志望動機の「社会貢献がしたい」は就活ではNGワード?
学生から社会人になれば、仕事を通して社会に貢献することを求められます。今までは様々なサービスを受ける側だったところから、社会に対して貢献できるという変化に胸を躍らせる人も少なくありません。
しかし、そんな学生たちの気持ちとは裏腹に、就職活動においては「社会貢献がしたい」はNGワードと言っても良いほど評価されない志望動機になっています。そこに気づかずに志望動機として主張し続けて、連戦連敗という人も多いです。志望動機で「社会貢献がしたい」はなぜダメなのか、その理由と対策を紹介します。
志望動機で社会貢献がだめな理由は「当たり前」だから
志望動機で社会貢献を述べることが「当たり前」だということは、その分野や職種に対する一般的な期待や価値観がそうであるということを示しています。しかし、それだけでは十分な理由とは言えません。
具体的には、社会貢献を志望動機とする場合、その職種や企業がどのように社会貢献を実現するのか、自身がどのように貢献できるのか、といった具体的なアプローチや考え方が必要です。また、社会貢献を目的とする職種や企業であっても、必ずしもその職種や企業が社会貢献に寄与するとは限りません。
つまり、志望動機として社会貢献を述べること自体には問題はありませんが、その根拠や具体的なアプローチを明確にし、自己分析や企業研究を行うことが必要であると言えます。また、単に「社会貢献をしたいから」という表面的な理由ではなく、自身の経験や価値観とも関連づけて、より深い理由を示すことが望ましいでしょう。
志望動機で語る社会貢献を考える際のポイント
社会貢献をどうしても志望動機にしたいなら、次のような点に気をつけて考えてみましょう。いくつかのポイントを紹介します。
志望動機では「社会貢献」というフレーズが必ずしも必要ではない
志望動機で語る「社会貢献」という言葉は非常に聞こえの良い言葉ですが、企業活動では当然のことでもあります。そのため、社会貢献という言葉に特別感はなく、印象面で他の応募者と差別化することにはつながりません。必ずしも社会貢献というフレーズが必要なわけでもありません。
たとえば食品会社なら、社会貢献の方向性は良質な食品の提供、便利な食品の提供などいくつかの方向性があるはずです。「良質な食品の提供を通して社会に貢献したいと考えています」と言ってもよいですし、あえて社会貢献と言わず「良質な食品の提供を通して毎日の食卓を豊かにしたいと考えています」と具体的な方向性を出した志望動機とすると良いでしょう。
志望動機で企業の目立つ社会貢献活動を挙げる
企業は基本的に事業活動を通して社会貢献をしていますが、企業の中には他にも目立った社会貢献活動をしている企業もあります。福祉団体に寄付をしていたり、スポーツ大会のスポンサーとなっていたり、ボランティア休暇を導入し地域のゴミ拾いボランティアに組織的に人を派遣しているなど、様々な形で社会貢献活動をしている場合があります。
事業活動とは別に行われている目立つ社会貢献活動を例に挙げて志望動機を語るなら、他の会社ではなくその会社を志望する動機として十分ですし、企業としてもしっかり企業研究をしていることを評価してくれるでしょう。
企業は「社会貢献」を志望動機にされてもあまり嬉しくない
企業は社会貢献をするために存在していますが、学生があまりにも一部の社会貢献活動のことばかりを気にかけているようなら、企業としてはあまり嬉しくありません。なぜなら企業の本分は事業活動にあるからです。
基本的に事業活動以外の社会貢献活動は利益を生み出さないため、止めてしまいたいと考えている企業も少なくはありません。就活生が一部の社会貢献活動を目的に企業を志望してきた場合、その社会貢献活動が無くなった場合に辞職しないかという懸念がつきまとってしまい、採用しにくくなります。
企業が一番嬉しいのは、企業の事業を評価してくれることであり、事業上の強みやこだわりの部分、人材や風土について評価してくれることです。志望動機は自分の思いを何でも言えばいいというものでなく、企業側の印象を考える必要があります。
また、企業が欲しいのは事業に貢献できる人材であり、社会貢献意欲が高い人材ではありません。内定を得ることが目的であるなら、企業側の考えを理解した内容で志望動機のアピールをするのが賢い方法です。
志望動機で「社会貢献」を上手にアピールする構成ポイント・書き方
