労災の障害補償給付を知っておこう
労災が発生してしまった時に、その対応について知っておかなければならないことは数多くあります。どの病院を利用するか、また、労災であることを証明するために労働基準監督署に提出する書類を用意することや、会社にも証明をもらわなければなりません。
そのように煩雑な手続きを終えても、もし自分の体に障害が残ってしまった場合は一安心とはいきません。労災が原因となって何らかの障害を抱えることになってしまったら、この先どうやって働いていこうといったことなど、人生設計を改めて考える必要があります。
そのような時に支えになってくれるのが障害補償給付という制度です。これは労災によって何らかの不都合が生じた場合にとても役に立ってくれます。ぜひ知っておくべきでしょう。
労災とは
労災の障害補償給付を受給するためには、その障害が労災が原因で引き起こされたものであると証明されなければなりません。そもそも労災とは、業務上で起こった事故や、通勤中に起きた事故などで負った怪我や、ストレスや過労などでかかった病気などのことを指します。
例えば、高い所で作業をしていた時に落下して骨折したとか、自宅から会社に向かっている途中で車と接触して怪我をしたとか、残業をしすぎて体調を崩して入院したとか、そういった場合に労災であると労働基準監督署が認定することによって、その怪我や病気が労災だとされるのです。
労災の障害補償給付を受給するためには、まず労災であるということを明らかにする必要があります。その手続きをしっかりしておかないと、障害が残った時に障害補償給付を受給することができなくなってしまう可能性があります。
労災の障害補償給付とは
労災の障害補償給付とは、労災が原因である怪我や病気の治療を終えた後に何らかの障害が残ってしまった場合に労災保険として支給されるものです。業務上の災害であれば、障害補償給付であり、通勤上の災害であれば、障害給付となります。
労災の障害補償給付はいつからいつまで支給される?
労災の障害補償給付は、怪我や病気が起きたと判断された日が属する月の翌月から始まり、その事由がなくなった日、いわゆる治った日の属する月まで支給されます。
この場合に言う「治った」とは、「前のように完全に元通りに戻った」という状態を指しているわけではありません。例えば、我などで身体の部位を損失してしまった場合などは、完全に元通りに戻ることはなかなか難しいと考えられます。
「治った」とは、症状が固定して、それ以上治療しても効果を期待することができなくなった場合のことを指します。これを「症状固定」と呼び、リハビリが終わったり、痛みがなくなったりして、医師から治療が終了したことを告げられた場合などは、症状固定の段階であると考えれば良いでしょう。
労災の障害補償給付の支給のされ方
障害補償給付は、毎年偶数月の2,4,6,8,10,12月、6回に分けて2ヶ月分ずつ支給されます。請求においては、治った日の翌日から5年間という時効があることに気をつけておきましょう。
労災の障害補償給付には等級がある
労災の障害補償給付は、14の障害等級に分けて計算されます。1級が一番重度であり、そこから14級に向けて比較的軽度になっていくように定められています。支給されるお金の種類は、以下の通りです。
- 1級~7級 障害補償年金、障害特別支給金、障害特別年金
- 8級~14級 障害補償一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
労災の障害補償給付で支払われるお金はいくら?
