ボーナスなしはつらい?賞与のない会社で働くメリットとデメリット

ボーナスなしの企業は、ボーナスのある企業に比べて魅力がないように言われますが、ボーナスのない企業も多くなり、ボーナスがある企業よりも給与の条件が良い場合もあります。ボーナスなしの企業のメリットや注意点などについて紹介します。

ボーナスなしはつらい?賞与のない会社で働くメリットとデメリット

ボーナスなしだと何となく損している気になるもの

就職活動や転職活動している人の中には、「ボーナスがあるから」という理由で正社員を目指す人もいます。しかし、最近はボーナスなしの会社も徐々に増えてきており、そのことについても賛否両論があります。

ボーナスなしだと損している気分がするという人や、貯蓄が難しくてつらいという人もいますが、ボーナスなしの会社だからと悪いことばかりではありません。実際の状況やボーナスについての考え方、ボーナスなしの場合にどのようなメリットやデメリットがあるのか考えてみましょう。

そもそも「ボーナス」って何?

賞与明細書

そもそもの話になりますが、「ボーナス」とは何でしょうか。ボーナスなしのメリットやデメリットなどを見ていく前に、ボーナスがどのようなものかを説明していきます。

ボーナスは、厚生労働省の通達では「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と説明されています。

ボーナスを定義する条件は、ひとつが「労働者の勤務実績に応じて支給される賞与」であり、また「支給額が予め確定されていないもの」ということがわかります。

つまり、必ずあるものという認識でいたら大間違いだということです。また、支給額も決まっておらず、普段の給料よりも安い場合も高い場合もあります。

企業にボーナス支払いの義務は原則としてない

昔、ボーナスは月の給料の2~6ヶ月分というようなイメージもありましたが、それは日本経済が右肩上がりだった時代の話で、企業に利益が上がっていなければ当然ながらボーナスの財源が無いために支給することはできないのです。

企業には原則として賞与の支給義務はありませんので、ボーナスなしだからと企業を訴えることも基本的にはできません。また、ボーナスを支給するとされていても多くの場合、就業規則で「会社の業績によっては支給されないこともある」という一文があり、必ず支給されるわけではないことが示されています。

また、何となくイメージされている「月の●ヶ月分」という支給額も、あくまで予定であり、決定されているものではないため注意してください。たとえ1,000円が支給されてもボーナスだと会社が言えばボーナスになりますので、金額の多寡でボーナスは決まりません。

ボーナスの支給時期

ボーナスの支給時期は夏と冬に支給されるイメージを持っている人も多いですが、半期の決算のタイミングで支給が決定されるというのが正確な考え方です。好況の企業においては、半期を待たずとも大きな利益が上がった際に臨時でボーナスが出る場合もあり、ボーナスの支給回数も一定ではありません。

ボーナスなしの会社が増えている理由

賞与なしは正社員の3割

最近は、ボーナスなしの会社が徐々に増えてきています。ボーナスなしのサラリーマンが全体の3割程度にまで上っており、非正規社員まで含めると6割ほどがボーナスなしと言われるなど、むしろボーナスをもらっている人の方が少なくなりつつあります。ここで、ボーナスなしの会社が増えている理由を考えてみることにしましょう。

ボーナスなしの会社が増えている理由:経済の不調や労働組合の組織率低下

ボーナスなしの会社が増えている一番の理由は、経済が不調だということに尽きるのですが、他の理由としては労働組合の組織率が下がっていることなどがあります。労組が無いことによって、企業に対して労働者側が物申すことができなくなってきており、労働者が強くボーナスを請求することが無くなってきているのです。

ボーナスなしの会社が増えている理由:基本給を高くしてほしい従業員側の希望

ボーナスの際にまとまった額を支給してもらうよりも、基本給(月給)を高くしてほしいと考える人が増えてきたことも理由のようです。毎月の給与が安定していると、生活も安定し将来設計がしやすいと考える人も多くなっています。そのため、企業側も人材を採用しやすくなるように、見た目にもわかりやすい基本給を高く設定する傾向があります。

ただし、ボーナスがあることが確約されていないのと同じく、ボーナスなしが確約されているわけでもありません。入社時には説明が無くとも、何かの折に、会社側から特別にボーナスが支給されることは十分にあります。結局のところ、ボーナスの有無は、企業や従業員たちの考え方が反映されたうえで決定されます。

