労働基準法の残業上限は1ヶ月何時間?労働基準法の詳細

労働基準法には具体的な残業時間について記載されています。この法律は労働時間について記されている法律であることは知っているかも知れませんが、その詳しい内容はご存知ないと思います。労働基準法の定義から残業時間について、管理者は残業代や割増がつかないのか、労働基準法の時間についてです。

労働基準法の残業上限は1ヶ月何時間?労働基準法の詳細

労働基準法で定義されている残業時間について知りたい!

皆さん、労働基準法は知っていますよね。「労働時間について定められている法律でしょ」と言われると間違いではありませんが、その詳しい内容はご存知でしょうか。近年、過労死の問題が盛んにニュースになっている日本では、自身の労働環境の改善のためにも、労働基準法の内容を知っておいた方が良いでしょう。

また、2019年には労働基準法が改正されます。ここでは、予定されている改正内容についても説明します。労働基準法をしっかりと理解して、労働者の権利を守っていくようにしましょう。

労働基準法とはどんな法律?

アルバイト先で仲良しの同僚

労働基準法は労働条件に関する法律ですから、皆さんが快適に仕事することができるためになくてはならないものです。この法律の内容をしっかりと理解しておくことが、自分を守ることになるかもしれません。それでは、労働基準法とは何かについて具体的に説明していきましょう。

労働基準法とは働く人全てに適用される法律

労働基準法とは何かと言うと、賃金や労働時間などの労働条件における最低限の基準を定めたもので、正社員だけではなく、パートやアルバイトを含むすべての労働者に適用される法律です。

つまり「自分はアルバイトだから関係ない」というものではありませんし、この法律の内容を知っておけばアルバイトであっても労働条件の改善に役立つ可能性があります。正社員に限らず、アルバイトの場合も時間外労働は立派な法律違反ということを覚えておきましょう。

労働基準法違反には懲役または罰金刑が課せられる

労働基準法に満たない労働条件で働かせている企業は、労働基準法の条件にまで、労働条件を引き上げる必要があります。もし労働基準法に違反した場合には、罰則があります。

労働基準法に違反した場合、大きく分けると「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と「もしくは30万円以下の罰金」になります。例えば法定労働時間を守らなかった場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金になります。

労働基準法にある残業時間の上限は?

徹夜で働くプログラマー

最近、過労死の問題が盛んに報道され、過労死した人の月の残業時間が105時間を超えていたケースがあったようです。月の労働時間が100時間を超えるということは、月20日勤務であれば5時間を超えているわけで、大変な時間です。このような事態が起こる会社では、こうした異常な勤務形態が常態化していることが考えられます。

皆さんは、残業時間が何時間まで可能で、どこから残業時間かを知っているでしょうか。ここからは残業時間や労働時間について説明します。

残業時間の上限は月45時間・年間360時間

労働基準法では1日8時間、週に40時間を超える労働時間は原則的に認められていません。それなのに、なぜ残業時間があるのでしょうか。「今日残業してね」と言えば、従業員に残業させても良いわけではありません。

残業というのは、会社と労働者が話し合いで労使協定が結ばれれば、その協定の範囲内で残業させることが認められています。この協定は労働基準法の36条に結ばれる協定であり、必ず書面でその内容を労働基準監督署に提出する必要があります。

労働基準法36条に基づいて結ばれる協定なので、サブロク協定と言われています。このサブロク協定を会社側と労働者側が結べば、何時間でも残業させることができるというわけではありません。1ヶ月で45時間、1年で360時間を超える残業時間は認められていないのです。

1日3時間残業すれば1ヶ月の残業時間を超えてしまうのですから、残業はそれほどたくさんできるものではありません。そのため、深夜遅くまで残業しているのは、違法の可能性が高いと言えます。

36協定とは?知っておきたい定義や残業時間のルール

法定労働時間と所定労働時間とは

労働時間を計るための時計

では、残業時間はどのように計算するのでしょうか。それは決められた労働時間を超えたら、「残業時間だよね」と思うかもしれませんが、実際そうではありません。残業時間を計算するためには、法定労働時間と所定労働時間の違いを理解しなければなりません。

法定労働時間とはその名の通り、法律で定められた労働時間ですので1日8時間、1週間で40時間を超える労働時間の制限が法定労働時間です。
つまりは、1日10時間の労働契約はできないということです。それに対して、所定労働時間は会社ごとに決まっている労働時間のことを言います。

所定労働時間は会社によって違うわけですから、会社によっては1日の労働時間が7時間の会社もあります。この場合、8時間の労働をした場合の1時間は25%割増の残業扱いではなく、0%割増の残業になります。25%割増の残業代が支払われるのは法定労働時間に基づいていると覚えておきましょう。

休憩時間は労働時間にならないのはなぜ?

