自己PRのテーマで「笑顔」を選ぶのはOK?
就職活動の中では、自分をアピールして企業に売り込むという普段慣れないことを行わなければならず、プレッシャーに感じる学生も少なくありません。自己PRは志望動機などと並び、定番の課題となっていて、エントリーシートや面接で度々問われることになります。
この自己PRの題材に「笑顔」をアピールしたいという人も多いのですが、就活の自己PRにおいて、笑顔をアピールするのは実はかなりテクニックが必要になります。効果的なアピールのためにはどのように考えて自己PRを作成するべきか見てみましょう。
自己PRにおいて笑顔をアピールするのが難しい理由
自己PRで笑顔をアピールするというのは、実は難しいものです。
その理由は、笑顔というのは誰にでもできることであり、また仕事の場面では必ずしも笑顔が必要だとは限らないからです。
就職活動は自分が志望する企業に入るための活動ですが、それは同時に企業にとっての採用活動でもあります。採用活動では、自社に欲しい人材、つまり企業に利益やメリットをもたらしてくれる人材を求めているのですが、笑顔というのは利益やメリットにあまりならなかったり、また笑顔についての話の多くは、応募者がビジネスをしている様子をイメージさせるには不向きなものだからです。
そのため、自己PRで笑顔をアピールするのであれば、その笑顔をどのようにビジネスの場で役立てていくか、具体的な方法論や提案がなければなりません。よほど容姿が魅力的な人であれば、笑顔が得意で笑顔を見るだけで周囲のモチベーションが高まったりすることはあるかもしれませんが、そのような例はほとんどありません。
自己PRで語りたい「笑顔」がどんなものかを考えてみよう
自己PRで笑顔をアピールするのであれば、自分が伝えたい「笑顔」とは何かをよく考えてみる必要があります。笑顔が良いと漠然と考えずに、自己分析のひとつとして踏み込んで考えてみましょう。
「笑顔をいつでも作ることができる」のかもしれませんし、「気持ちのよい笑顔ができる」のかもしれません。「笑顔で話ができる」という人もいます。「辛いときでも笑顔を見せられる」場合もあります。
自分がアピールしようとしている笑顔が具体的にわかっていないと、エピソードやビジネスでの活かし方も抽象的で具体性のないものになってしまいます。自分の良さが出てくるような笑顔の種類をよく考え、説得力のあるアピールにつなげましょう。
自己PRで笑顔をアピールする際の手順
自分がアピールしたい笑顔を分析したら、笑顔の良さをアピールする手順を考えます。自己PRで笑顔をアピールする際には、次のような流れにすると良いでしょう。
1.自分のアピールしたい笑顔を明確に表現する
まず自己PRの冒頭で、自分の得意な笑顔について説明します。「私は人の心を開かせる笑顔に自信があります」のように、ただ「笑顔が得意です」ではなく具体性のある表現を心がけましょう。
2.笑顔の内容に沿ったエピソードを伝える
自己PRでは、自分のアピールに沿ったエピソードを続けて伝えることで内容に説得力をもたせることができます。また、エピソードの中に垣間見える個人の考え方や行動特性などは、評価の上で自己PRの題材よりも重要な位置を占めますので、適当に考えないで、しっかり吟味して作成しましょう。
3.笑顔のビジネスへの応用や意気込みを語る
自己PRでは、企業に自分を売り込むことが必要です。そのため、ただ自分の強みとして笑顔を紹介するだけでなく、ビジネスという舞台でその笑顔を使ったらどのようなことができるのか、何をしていきたいのかを表現しましょう。具体的に活躍しているイメージが持てるようなら、内定獲得にぐっと近づきます。
自己PRで「笑顔」を用いた例文
続いて、笑顔をアピールする手順に沿って自己PRを作っていきます。自己PRで「笑顔」を用いたNG例と良い例文を見ながら、書き方について考えてみましょう。
自己PRで「笑顔」を用いた例文1(NG例)
自己PRで「笑顔」を用いた例文1(NG例)
私は笑顔に自信があります。
子供の頃から、周囲の友人や学校の先生に、「笑顔が良い」といつも言われてきました。私は意識して笑顔にしているわけではありませんが、我慢したりせず、気分が良かったり面白い、楽しいと思ったときには笑顔を見せるようにしています。笑顔でいると、周囲も笑顔になってくれるような気がします。