就職活動における志望動機の構成にはある程度決まった型があります。社会貢献を志望動機として上手にアピールするための構成ポイント、書き方を考えてみましょう。
最初に志望動機全体の結論を簡潔に示す
最初に、全体の結論になる内容を簡潔に示します。志望動機を問われていますので、「私が貴社を志望するのは、貴社の●●という事業を通して社会に貢献したいと思ったからです」のように答えましょう。余計な修飾は内容を理解しにくくしますので、シンプルで構いません。
志望動機のテーマとする社会貢献について詳しいエピソードを語る
社会貢献を志望動機のテーマにするなら、次にその社会貢献をしたい理由についてエピソードを伝えます。この時、企業はエピソード内容から見える就活生の人間性に着目していますので、エピソード内容が立派であるかどうかは評価の対象ではありません。カッコ良さよりも自分らしさが出ているエピソードを選びましょう。
また、企業は社会貢献意欲を見ているのではなく、ビジネスの中で企業に貢献できる人材かどうかを見極めようとしています。そのため、できるだけビジネスとの関わりを感じさせるような社会貢献の題材を選ぶのがポイントです。
最後に志望動機全体をまとめて今後のビジョンを伝える
最後に、エピソード内容から再度志望動機に関係する部分をまとめたあと、入社後どのように活躍していきたいのかビジョンを伝えるようにします。
ここでも「社会貢献を頑張りたい」という内容ではなく、基本的には「社会貢献を通して企業を多くの人に知ってもらい、地域と企業にwin-winの関係を作りたい」など、事業に関連するビジョンを示すようにしましょう。
志望動機で「社会貢献」をアピールする場合の例文
ここでは、社会貢献をアピールする志望動機の例文を紹介していきます。例文を見ながら、企業に与える印象などについて考えてみましょう。
「社会貢献」をアピールする志望動機の例文1
「社会貢献」をアピールする志望動機の例文1
私が貴社を志望するのは、貴社が行っているインフラ整備を通して社会に貢献したいと考えるようになったからです。
私が中学生の頃に東日本大震災があり、私の住んでいた地域でもしばらくの間はライフラインが途絶え、学校も休校になるなど大きな被害がありました。大きな災害を通して、普段の生活が、電気や水道、インターネット、道路、河川などいかに多くのインフラによって支えられていたかを深く考えるようになりました。その後からは、道路工事などを見ても感謝する心が湧いてくるようになりました。
貴社は配電線の点検管理や修理などを行っていますが、電気という私達の生活に無くてはならないものを支える大事な仕事だと思います。私はこの仕事を通して、街の人々に安心して使えるライフラインを提供したいです。また、もしもの災害の際には一刻も早く人々に安心を再び与えられるように頑張ります。よろしくお願いします。
「社会貢献」をテーマに志望動機をアピールしている例文です。ここでは、配電線というインフラの整備を行う職種について、志望理由を述べています。
震災を通しての経験がバックグラウンドにあり、ライフラインについて大事に思っている様子がエピソードから伝わってきます。この体験から、インフラ整備という社会貢献を大事に考えていることは十分に共感できるでしょう。
最後のまとめも、事業内容について大事な仕事だと考えていることや、自身が仕事の中でやっていきたいことを志望動機やエピソードと絡めて話すことができています。事業内容の中にある社会貢献をアピールするなら、このような志望動機の書き方を参考にしてください。
「社会貢献」をアピールする志望動機の例文2
「社会貢献」をアピールする志望動機の例文2
私が貴社を志望するのは、貴社の行っている少年スポーツへの協賛の取り組みを非常に尊敬しているからです。
私は子供の頃から野球少年で、大学まで野球をひたすら頑張ってきました。中学生の頃、毎年出場していた大会が中止になるという話がありました。スポンサー企業が倒産してしまったことが原因とのことでした。しかし、その時に貴社がスポンサーとなってくれ、当時の社長が挨拶で「子供は夢があるから頑張れる。大人は子供が夢を見る時に一緒に夢を見て頑張れる。だから、大人は子供が夢を見ることを応援しないといけない」そう話していて、その頃から貴社に興味を持っていました。後々知りましたが、決して楽な経営環境ではない中でも、毎年少年スポーツ大会のための協賛金は必ず確保してくれていたし、従業員一同が自主的に寄付を集めてくれたこともあったと聞きました。私は企業の考え方にも心を打たれましたし、そのように従業員全体が同じ心を持っているチームワークの良い企業で働きたいと思いました。