労災の障害補償給付は、14の障害等級と給付基礎日額に応じて支給されます。支給される障害補償給付は、大きく分けて、障害補償年金と障害補償一時金の二つに分かれます。まずは、1級から7級に支給される障害補償年金と、8級から14級に支給される障害補償一時金で支払われるお金を確認しましょう。
第1級 | 313日分 |
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第2級 | 277日分 |
第3級 | 245日分 |
第4級 | 213日分 |
第5級 | 184日分 |
第6級 | 156日分 |
第7級 | 131日分 |
第8級 | 503日分 |
第9級 | 391日分 |
第10級 | 302日分 |
第11級 | 223日分 |
第12級 | 156日分 |
第13級 | 101日分 |
第14級 | 56日分 |
給付基礎日額とは、労災が発生した日の直前3ヶ月前までに支払われた賃金をその日数で割った額を指します。これにはボーナスなどは含まれませんが、残業代などは基本的には含まれています。給付基礎日額に「○日分」表示したもらえる日にち分を掛けることで、障害補償給付がいくら支給されるかといったことがわかります。
障害特別支給金
労災の障害特別支給金は、障害補償給付を受けている人に障害等級に応じて支払われます。
第1級 | 342万円 |
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第2級 | 320万円 |
第3級 | 300万円 |
第4級 | 213万円 |
第5級 | 225万円 |
第6級 | 192万円 |
第7級 | 159万円 |
第8級 | 65万円 |
第9級 | 50万円 |
第10級 | 39万円 |
第11級 | 29万円 |
第12級 | 20万円 |
第13級 | 14万円 |
第14級 | 8万円 |
障害特別年金
労災の障害特別年金は、障害等級が第1級から第7級の人に支給される年金です。支払われるお金は、障害補償年金と同じです。
障害特別一時金
労災の障害特別一時金は、障害等級が第8級から第14級の人に支給される一時金です。支払われるお金は、障害補償一時金と同じです。
障害補償年金前払一時金
労災の障害補償年金前払一時金という制度(通勤災害の場合は障害年金前払一時金と呼びます)は、障害補償年金の支給を受ける際に、一度だけ支給の前払いを請求することができるというものです。請求するタイミングは、原則として障害補償年金と同時でなければなりません。障害補償年金前払一時金の請求時効は、治った日の翌日から2年です。
労災の障害補償年金前払一時金は、障害等級に応じて前払一時金の額をいくらにするか決めることができます。例えば、障害等級が第1級なら、前払一時金の額は給付基礎額の200、400、600、800、1000、1200、1340日分から選ぶことができます。
第2級なら | 200、400、600、 800、1000、 1190日分 |
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第3級なら | 200、400、600、 800、1000、 1050日分 |
第4級なら | 200、400、600、 800、920日分 |
第5級なら | 200、400、600、 790日分 |
第6級なら | 200、400、 600、670日分 |
第7級なら | 200、400、 560日分 |
ただし、障害補償年金前払一時金が前払いされると、前払い分の額に達するまで障害補償年金の支払いが停止されるので、受け取りを希望する場合は注意が必要です。
障害補償年金差額一時金
労災の障害補償年金差額一時金(通勤災害の場合は障害年金差額一時金と呼びます)は、障害補償年金を受けている人が死亡した場合に支給されるものです。すでに支給されている障害補償年金と障害補償年金前払い一時金を合計した額が、下記の一定額を超えていなければ、その差額を遺族が受け取ることができます。また、特別年金に置いても同様のお金が遺族に支給されます。障害補償年金差額一時金の請求時効は、死亡した日の翌日から5年です。
第1級 | 1340日分 |
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第2級 | 1190日分 |
第3級 | 1050日分 |
第4級 | 920日分 |
第5級 | 790日分 |
第6級 | 670日分 |
第7級 | 560日分 |
労災の障害補償年金差額一時金を受け取れる遺族
労災で障害補償給付を支給されている人が死亡した時に支給される障害補償年金差額一時金を受け取れる遺族は、下記の通りです。受け取れる順位は1)が2)より優先され、かつ、上位表記の人が優先されます
1)死亡時に同居していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
2)1)に該当しない子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
労災の障害補償給付の申請方法
労災が起き、障害補償給付を申請するためには、書類を用意する必要があります。業務災害の場合は、障害補償給付支給請求書を、通勤災害の場合は障害給付支給請求書を用意してください。これらに事業主の証明をもらいましょう。通勤災害の場合は、通勤災害に関する書類を別途提出する必要があるので注意してください。
医師の診断書は必ず必要になります。自分の症状などを詳しく、正確に伝えておきましょう。そして、障害等級を審査するための地方災員との面談が行われます。その後、等級の認定によって厚生労働省から支給決定通知が送られてきます。
労災の障害補償給付は負担を減らしてくれる制度
労災によって障害が残ることは、考えたくない事態です。しかし、いざ自分の身に起こってしまった場合、実際にどう対処すればいいのかわからないといったことがないようにしておきたいということもまた事実です。
労災は働く中で常に身近に潜む危険ですが、障害補償給付制度があることによって少しでも万が一の時の負担を減らすことができるようになっています。障害補償給付について初めて知ったという人は、ぜひこの機会に労災について考えるきっかけを作ってみてください。