残業代ゼロ法案のメリットとデメリット

今日まで皆さんの労働時間は労働基準法によって定められてきました。それが来年の2016年には大きく変わろうとしているのです。政府が進める「残業代ゼロ法案」のメリットとデメリットを説明します。ブラック企業が増える可能性もある「残業代ゼロ法案」について考えてみましょう。

残業代ゼロ法案のメリットとデメリット

残業とは定められた労働時間を超えて仕事をすること

残業代ゼロ法案のメリットデメリットを紹介する前に、残業にかかわる法律についてみていきましょう。残業とは既定の労働時間以上に仕事をすることで、「超過勤務」「時間外労働」ともいいます。皆さんは、残業できる時間に上限があることをご存知ですか?実は労働基準法できちんと決められているのです。しかし、昨今、残業に関する法律が大きく変わろうとしています。

労働時間は1日8時間週40時間を超えてはならない

労働基準法では1日8時間、週に40時間を超える労働は原則認められていません。たとえ残業代を支払ったとしても、根拠なくこの時間を超えて労働させることは法律上、認められていません。つまり、気軽に口頭で「残業頼んでもいいだろうか」と依頼するだけでは十分ではないのです。

強制的に残業させられる男性

では、何故「残業」というものがどこの会社にも存在するのでしょうか?それは会社と労働者との間で労使協定(労働者と使用者との間で結ばれる書面による協定のこと)が結ばれれば、その協定の範囲内で残業させられることが認められているからです。この協定は労働基準法36条に基づいて結ばれる協定なので、サブロク協定と呼ばれています。

協定によって残業をさせる場合でも上限がある

サブロク協定があれば何時間でも残業させて良いのかというと、そうではありません。協定によって残業をさせるにも上限があるのです。

毎朝仕事へ向かう会社員

決められている上限

1週間…15時間
2週間…27時間
4週間…43時間
1か月…45時間

上の表の通り、1週間に許される残業時間の上限は15時間です。どんな協定を結んだ場合でも、これをオーバーしてはいけません。

残業代ゼロ法案は以前から検討されていた

第一次安倍内閣の時に検討された「ホワイトカラーエグゼンプション」と仕組みはほぼ同じです。このホワイトカラーエグゼンプションは、元はアメリカの制度でホワイトカラー労働者(一般的なサラリーマンや事務職)に対し、労働時間という規制を外そうというもの。

残業計画を立てる男性

日本の労働基準法では、管理監督者に対しては労働時間の規制が適応除外とされており、残業手当は支給されません。これを一定の収入のあるホワイトカラー労働者にも拡大しようというものです。第一次安倍内閣の時には導入までには至らなかったものの、残業代ゼロ法案と同じような仕組みの制度導入が以前から検討されていたのです。

残業代ゼロ法案とはどんなもの?メリットとデメリットは?

今の労働基準法は1日の労働時間を8時間と定め、それを超えて働かせる場合には企業に割増賃金を支払わせる義務を課しています。しかし、2015年4月3日、「残業代ゼロ法案」が閣議決定されました。この法律が適応されるのは、来年2016年の4月が有力とされています。

残業時間を調整する男性

そもそも「残業代ゼロ法案」とはどういったものなのでしょうか。正式名称は「日本型新裁量労働制」といいます。簡単に言うと、これまでの労働基準法が定めた1日8時間、週に40時間以上働かせてはいけないという規定を取っ払ってしまおうというものです。これまでは労働を時間で量っていましたが、これからは時間ではなく、“成果”で量ろうというのです

つまり、1日の仕事が10あって、今までは時間内にこなせず残業になった人にのみ割増賃金が支払われていましたが、これからは10の仕事をこなせた人からその時点で帰宅して良くなり、時間内にこなせなかった人は残業代なしで仕事が終わるまで働くことになります。

残業代ゼロ法案のメリット

・仕事をこなすのに時間がかかっていた人のほうが賃金は多いという矛盾を解消できる
・早く成果が出せれば早く帰れるため、生産性が向上
・時間に囚われず仕事ができる

残業代ゼロ法案のデメリット

・サービス残業が合法になってしまう
・長時間労働が当たり前になり過労死やメンタルに不調を抱える人増加の可能性
・すべての業種に当てはめるのは困難であり無謀
・共働きの女性への負担が大きくなるため少子化が進む

心配なのは法案には成果に応じて報酬が支払われるとは書いていないことです。元々は働きすぎを是正するための法案でしたが、施行されたところで働きすぎや長時間労働に歯止めが掛かるかどうかは全く分からないのです。

残業代ゼロ法案の気になる今後

成果主義の最大のメリットは劇的に生産性が向上する可能性が高いということ。逆に最大のデメリットはいくらでも残業が可能になる分、ブラック企業がはびこる世の中になってしまいかねないということです。

成果主義の世の中になるのはこれまでより平等性も感じるので良いことのように思えますが、ブラック企業の餌食になり、何十時間も当然のように働かされてその対価を得られないのでは苦しいだけですよね。公平な正しい目で成果を見てもらえる制度だと一番ですね。

対象者については、当初は全ての人に適応されるというわけではなく、年収1075万円以上の人が対象になるということでしたが、塩崎厚生労働大臣の発言では「年収制限は設けない」とのことでした。今後すべての人が対象者になる可能性は大いにあります。2016年4月に施行されるまで情報に注意したいですね。