ボーナスなしの会社に勤めるメリット

ボーナスなしの会社に勤めるメリット

ボーナスなしの会社に勤めるのはメリットが無いと思う人もいますが、メリットがある場合もあります。ここからは、ボーナスなしの会社に勤めるメリットを紹介しましょう。

収入が安定する

ボーナスとして支給される予定だった分を毎月の給与に分割してもらえると収入が安定しますし、評価や査定を気にして勤務することも無くなりますので、収入も安定し精神的にも楽だというメリットがあります。

ボーナスは業績給でもありますので、ボーナスがある会社だとしても、会社として業績が出なければ支給されない可能性があります。そのため、自分は十分に企業に貢献したとしても全体の業績が不振ならボーナスは出ないこともあるのです。ボーナスをあてにして高額な買い物をしてしまった場合などは、こうしたことが痛手になる可能性が拭えません。

基本給が高いことが多い

「収入が安定する」というメリットに繋がりますが、ボーナス分を毎月の給与に投下している企業もあり、ボーナスなしの会社はボーナスがある会社よりも基本給が高くなっている場合が多いです。そのため、会社選びをする際には、基本給だけでなく年収でいくらになるかをよく計算した方が良いでしょう。

また、基本給が高くなると給与計算に使われる基礎賃金も高くなります。残業や深夜労働、休日出勤などの際の割増賃金が発生する際、基礎賃金に決まった割増率を乗じた額が賃金となります。なので、残業の多い仕事や夜間・休日の仕事が多い職業の場合にはボーナスなしで基本給が高い方が有利になることがあります。

臨時収入が得られることもある

ボーナスなしの会社でも、実はボーナスがもらえることは十分にあります。企業の経営者の中には、企業が大きく利益を出した時に、税金で取られるくらいなら社員に還元したいと考える人も多いです。その場合、毎月の給与では出すのが難しいので、ボーナスという形で支給されます。ボーナスなしと思っていたのに、臨時収入が得られると嬉しいものです。

ボーナスなしの会社に勤めるデメリット

ボーナスを手に眉間に皺をよせる会社員

ボーナスなしの会社にはメリットだけでなく、デメリットがあることも知っておかなければいけません。ボーナスなしの会社に勤めるデメリットを考えてみましょう。

経営状態が悪い場合がある

ボーナスなしの会社の中には、「元々はボーナスがあったけど廃止された」会社もあります。このような背景のある企業では、給与額も高くすることは難しく、会社の経営状態そのものに問題が残っている時もあります。

経営状態が悪ければ、人の出入りも激しくなり、M&Aなどによって社内の事業や体制などが大きく変わるなど、様々な苦労が出てきますので会社選びの際には注意しましょう。

貯蓄が難しくてつらい

人間、どうしても収入が増えると、つい支出も増えてしまうものです。そのため、ボーナスが支給されていた場合と比較して、ボーナスなしの収入の中でうまく貯蓄に回すことができない人も少なくありません。企業が悪いわけではないですが、「やはりボーナスがある会社が良かった」と感じてしまうでしょう。

クレジットカードや住宅ローンなどの審査で不利になる場合がある

クレジットカードや住宅ローン、賃貸契約時などの与信審査においては、「ボーナスの有無」が項目としてあります。それだけ個人の信用や経済力を考える上で、ボーナスの有無は大きな意味を持っていることになります。

ボーナスなしの会社に勤めている場合、同じ月給でも審査の際に不利になることがあることは覚えておいた方が良いでしょう。ただし、年収換算で同額になる場合、不利になることはありません。

仕事のモチベーションが上がりにくい

ボーナスなしということで、仕事をする上でのモチベーションがなかなか上がりにくいというのも大きな問題になる人もいます。ボーナスは額が決まっているものではありませんが、企業側の裁量で自由に支給することができるため、大きな成果を出した人には大きな額が支給されることもあります。

ボーナス支給のように努力や実績による評価・報酬を与える仕組みが無いために、働くモチベーションが上がらず本来の能力が発揮できないなら、それは少し残念です。

ボーナスの支給額の決め方

ボーナスの支給額の決め方

企業においてボーナスの支給額はどのようにして決まるのか、その仕組みがわかるとボーナスなしの会社についての考え方も変わってくるかもしれません。ボーナスの支給額の決め方には、いくつかのパターンがあります。

利益分配型のボーナス支給

利益を分配する形でボーナス支給する企業では、会社の当期(または半期)の利益額が出たところで、そのうちの一定の割合をボーナスのための財源とします。たとえば、従業員200人の会社で、1億円の利益が出たとします。この時、税金支払いや株主への配当などを考慮して、ボーナスの原資として30%を確保することを経営者や経理、人事が決定したとします。

