起業は一度はしてみたいけど何となく怖いもの
人間誰しも「自分の好きなことを仕事にしてみたい」と思うものです。そのための現実的な方法のひとつが「起業」なのですが、考えてみたことがある人は多くても、実際に起業できるのはごくわずかです。起業にあたっては、「制度がよくわからない」という人もいますが、何よりも「本当に生活できるかどうか不安」という怖さがネックになっていることが多いです。
しかし、起業もひとつの働き方として、考えるべき時代になっているのも確かです。仕事の選択肢を増やすためにも起業について基本的なことを学んでおきましょう。
起業とはどういうことか考えてみよう
そもそも「起業」とはどのようなことを言うのでしょうか。
「起業」は大きく分けると「個人事業主になる」か「会社(法人)を作る」かを言います。個人事業主でも完全に1人で仕事を請け負ってこなすフリーランスの人もいますし、従業員を雇って店舗や事務所を経営する人もいます。会社も株式会社や合同会社など様々な形態があります。
起業のスタイルは様々ですが、「業を起こす」ことが起業であり、必ずしも自分ひとりですべての責任を背負う必要はありません。協力してくれる人がいれば共同責任で起業することもできますし、ケースによっては資金的な責任を背負ってくれるオーナーの元で実際の事業の責任者として起業できる場合もあります。
起業とは「事業を責任をもって行う立場になる」ということだと言えますが、その責任範囲が特別に定まっているわけではないのです。
起業をすることによるメリットは4つ
起業をするメリットを理解しておくことは、起業をすべきか否かの重要な判断基準になります。4つのメリットを具体的に見ていきます。
頑張った分の収入が伸びるので仕事にやりがいを感じることができる
起業の最大のメリットは、自分の仕事にやりがいを感じることができることです。「なぜその仕事をしなくてはならないのか?」といった悩みが無くなりますし、自分が頑張った分だけ収入も伸びるようになりますから、仕事のやりがいが雇われている時とはまるで違います。
自分の都合で仕事を休んだり遅らせたりスケジュールに自由が利く
仕事のスタイルにもよりますが、企業をしている人は会社勤めの立場の人と比較するとスケジュールの自由が利きやすくなります。自分の都合で、急に会社やお店の営業を休んだり遅らせたりすることもできます。仕事における信頼性を損なわない程度にできれば、自由に使える時間が増えてプライベートも充実します。
3.通信費や交通費は経費として扱うことができる
事業をする上では、様々な費用を経費として計上することができるようになります。公私混同はよくありませんが、通信費や交通費など、公私の両方で使っているような費用の多くは経費扱いをすることが可能になり、節税に利用できます。
4.会社員ではないので定年が無くなる
会社に勤めている身でないため、定年の概念が特に定まっていません。そのため、事業と健康さえ老後の経済に不安を感じることも少なくなるでしょう。また、年金などもしっかり支払って準備しておくことができますので、その後も安定しやすくなります。
起業することはデメリットもある
起業によるデメリットも理解しておきましょう。デメリットがあることが問題ではなく、どのようにデメリットを打ち消してリスクを抑えるかが重要です。
失敗も成功も全てが自己責任となる
事業に成功して豊かな生活ができるようになることもありますが、事業に失敗して借金を背負うことになったり、また仕事の多忙さから健康を崩してしまうような事態が起こることもあります。
有給休暇や労働災害への保障が少ない
会社勤めであれば、また病気やケガなどの際の休暇や、休職、有給休暇の制度があったり、労働災害があった場合の保険による補償、退職金など様々な形の保障が労働契約に組み込まれています。起業をすると、これらの保障を提供する側になり、提供することにコストがかかることから小規模な事業のうちはほとんど保障がない中で働くことも少なくありません。
起業したばかりの時は会社の社会的信用が圧倒的に弱い
起業することによって、個人としては立派に見えたとしても、会社としては社会的な信用がほとんどない状態からのスタートになります。そのため、取引先を作れなかったり、資金を調達する際に不利になったり、個人のローンやカードの作成で不利になることもあります。
起業に向いている人・向いていない人
「起業は誰でもできるわけではない」とよく言いますが、どのような人が向いていて、どのような人が向いていないのかと決まりがあるわけではありません。それでも傾向はありますので、自分が起業向きかの判断の参考にしてみてください。
特別な技術や知識を持っていない人は起業で成功するのは難しい
