失業保険の期間は?離職理由別の基本手当の所定給付日数
失業保険に期間があるのは知っているけれど、具体的にどれくらい期間もらえるのか分からないという人は、ここで紹介する会社都合と自己都合の基本手当の所定給付日数を参考に、再就職をめざしましょう。さらに、3倍返しで知られる不正受給についてご紹介。
失業保険は受け取れる期間が決められている
失業保険とは、失業中に生活費の心配をせずに就職活動をするために、一定の期間内に給付金を受け取ることができる保険制度のことを言います。正式には「雇用保険」といって、運営管理は厚生労働省が行い、給付業務はハローワークが給付業務などを行っています。
雇用保険の求職者が受けられる給付には、「技能習得手当」や「傷病手当」等いくつかありますが、ここでは一般的に失業保険と呼ばれている「基本手当」の支給の期間について解説していきます。
失業保険の受給期間とは?
基本手当の支給を受けることができる日数のことを「基本手当の所定給付日数」といって、その期間は次の3つの条件によって決められます。
- 離職理由
- 離職日時年齢
- 雇用保険加入期間
ここからは、自己都合と会社都合の2つの離職理由ごとに、それぞれの基本手当の支給が受けられる「基本手当の所定給付日数」についてみていきましょう。
自己都合の場合の受給期間
個人的な理由や懲戒解雇などにより離職した場合、離職理由は自己都合となります。自己都合で離職した場合は、申込み後、待機期間(7日間)と給付制限期間(3ヶ月)を経て、失業保険の給付が開始されます。給付される期間は、雇用保険に加入していた期間によって次のように異なります。
雇用保険加入期間 | 退職時年齢 |
---|---|
全年齢 | |
1年以上 10年未満 |
90日 |
10年以上 20年未満 |
120日 |
20年以上 | 150日 |
雇用保険加入期間が1年未満の場合、条件を満たさないために給付が受けられません。また、65歳以上は高年齢求職者給付金の支給の対象となります。
会社都合の場合の受給期間
会社都合とは、雇用されていた会社の倒産や解雇により離職を余儀なくされた場合、離職理由は会社都合と判断されます。会社都合で離職した場合は「特定受給資格者」と呼ばれ、転職活動を行える期間がなかったとみなされることから、申込みの後、待機期間(7日間)の最終日の翌日から受給の対象となります。
また、次の表のように、自己都合で離職した時よりも、退職時年齢や加入期間に応じて長期間の給付を受けられます。
雇用保険加入期間 | 退職時年齢 | ||||
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 30歳以上 35歳未満 |
35歳以上 45歳未満 |
45歳以上 60歳未満 |
60歳以上 65歳未満 |
|
半年以上 1年未満 |
90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
1年以上 5年未満 |
90日 | 90日 | 90日 | 180日 | 150日 |
5年以上 10年未満 |
120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
10年以上 20年未満 |
180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | – | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
雇用保険加入期間が半年未満の場合、条件を満たさないために給付が受けられません。また、自己都合と同様に、65歳以上は高年齢求職者給付金の支給の対象となります。
失業保険の基本手当の支給額
失業保険の支給期間が分かったところで、次に気になるのが金額です。1日あたりに受給できる金額のことを「基本手当日額」といって、次の表のように1日の上限があります。
退職時年齢 | 基本手当日数上限金額 |
---|---|
30歳未満 | 6395円 |
30歳以上 45歳未満 |
7100円 |
45歳以上 60歳未満 |
7810円 |
60歳以上 65歳未満 |
6808円 |
また、離職してから基本手当を受給するまでの流れは次のとおりです。
1.離職の翌日以降に、ハローワークに離職票を提出する
2.失業保険の受給資格決定
3.待機期間(7日間)の終了後、受給説明会に参加する
4.求職活動をする
5.認定日にハローワークに行き、失業認定を受ける
6.指定口座へ失業保険が振り込まれる
7.受給期間の満了日まで4・5・6の繰り返し
ハローワークに離職票を提出する際は、運転免許証や保険証などの身元を証明できるものの他、3.0cm×2.5cmの写真2枚、印鑑、預金通帳などが必要になります。
受給期間満了後の延長が可能になる個別延長給付とは
会社都合で離職した特定受給資格者が、所定給付日数を過ぎても就職先が見つからない場合に、「個別延長給付」という受給期間の延長があります。個別延長給付には次のような条件があることから、事前に確認しておきましょう。
個別延長給付の対象となるケース
公共職業安定所長が、再就職が困難だと認めた場合のほか、次の3つの条件のいずれかを満たしている場合、個別延長給付の対象となります
- 不安定な職業に就くことが多いため、離職を繰り返している45歳未満の人
- 雇用が不足していると認められる地域に住んでいる人
- ハローワーク所長が計画的な再就職支援が必要だと判断した人
個別延長給付の対象外となるケース
個別延長給付は進んで求職活動を行っている人が対象となることから、次のような条件に当てはまる人は、求職活動を積極的に行っていないとみなされるため給付の対象外となります。
- 規定の求人の応募回数を満たしていない
- 求職活動の実績がなく、失業不認定とされた
- 失業認定日にハローワークに行かなかった
- 無理な求職条件を提示している
- ハローワークからの仕事の紹介や公共の職業訓練、職業指導を拒否した
求人への応募回数の規定は、所定給付日数ごとに次のように決められています。
所定給付日数 | 求人への応募回数 |
---|---|
90日 | 3回 |
120日 | 4回 |
150日 | 5回 |
180日 | 6回 |
210日 | 7回 |
240日 | 8回 |
270日 | 9回 |
330日 | 11回 |
延長期間はどれくらい?
給付の延長は基本的には60日分です。ただし、雇用保険の被保険者だった期間が20年以上で、所定給付日数が270日・330日の場合は、30日分の延長になります。
受給期間中のアルバイトは不正受給にならないように注意が必要
失業保険の基本手当は、休職活動中の生活を支えるために支給される手当てであることから、もし、不正に受給したとハローワークが判断した場合は、返還するよう指示されます。そのため、就職のほか、アルバイトやパートタイムなどで収入を得た場合は、失業認定申請書に記載して報告する必要があります。
特に、次のような虚偽の申告をした場合は、基本手当などを受給できないだけでなく、いわゆる「3倍返し」といわれる支給額の2倍の金額の納付が求められる場合があるため注意しましょう。
失業認定申告書に嘘の記載をした
実際は求職活動をしていないのに活動したことにして、勝手に失業認定申告書に求職活動を記載した場合は、嘘の記載とみなされます。
失業認定申告書に必要事項を記載しなかった
以下のような状況であることを隠し、その事実を失業認定申告書に記載しなかった場合は、不正受給と判断されます。
- 就職した
- 就労した(アルバイト、パートタイマー、日雇い、派遣、試用や研修)
- 自営や請負事業を始めた
- 会社の役員に就任した
- 就職する意思がないにもかかわらず年金受給までのつなぎとして基本手当を受給しようとした
失業保険をもらう前に給付される期間をしっかり確認しておこう
失業保険の給付期間は、会社都合と自己都合によってかなり違いがあることが分かりましたね。失業保険については「もらえるものはもらっておきたい」と考えがちですが、本来の目的である再就職するための給付金だということを忘れずに、正しく受給することが大切です。
また、なかなか就職先が見つからないと焦る気持ちが強くなりますが、そういう時にこそ、基本手当や個別延長給付などを受給してし、これぞと思う自分に合った職場を見つけるための足掛かりとして、再就職めざしましょう。
参考文献
- 注1:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- 注2:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」