この時、ボーナスの財源3,000万円を200人で単純に分配すると、一人当たり15万円のボーナスが支給されることになります。しかし、実際には会社への貢献度や役職などに基づいて、傾斜がつけられ、5万円の人がいたり50万円の人がいたりします。

人件費型のボーナス支給

ボーナスを最初から人件費の一部として計画している企業では、ボーナスの支給額は安定しています。年収が約束されている会社や、「賞与は月給の●ヶ月分」と定められている企業ではボーナスを人件費として考えていることが多いです。この場合、賞与が●ヶ月分という月数が多い企業は、それだけボーナスも多いように思えますが、基本給が低く抑えられていることもあります。

ただし、あくまでボーナスはボーナスですので、企業の成績が芳しくない場合には、人件費として計上されている分から取り崩して損失に補填され、その結果ボーナスなしになったり減額になったりもします。

それでも人件費型のボーナス支給をする企業は、利益分配型の企業と比較すると、企業側がボーナスの支給を強く意識していると考えられます。

社員のロイヤリティやモチベーション向上目的のボーナス支給

企業の中には、労組が非常に強くてボーナスなしを許さない場合や、経営者が社員のロイヤリティやモチベーションの向上を目的として、たとえ十分な利益が無く原資の確保が難しくてもボーナスを支給することがあります。この場合、支給額は少ないことがほとんどですが、それでも従業員に手厚い対応をしている企業と見ることができます。

ボーナスなしでも経営状況や年収など総合的に考えて会社選びをしよう

企業の業績を考える

ボーナスについて利益分配型の企業であっても、人件費型の企業であっても、結局のところは企業の成績が良くないと安定したボーナスは出ないことがわかります。

そのため、企業の成績が思わしくないにもかかわらずボーナスが支給される企業を選ぶと、基本給も少なく、かつボーナスなしというリスクに直面することになり得るかもしれません。

逆にボーナスなしの企業を選ぶなら、しっかり利益を出している企業であれば思わぬ臨時収入が得られる可能性もありますし、基本給も高めに設定されているかもしれません。会社選びの際にはボーナスの有無だけでなく、企業の経営状況や、年収として考えた時の収入、福利厚生など総合的に考えることが大切です。

新入社員がボーナスをもらえなくても「ボーナスなしの会社」とは限らない

ボーナスを新入社員はもらえるのか、もらえないのかという話もありますが、それは企業の考え方やルールに基づきます。新入社員の時にボーナスをもらえなかったとしても、それで「ボーナスのない企業だ」と決めつけることもできないのです。

ボーナスは働いた分に対して与えられるものです。春に大卒で入社した新入社員の場合には、先輩社員たちと同じ期間会社に所属し貢献し続けたわけではありません。そのため、6月にボーナスが支給される会社なら、1~2ヶ月程度しか働いていないですし、期間中は企業への貢献はほぼゼロなので、「ボーナスの金額は少なくても仕方ない。支給されればラッキー」くらいに考えておいた方が良いでしょう。

実際、満額のボーナスが支給されることは少なく、寸志が渡されるだけという企業も多いです。冬のボーナスでは規定通りの額が支給されるので過度の心配は不要です。

求人に記載されているボーナス支給額と実際の支給額が違うこともある

ボーナスにつられて

企業の求人の仕方によってはトラブルになることもあるので、求人を見る時は注意が必要です。多くの企業は「年収:420万円(夏・冬賞与含。昨年度の支給実績による)」などの書き方をしています。

実際に昨年度は実際にはボーナスの支給がなく、求人に記載されている支給額より少ない場合もあります。このような虚偽の求人広告を出すと、企業側には指導が入る可能性があります。実績が正しければ、支給予定額と考えられるので問題ありません。

また「年収:420万円(夏・冬賞与含)」だけになっている場合、もしボーナスなしで年収が320万円にとどまってしまった場合はトラブルになる可能性があります。この場合は、企業側から「予定額だ」と言われても、納得できる根拠を示してもらうようにしましょう。

ボーナスなしというだけで会社の良し悪しを決めない

ボーナスなしの会社は、ボーナスがある会社と比較すると魅力が無いように感じますが、ボーナスの有無だけでは企業の良さはわかりません。実際の経営状況や給与額などを総合的に考えて企業を選ぶことが大事です。

ボーナスを毎月の給与の一部のように考えることが少なくなり、業績に応じて変動するものと考えるのが一般的になりつつあります。そのため、ボーナスの有無より、変動する企業の業績などにより注意を払った方が満足できる待遇を得られるでしょう。