ここまで残業時間と労働時間について説明してきましたが、そもそも労働時間になるのはどのような場合でしょうか。よく休憩時間は労働時間に含まれないと言われますが、なぜでしょうか。

労働基準法には労働時間の定義はありませんので、判例から判断するしかありません。労働者が労働に従事している時間だけではなく、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれている場合にも労働時間だと判断されます。つまり、使用者に義務付けられた時間であれば、労働時間になるのです。

通勤時間は指揮命令下にはないのですから、労働時間には含まれませんし、休憩時間も指揮命令下にない場合には労働時間にあたりません。ただし休憩ではなく、待機であれば労働時間になる可能性が高いと言えるでしょう。例えば消防隊員の場合は、待機の状態は休憩ではないため、火事が起これば現場に行かなければなりません。この場合は、労働時間とみなされます。

管理職って労働基準法上、残業代がつかないのは本当?

残業代が出なくて怒る上司

残業した時間分の残業代は、誰でもつくと思っている人はいませんか。社長に残業代がつかないというのは理解できると思うのですが、課長になったら残業代がなくなったので、給料が減るなんていう話を聞いたことがあるかと思います。残業代が出る人と出ない人の違いを見てみましょう。

一定の条件を満たす管理監督者には残業代がつかない

そもそも残業代がつく、つかないの違いはどこで生まれるのでしょうか。労働基準法では管理監督者には、労働基準法の労働時間や休憩時間に関する規定が適用されないので、1日8時間の労働時間を超えても残業代が支払われることはありません。そもそも管理監督者とは、

  • 1.会社の経営に関する決定に参加し、労務管理に関して指揮監督権限を有していること
  • 2.自分の出退勤などの労働時間について裁量権を有していること
  • 3.一般の従業員よりも賃金などで優遇されていること

このような条件に該当する必要があります。こうした権限を有している人には残業代がつかないわけです。そのため、社長や取締役などに残業代がつかないのは理解できるでしょう。

深夜割増賃金は支払う必要がある

管理監督者には残業代を支払う必要はないのですが、深夜割増賃金も支払わなくて良いというわけではありません。管理監督者に対しても、深夜割増賃金は支払わなければいけません。管理監督者の深夜労働をしっかりと管理している会社は、健全だと言えるでしょう。

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条件に満たない管理職には残業代がつくこともある

課長などの管理職は前述した条件を満たす管理監督者なのかと言われると、必ずしもそうとは言えません。前述したような権限を有している管理職は多くはないので、最近ではファミリー・レストランの店長も管理監督者ではないという判決が出ることがあります。
よく「名ばかり管理職」という言葉を聞くことがあると思いますが、それは前述した要件を満たしていないからです。管理職をたくさん作って残業代を支払わないという会社はかなり悪質だと思った方が良いでしょうね。

2019年の労働基準法改正の内容

希望を表す夜明け

これまで労働基準法に基づいた労働時間や残業代について説明してきましたが、2019年に労働基準法が改正されることになりました。今回の労働基準法改正ではどのような点が変更される予定なのでしょうか。

労働基準法改正の焦点は残業時間の上限の明記

過労死の報道が多くなされている中で、残業時間の上限をしっかりと明記すべきだという議論が起こっています。残業時間に関してはサブロク協定に基づいて、企業は雇用者に労働させることができますが、上限は1ヶ月45時間となっていました。

しかし、労働基準法の改定により、特別の事情に基づき「特別条項付き36協定」を結んだとしても、時間外労働時間の限度は年720時間(月当たり60時間)となります。また、一時的に業務量が著しく増えるとしても以下のような縛りを設けています。


○休日労働を含み、2か月から6か月平均で80時間以内
○休日労働を含み、単月で100 時間未満
○月45時間の時間外労働を上回る回数は、年6回まで

労働基準法に違反した際は罰則が科せられる

残業時間の上限を就業規則に明記するのは大変重要なことですが、その時間をしっかりと守らなければ意味がありません。例えば残業時間の計算ですが、残業時間にならないように労働時間を操作することも考えられます。タイムカードを押さないなどということもあるようです。

こうした労働基準法違反に対しては、今までと同じく罰則が科せられます。罰金30万円あるいは6ヶ月以下の懲役のこの罰則をもって違反した企業をしっかりと取り締まることが考えられています。

労働基準法に基づく残業時間の条件をしっかりと把握しよう

労働時間と同じように残業時間にも上限がありますが、労働基準法しっかりと守られておらず、残業時間もごまかして報告されているケースも少なくありません。

減ることの残業時間で心身の健康を害してしまわないよう、労働基準法に関して正しい知識を持つことが大切です。今回紹介したことをしっかり頭に入れて、職場の勤務形態に疑問を感じた場合は、労働基準監督署などに相談することも考え、職場環境改善のための対策を講じましょう。