起業自体は誰でもできますが、成功している人を見るとやはり特別な技術や知識を持っている人が多いです。資格を持っている人は、技術や知識があるということになりますから、資格取得者も多くなります。逆に何もない人の場合は、ある程度の収入は得られるとしても将来にわたって安定した収入を得るのは難しいでしょう。
自分で考え、判断することができる人は起業に向いている
起業をすると、自分で考えて判断をしなくてはならない場面が毎日のように発生します。大きなことから小さなことまで、物事を判断することがストレスになるような人だと起業は難しくなります。自分で考えて判断することに甲斐を感じられるような人は起業に向いていると言えます。
コツコツ努力ができることは起業に欠かせない資質
起業に華々しいイメージを持つ人も多いですが、実際にはコツコツとした地味な努力の積み重ねが必要です。毎日少しずつ理想に近づけていくための努力をし、一方で必要な収益を出していくための努力をする必要があります。常に競争環境下に置かれますので、努力が止まれば事業の発展も止まってしまうため、継続的な努力ができることは起業する人に欠かせない資質です。
前向きに行動できる人には従業員たちがついてゆく
どんなに優れた人だとしても、事業をしていれば必ずどこかでは失敗することも大変な状況になることもあります。その時に、どのように事態を受け止め、考えることができるかは事業の継続や成功に大きく関わってきます。前向きで物事をポジティブに考え、行動できる性格の人が望ましいですし、ついていく従業員たちも安心できます。
心身が健康な人でなければ起業のストレスを乗り切ることはできない
起業し、事業を運営することによる心身へのストレスは予想以上に大きいものです。特に事業が軌道に乗るまでは大変ですので、心身が健康であることが望ましいです。時折、心身の問題から会社勤めを諦めて起業を考える人もいますが、よほどのスキルがない限り、心身が健康でないと安定した事業活動は難しくなります。
起業は若いうちにするべきは本当か
「起業は若いうちにするべき」「学生のうちから起業しておくのが良い」という情報もよく見かけますが、これは体力的なことや失敗時にやり直すことを考えれば確かに妥当な意見です。
ただ、事業というのは「ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)」という考えのもとで行われるべきです。どこかでやめる前提で事業活動をするのは、取引先や従業員などにとっては信用のならないものでしかありません。
そのため、起業をするのであれば、事業を継続させていける確率を少しでも高めることが大切です。若い人や学生は、どうしても経験や資金、人脈、信用などの面で不利があります。それらの不利を補う方法を事前にしっかり考えた上で起業を計画していくことが、事業の継続性を高めることにつながります。
今はインターネットを使った小規模なビジネスなら、始めるにも撤退するにも費用もそれほどかからない時代にはなっているため、若い人でも起業のチャンスが広がっていると言えます。しかし、少なからず関係者がいますから、「いつでもやめられる」前提の気軽な起業にならないように気をつけたいものです。
起業をするなら家族の了解を得ること
起業をするという場合に、必ず大事にしてほしいのが家族の了解を得ることです。
事業を始める場合や不動産の賃貸のための保証人になってもらう場合もありますし、もしも事業で失敗した場合には何かしらの責任を一緒に背負ってもらう可能性もあります。親や親戚などなら、場合によっては資金援助をしてもらえることもあります。
事業活動をしていく中で、経営者になればどうしても責任も重く様々な形でストレスも受けます。その時に日々接する家族が「がんばって!」と応援してくれるのか、「辞めたら?」とプレッシャーをかけてくるのかでもやりやすさがまるで違います。
事業のハードルを下げたり、リスクを下げる上でも、生活の上でも、自分の心身の管理のためにも、起業をするなら家族の了解を得ることは大事だという認識を持っておきましょう。視野が狭くなっていると「自分のことなんだから自分で決める」と考えがちですから気を付けてください。
起業は憧れだけでは成功しない!メリットとデメリットをよく考えて準備しよう
起業は制度的にも環境的にも整備が進み、昔よりもずっとしやすくなりました。しかし、起業の持つ意味や社会的責任などを十分に考慮せずに、憧れから「いつでもやめられる」と気軽に始めてしまうのは考えものです。
起業の持つ意味や影響をよく考え、そのための十分な準備を整えることが起業を成功させるうえで大切ですので、メリットやデメリットと共によく考えておきましょう。