「24時間寝なくても大丈夫」「作業に没頭して、終わったら体重が5kg減っていた」など極端な自己PRエピソードが並ぶことが少なくありません。
しかし、自己PRで語られる集中力というテーマで企業が求めているのは「どのくらいすごい集中力の持ち主か」ではありません。企業が求めるのはあくまで「一緒に働きたい人」であり、仕事上活かせる集中力なのかが問われています。そのため、自分本位の集中力アピールにならないよう、企業側のニーズを汲んだ内容が求められます。
集中力の自己PRは裏返ると短所になることを理解しておく
集中力を自己PRに用いる人の多くは、よい意味で使っていると思いますが、百戦錬磨の採用担当者たちは集中力が高いという人材にありがちな「周りが見えない」短所もよく理解しています。これには先回りしてしっかり対応しておくことが肝心です。
集中力は、「周りが見えなくなる」という短所にも見えることがあります。そのため、自己PRをする際にエピソードの中で、できるだけ周囲についても配慮ができるという部分も見せた方が良いでしょう。
また、自己PRでの集中力エピソードでは「気付いたら何時間も過ぎていた」などの内容だけでは不足で、その集中力をどのように使い、何を成し遂げたのかをしっかり描写する必要があります。そして、集中力が仕事にどう活かせるのかを具体的に考える必要があると言えるでしょう。
集中力を短所にしないためにも、短所をフォローし、そして長所がより鮮明にイメージできるように自己PRの内容を考えてみましょう。
集中力をテーマにした自己PR例文
集中力をテーマにした自己PRの例文を3つ見てみましょう。自己PRで集中力があることをアピールしたい人は、次の例文をぜひ参考にしてください。
集中力をテーマにした自己PRの例文1
私の長所は集中力にあると思います。
子供の頃から中学生まで、ピアノ教室に通っていて、今でも趣味として家で演奏することもあります。ピアノの演奏中は非常に多くのことに気を遣います。両手の全ての指先に神経を払いますし、また楽譜には多くの音符が並んでいてそれをリアルタイムで処理しなくてはなりません。5分間の演奏でも、難しい曲になると、精一杯演奏するとすごい疲労感に襲われます。
正確さが求められるため、練習の中でも集中することや気持ちの切り替えなどを口酸っぱく言われてきました。こうした中で鍛えられた集中力が、正確さとスピードを求められる事務仕事の中でも活かされると思っています。よろしくお願いします。
集中力が求められる環境の中で鍛えられてきたことがわかるエピソードです。音楽をやってきた人であれば共感できるでしょうし、そうでない人にもピアノを弾くことは相当の集中力を要することが伝わるのではないでしょうか。
自己PRエピソードの中で、ピアノを弾くことがいかに集中力を要するかが具体的に書かれているため、集中力がありそうだという印象をもたせることができています。ひとつ要求するなら、集中力があることは期待できるものの、その集中力で何かを成したという内容を加えた方が就活上は良いアピールになるということです。ビジネスの世界は問題を解決することで報酬を得るものですので、その能力の有無が問われる傾向があるのです。
集中力をテーマにした自己PRの例文2
私の強みは集中力にあります。
私は小学校の時から将棋に打ち込み、一時はプロを目指していたほどです。現在、アマチュアで4段の段位を持っています。将棋の対局は非常に集中力が求められます。盤面全体を見回しつつ、相手の考えを読み、自分の作戦を頭の中で組み立てる必要がありますが、集中が途切れるとそれまでの思考が全て台無しになります。
ある時、地域のアマチュアの大会で、決勝進出がかかった大事な一局を迎えました。勝負を分ける大事な局面で、私は残り時間として持っていた13分をひたすら1手を指すために使いました。そして、完全に相手の手を読み切り、そこからは30秒の秒読みの中で指すべき手を確認しながら正確な差し筋で勝利を収めました。感想戦でも、「あの長考の一手が決着でした」と対局者から言ってもらえました。
私は将棋で培った集中力で、大事な局面でしっかり考えて最善な行動ができるようにしていきたいです。特に貴社では、店長としてアルバイトを統括していく立場になりますので、一つ一つの決定を大事にしていきたいと思います。よろしくお願いします。
集中力をテーマにした自己PRですが、この例文では将棋における集中力の重要性と、そして実際の対局での集中力の発揮が描かれています。一手を指すために13分間ひたすら考えるというのは非常に高い集中力や忍耐力を要求されると思われますし、その後も「30秒の秒読みの中で正確に」指す必要があるなどとかく気が抜けません。その中で最善の手を指し続けられる集中力は、メンタルの強さとも言うことができ、高く評価されるでしょう。
ここでは店長という多くの人をまとめ、方向づける立場の仕事で活かしたいという結びになっていますが、エピソードからも十分にその能力があるのではと期待できます。アマチュア四段という段位も、わかる人には、それだけ研究心が旺盛で研鑽してきた向上心のある人に映り、プラス評価になりそうです。
集中力をテーマにした自己PRの例文3
私の強みは「集中力」です。
私は中学高校とバレーボールをしてきて、高校では全国大会にも出場しました。バレーボールは1点ごとにゲームが切れるスポーツで、集中力を最後まで維持するのが大変なスポーツです。ボールだけでなく、相手や味方の位置などをよく見て、瞬間で適切な判断を下す必要があります。
全国大会で、相手は現在日本代表にもなっているエースアタッカーを擁する強豪と戦ったときのことです。迎えた最終セットで、相手チームのエースのアタックの際に、味方のブロックがついていけずに間ができてしまいました。
私はその時後衛でしたが、その瞬間の様子を見て決まっていた持ち場を離れ、すかさずその間のコースを埋めました。強烈なスパイクがブロックの隙間を縫ってきましたが、いち早く入っていた私の正面で、見事に受けることができました。その一本のレシーブで流れが変わり、私たちは強豪を倒すことができました。
