信用金庫の志望動機は銀行とはまた違ったノウハウが必要
「金融機関」と言った場合に多くの人が思い浮かべるのはまず銀行ですが、地域の多くの中小企業や個人を支えている金融機関として「信用金庫」は欠かせない存在です。銀行と同じように預金や貸付などを事業として行っている信用金庫ですが、その性質が銀行とは大きく異なっているため、その点を正確に踏まえた志望動機を作成することが大切となってきます。信用金庫へ就職を希望する際の、志望動機作成についてのノウハウを考えてみましょう。
まず信用金庫の役割と特徴を理解しよう
銀行のような金融機関と事業内容が似ており、「銀行の縮小版が信用金庫」と考えている方も多いのですが、実際にはその役割や特徴は、銀行とまるで違うものです。そのため、正確にその信用金庫事業の役割や特徴を理解していないと、その志望の本気度が疑われることになりかねません。
信用金庫は非営利法人である
現在、銀行と言われる事業体は基本的に株式会社となっています。株式会社のミッションは、「事業活動を通じて利益を上げ、株主に還元すること」にありますが、信用金庫の場合は株式会社ではなく非営利の法人にあたるため、利益を株主に還元する必要がありません。事業の安定・拡大や地域貢献にその利益をすべて投入することができることが大きく違います。
信用金庫は担当エリアが決まっている
信用金庫は、銀行のように各地に支店を置いたり統合や合併によって営業エリアを広げることが原則できないことになっています。そのため、事業の急拡大は難しく、その分地域に密着した活動やエリアを絞り込んだ強みを作っていくことが求められます。
信用金庫は融資先も限定されている
中小企業や個人の金融的な支援を目的として信用金庫は作られているため、融資先の企業の企業規模などについても制限があります。具体的には資本金9億円以下、従業員数300人以下の中小企業や地域住民にしか融資ができないことになっています。
信用金庫の志望動機の例文
例文を見ながら、信用金庫の志望動機の書き方について細かくチェックしてみましょう。まずは地元の信用金庫への志望動機の書き方を紹介します。
地元の信用金庫への志望動機の例文
私が貴庫を志望した理由は、生まれ育ったこの町に恩返しをしたいと考えたからです。私の実家は小さな惣菜店を営んでおりますが、子供の頃から店番などを通し、お店に訪れる多くのお客様と接する機会がありました。地域の方々から大変可愛がっていただき、地域の行事の際や、学校のクラブ活動など数多くの場面でご支援をいただく中で成長できました。
父が店舗の修繕などで一時的に大きな費用が発生した時、いつも貴庫の方と相談をされていたのを見てきました。父は「銀行は融資に関してドライで厳しいが、信用金庫は長く付き合える関係がある。商売仲間たちもみんなそう言ってる」といつも話してくれており、貴庫の事業にずっと興味をもっていました。
私が地域から多くの助けを受けて育ってきたように、私も続く世代に対してより良い地域の助けを届けていきたく考えています。貴庫の事業はその一環として非常に重要な役割を果たしていると考え、志望するようになりました。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
信用金庫に就職するパターンとして、やはり地元の信用金庫を志望するケースは多く見られます。地元への信用金庫へ就職する場合には、地元ならではのエピソードを使うことができれば効果的にアピールすることができるでしょう。
例文では家業を通しての地域へのふれあいの様子や、信用金庫に対する信頼が描かれています。その中で、「地域に恩返し(貢献)していきたい」と自分の気持ちを率直に語っています。信用金庫の事業を身近に感じているということが、採用側に好印象に映ることでしょう。
なお、通常の会社の場合は企業のことを「御社」「貴社」などと呼び、銀行では「貴行」などと呼びますが、信用金庫の場合には「貴庫」「貴金庫」「御庫」などと呼ぶのが普通です。
次は、地元以外の信用金庫を志望する時の志望動機の書き方を確認しましょう。
地元以外の信用金庫への志望動機の例文
私が貴庫への就職を志望した理由は、●●という地域に非常に強い魅力を感じており、その魅力を支えているのが貴庫であると考えたからです。
学生時代にゼミのフィールドワークの中でこの地域を訪れましたが、「モノづくりの町」の名前に相違なく、小さな町工場で様々な製品が作られていました。一見すると古くも見えるような小さな工場で、最新機器にも使われるような精密部品なども作られていることを知り、大きな感銘を受けました。モノづくり国家である日本の競争力の根源は、大企業ではなくこうした小さな企業にあるのだと思います。