私は貴社に入社できたら、この笑顔を武器に頑張っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
笑顔をテーマにした自己PRです。全体的に具体性がなく、抽象的な内容で、効果的なアピールとは言えない出来になっています。
笑顔に自信があり、周囲から笑顔が良いと言われてきたのは良いのですが、その笑顔がどのように良いのかが伝わりません。人間は笑顔を好意的に見るため、どんな人でも笑顔は魅力的に見えると言います。その中で、いつも評価されるような笑顔はどのようなものなのか、しっかり表現をする必要があります。自分だけではわかりませんから、周囲の人にどう笑顔が良いのか詳しく聞いてみましょう。ここまでは自己分析の範囲です。
また、エピソードからは仕事上のイメージがまったく浮かびあがりませんので、就活における自己PR用のエピソードとしては不適切です。自己紹介の場ではなく、自分を売り込む場ですので、相手側が求めるような、仕事に関係しそうなエピソードを探しましょう。最後の言葉も抽象的で、どのようにその笑顔が使えるのか見えず、アピールが不足しています。
自己PRで「笑顔」を用いた例文2(良い例)
自己PRで「笑顔」を用いた例文2(良い例)
私は笑顔に自信を持っています。
子供の頃から、周囲の友人や学校の先生に、「笑顔が良い」といつも褒めてもらってきました。ある時、どのように笑顔が良いのか聞いたら、「嬉しいときに本当に嬉しそうに笑うから見ていて気持ちが良い」とのことでした。
私は笑顔を無理に作ろうとはせず、自然に出てくる笑顔を大切にしようとはいつも思っています。子供の頃、周囲に良い顔をしようと作り笑いをいつもしていたら、担任の先生から「人間は喜怒愛楽があっていい。無理な笑顔は見ていて辛い」と言われ、それから自然な表情や笑顔を大事にしてきました。
私は貴社の販売職を志望していますが、心からの笑顔がお客様にとって気持ちの良いものになると考えています。作り物ではなく、素直に心を開いたコミュニケーションを徹底し、お客様との関係づくりを頑張っていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
NG例の内容に、具体性をもたせてみました。笑顔には色々ありますが、ここでは「素直な笑顔」とでも言うべき内容が語られています。エピソードから、自然体であろうとする努力によって気持ちの良い笑顔ができるようになったのだということがわかります。
心からの笑顔によって、顧客との心を開いたコミュニケーションを頑張っていきたいというビジネスへの展開もしっかり考えられています。ビジネスライクな笑顔とは違った雰囲気で、新たな顧客層を得られる可能性が期待できます。実際に面接の場で魅力的な笑顔を見せることができるなら、その説得力はさらに高まるでしょう。
自己PRで「笑顔」を用いた例文3(良い例)
自己PRで「笑顔」を用いた例文3(良い例)
私は笑顔に特徴がある人です。
いつも通っている歯医者さんによると、私は広角を上げて笑ったとき、普通の人よりも見える歯の本数が上下2本ずつ多いそうです。そのため、笑顔が大きく見え、とても印象が良く見えるようです。
大学時代に小学生の家庭教師のアルバイトをしていたのですが、人見知りが強く、相性の合う先生がいなくて困っているという生徒が紹介されました。私は特別なことはしていないですが、うまく関係を作って勉強を教えることができました。後で生徒が言っていたのは、笑顔を見て安心してよい人だと思えたのだそうです。
私はこの大きな笑顔を武器に、顧客の不安を取り除き、信頼できるコミュニケーションをしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
この例文では「笑顔に特徴がある」から始まっていて、どのような特徴なのか気になる出だしになっています。その特徴は、歯医者ならではの視点によって説明される大きな笑顔です。この大きな笑顔が、良い印象を与え、安心感を与えて家庭教師がうまくいったというエピソードになっています。
このように、具体的に様子がイメージできるような内容は共感を得やすく、面接なら実際に目の前でその笑顔を見てみて納得することでしょう。他の人と笑顔の何が違うのか、そしてどのような印象になるのかを実地で確認できるため、最後の「顧客の不安を取り除き、信頼できるコミュニケーションをしていきたい」が現実に行えそうかどうかもすぐに判断できます。