仕事においても切り替えは大事だと思いますが、バレーで鍛えた集中力で、オンとオフをしっかり使い分けてやっていきたいです。よろしくお願いします。
バレーボールを題材に集中力をアピールした自己PR例文です。集中力が必要だということはわかるものの、少々説明が難しい面もあり、十分には伝わらないかもしれません。エピソードは面白く聞けますが、最終セットが集中力を保つのが難しい状況であることや、またエピソード中のプレーが集中力から出たものであることが読み取りにくいため、結びの内容についても繋がりが見えにくくなっています。
題材が良いだけに、しっかりと伝わる自己PR文章にできるようにブラッシュアップすることが大切です。自分の「伝わるだろう」という甘えは捨てて、何度も見直したり、第三者に見てもらうと良いでしょう。
自己PRしたい集中力を他の表現で考えてみよう
集中力というのは、様々な形で表現することが可能なものです。単に「集中力」という表現を使うと、没頭するイメージになりがちですが、他の表現も考えてみると自分のアピールしたい集中力の形が明確になってエピソードもまとめやすくなります。
持久力がある
「集中力がある」という場合、「強く没頭できる」タイプもいれば「集中力が持続する」というタイプの人もいます。もし集中力が持続するタイプであれば、それは持久力があると言い換えても良いでしょう。単調な作業が続くような仕事や、正確さ、粘り強さが求められる仕事においてはとても良いアピールになります。
切り替えができる
多くの人は何かを行う際に、気持ちが切り替えられずにスタートが遅くなります。しかし、集中力があると言う人の中には、物事に取り組んですぐに没頭できるという人もいます。短時間集中して、少し休んで、すぐまた集中できるという人は疲れにくく、また周囲を見渡す余裕もあるのでマルチタスクにも向いています。切り替えができるという特性で集中力を自己PRするのも良いでしょう。
高い能率で作業できる
もともとの能力が高い人の中には、集中することによって超人的に仕事をこなすことができる人もいます。そのような高い能率で作業ができるのも集中力の成せる業です。特に多くの仕事をこなさなければならない仕事に就くほど、この種の集中力がある人は成功しやすくなります。
集中力を自己PRで使う際のポイント
集中力を自己PRでうまく扱うにはコツが必要です。自己PRで集中力をテーマにする際のポイントについて確認しましょう。
結論から先に書く
ビジネス文書では、最初に結論を書くようにします。起承転結の展開は結論がわかりにくいので、効率を優先するビジネス向きではありません。「私は集中力があります」と最初に結論を示し、続けてエピソードなどでその論拠を示していくスタイルで内容を作成します。
集中力のエピソード中では数字を盛り込む
「集中して頑張りました」ではどのように集中力があるのかが伝わりません。「5時間の間休息も取らずに作業に取り組みました」「A4で100ページに渡るレポートをひたすら書き続けました」など、具体的な数字があることで集中力をもって行動した様子がリアルにイメージでき、説得力が高まります。
短所を補う「集中力がある」アピールにする
「集中力がある」という場合の短所は「周りが見えなくなる」ということです。どんなに集中力のある人でも、作業に没頭して会議や取引先の訪問を忘れてしまうなら大変です。欠点を自覚して注意している様子を示したり、周囲が見えなくなるような集中の仕方でないことをアピールすることが大事です。
集中力と仕事を結びつける
仕事で活躍できる人材であることを自己PRするためには、集中力と仕事をしっかり結びつけてアピールすることが大切です。たとえば、「長時間の作業になってもミスが少ない」タイプの人であれば、その性質を活かして「編集や校正の仕事を頑張りたい」というアピールをすることで職場での働きぶりがイメージしやすくなります。
集中力アピールで「受験勉強」は避けた方がよい
集中力を自己PRで使う際に、しばしば題材として「受験勉強」を持ち出す人がいますが、これはあまりおすすめできません。旧帝大や有名私学、医学部レベルであればそれなりに評価をされるかもしれませんが、受験勉強は誰もが通ってきているため、差別化が難しいのです。
受験勉強において「集中力がある」と言った場合には、よく時間が引き合いに出されますが、大事なのは勉強の中身ですし、その時間すら人によって基準が違うため、自分の基準で「集中力がある」というと「そうでもない」可能性もあります。基準の低い人だと思われてしまうのはマイナスにしかなりません。
また、受験勉強は長期にわたって行われるべきもので、一日だけ集中して勉強した程度では結果に結びつきません。そのため、受験勉強で集中力をアピールすること自体がナンセンスという見方もできます。自分にとっては最も集中力を感じることができた経験だとしても、周囲はそう受け取ってくれないこともあることを理解してください。
自己PRでの集中力のアピールは、企業側の視点をよく考えて
自己PRでの集中力のアピールは、企業側の視点をよく考えた上で、自分自身の経験やスキルをアピールすることが大切です。
具体的には、自己管理能力が高く、タスクに取り組む際には常に集中して取り組んでいることを示したり、複数のタスクを同時にこなす能力があることを述べたりすると良いでしょう。また、集中力を高めるために日々努力していることを強調することも効果的です。
さらに、具体的な事例や成果を挙げることで、自己PRの説得力を高めることができます。例えば、プロジェクトの進行管理やデッドラインの厳しい業務において、集中力を発揮して成果を出した経験を挙げることで、自分自身の実績を示すことができます。
ただし、企業の求める職務に対して、どのような集中力が必要であるかを理解した上で、それに合わせたアピールを行うことが重要です。求人情報や企業のWebサイトを確認し、その企業が求める人材像や職務内容を把握しておくことが大切です。