私も子供の頃からスポーツを続けてきた身として、少年たちのスポーツの場を支える力になりたいです。そのためにも、普段の仕事でしっかり利益を作れるよう、情熱をもって営業活動に取り組んでいきたいです。よろしくお願いします。
こちらは、事業活動外の社会貢献活動をテーマにした志望動機です。実体験から具体的に企業の取り組みや考え方、企業の風土が伝わってきますし、それだけ企業に関心をもって接してきたことがわかります。
企業としても、こうした部分を採り上げてもらえるのはとても嬉しいでしょう。志望動機としても、ただ「社会貢献したい」ではなく、「チームワークのよい企業で働きたい」ということから、他の企業ではダメな理由が明示されています。
この志望動機の例文では、仕事においてのビジョンがやや弱いのが少し残念ですが、この部分をもう少し詰めていけば高く評価してもらえるものになるでしょう。
ただし、エピソード内容が中学生の頃の話を起点にしていますので、社長が変わり、会社の考え方も変わっている可能性もありますので、最新の状況と照らし合わせても大丈夫な内容かどうかは予め確認をしておいた方がベターです。
志望動機では「社会」への貢献だけでなく「会社」への貢献もアピールしよう
「社会」と「会社」、使っている文字は同じなのに、その持っている意味はまた違っています。最近の若い人は、以前の若者と比較すると「社会」に対しての貢献意欲が高く、「会社」への貢献意欲が低いと言われています。そのため、会社に入っても、社会に貢献できていないと感じると仕事に不満を持ったり、急に辞めてしまったりする場合もあるようです。
利益を得るための企業活動もしっかり考えることが会社への貢献に繋がる
「会社への貢献」は「利益」が最もわかりやすい形です。そのため、企業の利益創出に何かの形で貢献できれば良いのですが、「社会への貢献」はボランティアのイメージが強いのか、利益を求めるような発言や行動に難色を示す若い人は少なくないようです。企業が事業活動で取得するお金によって、様々な社会奉仕活動、社会貢献活動ができるという面もあります。こう考えると、決してお金に善悪があるわけではありません。
残念ながら「社会に貢献したい」という人には商売や利潤追求のイメージを言い訳にして、企業の活動についてしっかり考えていない人も多いです。そのために、企業側も時として「社会に貢献したい」という人を、企業の活動に対して「逃げの気持ちがある」とネガティブに見ていることもあることを知っておく必要があります。志望動機では「社会」への貢献ばかりを押し出すのではなく、「会社」への貢献もしっかり考えましょう。
志望動機で社会貢献を語る前に企業の存在意義を考えてみよう
就職活動をする前に、一度考えておくべきことのひとつとして、企業はどうして存在するのかということがあります。学生の中には、事業をしてお金を稼ぐためだと思っている人もいますが、それはあくまで二次的な理由です。企業が存在する最大の理由は「商品やサービスの提供を通じて社会貢献するため」です。その結果としてもらえる代価によって、事業を継続し、従業員を養うことができるようになっています。個人ではできない大きなサービスの提供を、多くの人で集まって可能にできるのが企業の最大の魅力でもあります。
ですから、企業というのは基本的に社会貢献をすることが目的の組織であり、社会からも貢献することを求められているという前提がなければなりません。もちろん、企業毎に特色がありますので、自社の得意な分野での社会貢献が第一になります。
社会貢献というとボランティアやイベントの主催・協賛などを考えがちですが、企業の事業活動は立派な社会貢献活動だという認識を持つようにしてください。
志望動機での「社会貢献」は企業の事業活動と関連する具体的な内容にしよう
就活の志望動機で「社会貢献がしたい」というテーマでアピールすると、漠然とした内容になってしまって評価がほとんどされません。企業への志望動機ですから、その企業特有の内容での社会貢献に的を絞って、具体性のある内容でアピールしましょう。
「社会貢献」というフレーズは、就活生が思うほど良い印象にはならないため、無理に使う必要はありません。適宜、印象がよくインパクトのある表現を考えてみてもいいかもしれません。