信用金庫のビジネスは、こういった小さな工場の資金繰りを支え、より大きなビジネスチャンスを作っていく上で欠かせないもの、ひいては地域や日本全体の発展のために欠かせないものだと感じています。大学時代に自転車で日本を一周した行動力を活かし、地域をこの足で動き回りながら頑張っていきたいです。よろしくお願いします。
自分の地元以外の地域の信用金庫に就職を志望する場合、その地域を選んだことに対してポジティブな理由が無ければなりません。例文では、「モノづくりの町」である●●地域に対して魅力を感じている様子が紹介されています。
その上で、どうして信用金庫なのかの理由や、自分のセールスポイントや、どのように信用金庫内で活躍していきたいのかをアピールしています。欲を言えば、就職後のビジョンはもう少し具体性が欲しいところです。信用金庫の場合、事業内容に制限が多く、事業そのものが硬直化しやすいため、どのようなビジョンを持って志望するかについてはよく企業研究をする必要があります。
信用金庫の志望動機作成のための3つのポイント
信用金庫の志望動機を作るためには、銀行など他の金融機関にはない「3つのポイント」を意識することが大切です。
ポイント1:金融業の中で信用金庫を選んだ理由をハッキリ書く
銀行など金融業界に興味がある人は多いですが、その中でどうして信用金庫を選んだのかという理由を述べる必要があります。信用金庫の持つ地域に根差したサービスのあり方などが有力な理由となるでしょう。個人的な思い入れやエピソードが信用金庫にあれば大きなアピールにつながります。
ポイント2:信用金庫の中でその信用金庫を選んだ理由をハッキリ書く
信用金庫と一口に言っても、自分の生活圏や通勤圏を考えただけでも多くの信用金庫が存在しているはずです。その数ある信用金庫の中から、どうしてその信用金庫を選んだのか理由を明確にする必要があります。該当する地域に対する思い入れや、企業理念などの「その信用金庫にしかない」部分を強調することで差別化することが大切です。
ポイント3:個人としての信用金庫への適性をアピールする
就職を希望する信用金庫への志望動機の中には、その組織を選んだ理由が最低限必要ですが、就職活動ですので、自分をアピールして売り込むことも大切です。過剰なアピールは良くありませんが、エピソードや自分の経験・略歴、性格面などを通じ、信用金庫に適性があることをアピールできると良いでしょう。「地域の人と話すのが好き」「誠実で着実な仕事ができる」など様々なアピールが考えられますので、良いアピールポイントが何か眠っていないか考えてみましょう。
信用金庫が活躍できる将来性は十分にある
信用金庫については、その事業規模などから将来性について不安を感じる就活生も少なくありません。しかし、社会の流れとしては、信用金庫の特徴が活かされる可能性が高まっています。
現在、銀行などの金融機関では「貸し渋り」と呼ばれる融資への消極的な姿勢が強まっていたり、またカードローンやアパートローンなどの利益率の良い金融商品の販売に積極的になっています。銀行の持つ「株主のために利益を出さねばならない」宿命は、本来融資を必要としている人々に十分に手が届かなくなっている状況があります。
また、働き方も様々に変わってくる中で、小規模な個人事業や副業を始める人が多くなってきており、事業資金を融資してくれる金融機関の必要性が高まっています。
このような社会環境下で、信用金庫が活躍する場面は十分にあると見られています。地域に根差して活動する中で、需要を掘り起こすことができれば、メガバンクや地銀とはまた違った立ち位置で不可欠な金融機関としての位置をキープすることもできるでしょう。
信用金庫への志望動機は、「違い」を意識して語ろう
信用金庫への志望動機を述べる際には、他の金融機関との違いを意識して、その違いに基づいた志望動機を述べることが大切です。
例えば、信用金庫は、地域に根ざした金融機関であり、地域のお客様に対して、より個別に合わせた金融サービスやアドバイスを提供することが特徴です。そのため、地域の文化や経済情勢に詳しく、お客様とのコミュニケーションを重視することが求められます。
関わっていることや、地域のニーズや課題に関心を持っていることをアピールすることが効果的です。また、自分自身がコミュニケーション能力や地域に詳しいことを示し、信用金庫の求める人材像に合致していることをアピールすることも大切です。
さらに、信用金庫が地域に密着した金融機関であることから、社会貢献活動や地域のイベントなどに積極的に参加していることをアピールすることも有効です。信用金庫は、地域に貢献することを重視しており、その理念に共感し、自分自身も地域に貢献したいという姿勢を示すことが大切です。
以上のように、信用金庫への志望動機を述べる際には、「地域に根ざした金融機関であること」や「お客様とのコミュニケーションを重視していること」など、信用金庫と他の金融機関との違いを意識し、その違いに基づいた志望動機をアピールすることが大切です。