様々な人と良好なコミュニケーションを取っている様子が浮かびやすく、採用担当者にも好印象になる自己PRに仕上がっています。
自己PRで笑顔を上手にアピールする際のポイント
自己PRで笑顔をアピールする際にポイントになる部分を確認します。先の例文を思い出して照らし合わせながら読み進めると分かりやすいです。
テーマにした笑顔に具体性は十分あるか確認する
笑顔をテーマにした自己PRは、ともすると抽象的な内容で終わってしまいがちです。笑顔を用いた結果、問題解決につながったエピソードが望ましいですが、その場合は因果関係についてきちんと確認する必要があります。また、自分では論理的につながっているつもりでも、第三者から見るとそうではないことも多いので注意してください。具体性があるエピソードは、状況をイメージしやすく、笑顔の効果が伝わりやすくなります。
笑顔がテーマなので面接の場合は笑顔を見せる
自分のアピールポイントとして笑顔だと言っているのに、その笑顔を見せないまま面接が終わってしまうなら自己PRとしては失敗です。また、笑顔を作ろうとして、緊張のあまりに不自然な笑顔になってしまわないように注意しましょう。笑顔を作ると、自然に緊張は和らぎますが、面接が始まってから急に笑顔になると作り笑顔に見えます。待機時間から笑顔を意識しましょう。
第三者の評価をエピソードに使う
自分の主観で「自分の笑顔は素敵です」と言うのははばかられるものです。また、自己評価ばかりが高い人だと誤解される恐れもあります。「笑顔がいいと良く言われます」などのように、第三者から言われた評価や言葉をそのまま使うのが良いでしょう。多くの人がそう感じてくれているのであれば、それは客観的に正しい評価と言えるからです。
笑顔のビジネスへの応用についてしっかり示す
笑顔が良いのは人間的な魅力があるということですが、それだけでは企業が従業員として雇用する理由にはなりません。その人の持っている笑顔が企業にとっての武器になるという場合において、採用のための評価はプラスになります。どのようにビジネスで笑顔を使おうとしているのか、具体的な提案をしてみましょう。
笑顔が自己PRで有効かどうかは、業界や企業による
自己PRで笑顔を用いる方法について見てきましたが、基本的に業界や企業によってNGになる企業とそうでない企業がある程度分かれます。
福祉や看護、保育などの一部のサービス業であれば、魅力的な笑顔を持っている人というのはコミュニケーションを取ったり、安心感を与える上で大きな武器になりますから、積極的な評価を受けることでしょう。しかし、SEや事務職など、デスクワークが主体になる仕事ではあまり笑顔が効果的なアピールにはつながりません。
効果的でないという企業などでは、笑顔に意味がないということではありません。ただ、自己PRとして企業に訴えかけるのであれば、もっと他に適切なものがあるかもしれないということです。企業のWebサイトや企業説明会などの雰囲気から、笑顔をアピールすることが効果的な企業かどうか雰囲気を察するようにしましょう。判断が難しい場合には、無理に使わないほうが賢明です。
自己PRで笑顔を扱うのはOK!でも内容や使いどころは気をつけて
自己PRで笑顔を扱うことは全く問題ありません。むしろ、明るく前向きな印象を与えることができ、好感度をアップさせることができます。しかし、笑顔を使う際には、どのような場面で使うかや、どのような内容と組み合わせるかなど、状況や相手に合わせた適切な使い方を心がける必要があります。
例えば、面接などのビジネスシーンでは、やりすぎた笑顔は軽薄な印象を与えてしまう場合があります。また、笑いを誘うようなジョークや言葉遊びは、場合によっては不適切であり、相手に誤解や不快感を与える可能性もあるため、注意が必要です。
一方で、自己PRの中で自分が得意なことや好きなことを話す際に、それを伝える際に笑顔を使うことは、相手に興味を持たせることができます。また、自分自身がそのことについて話す際にも、笑顔を取り入れることで自信や好意をアピールすることができます。
総じて、笑顔は自己PRの中で有効なツールですが、状況や相手に合わせた適切な使い方を心がけ、上手に活用しましょう。