パートタイム労働法を知っておこう
パートタイムとして働く上で知っておきたいのが、パートタイム労働法です。働き方が多様化している中で、非正規労働者の立場を少しでも高めようとするためにあるものが、パートタイム労働法であると言えます。
パートタイム労働法について知っておくことで、自分が働いている現状についても見直すことができます。ぜひ考えてみてください。また、パートタイム労働法は最近改正された法律でもあります。その点にも着目して、最新の情報をつかんでいきましょう。
パートタイム労働法改正のポイントは5つ
平成27年4月1日に、パートタイム労働法が改正されました。パートタイム労働法改正のポイントは全部で5つあります。
1.パートタイム労働者の範囲が拡大された
パート労働者の定義が拡大されました。パートタイム労働者(短時間労働者)とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定時間に比べて短い労働者のことを指します。
パートタイマー、アルバイト、嘱託、準社員なども、条件に当てはまっていればパートタイム労働者と呼ぶことができます。なお、フルタイムで働く人は厳密にはパートタイム労働者には当てはまりません。
パートタイム労働法が改正されたため、職務内容と人材活用の仕組みが正社員と同一であるパートタイム労働者は正社員との区別が禁止されるようになり、パートタイム労働者に該当する人も増えたと言えます。
2.待遇の説明をする
企業は、パートタイム労働者を雇い入れた後、全てのパートタイム労働者を対象として、待遇の決定にあたって考慮した事項を説明する義務を負うことになりました。説明することを求められる事項としては、パートタイム労働者の賃金の決定方法や、通常の労働者への転換を推進するための措置などが挙げられます。
ただし、大雑把な説明は認められませんが、説明を求めたパートタイム労働者が納得するまで必ず説明しなければならないという義務はありません。
3.正社員と同じ教育をする
職務の遂行に必要な能力を付与するための訓練は、パートタイム労働者も通常の労働者である正社員と同じように受けることが求められるようになりました。キャリアアップのための訓練などは、パートタイム労働者の職務の内容や意欲、成果などによって実施が決められることとなります。
4.正社員と同じ福利厚生を与える
福利厚生施設の利用の許可をパートタイム労働者に与えることもパートタイム労働法で定められました。この場合の福利厚生施設とは、給食施設、休憩室などを指します。これまで使えなかったというパートタイム労働者の人たちには、嬉しい知らせでしょう。
5.パートタイム労働者の相談窓口を設ける
企業は、パートタイム労働者から雇用に関する相談を受けたら、速やかに対応する義務を負います。相談窓口は組織でも個人であってもいいのですが、話を聞くだけでなく、問題を解決するために行動を起こすことが求められます。パートタイムで働く人は、働く企業に相談窓口があるかどうかを確認した方がいいでしょう。
パートタイム労働法とは?
パートタイム労働法は、パートタイムで働く非正規雇用者の待遇が正規雇用者と差がつかないようにするために定められた法律です。その目的はパートタイム労働者の待遇の確保であると言えます。
パートタイムで働く人たちは、どうしても正規雇用者よりも差別を受けることにより、その立場が下に見られがちです。しかし、パートタイム労働法は、そういったパートタイムで働く人たちを守るために定められた法律です。
パートタイム労働法の主旨は、正社員と同じ内容で働いているのに待遇が見合っていないパートタイム労働者や、パートタイムで働く人が正社員に登用されない問題などに対する適切な措置を行うことにあります。
パートタイム労働者と正社員の差別を禁じている
パートタイム労働法では、パートタイム労働者を差別することを厳しく禁じています。職務内容と人材活用の仕組みや運用などが同じパートタイム労働者は、通常の正社員と同じ扱いをしなければならないとされています。
パートタイム労働法によれば、パートタイム労働者の賃金は企業の努力義務によって決定されるものと定められています。一律で決めつけるものではなく、働きや貢献の程度を見て決めるようにすることが求められます。
企業は、パートタイム労働者の経験や能力、成果などを正当に評価した上で、正規雇用者とのバランスを考えた適切な賃金を決定することを心がける必要があります。これはパートタイム労働法によってパートタイム労働者が受けることのできる恩恵の中でも、特に重要なもののひとつであると言えるのではないでしょうか。
労働条件は文書で交付しなければならない
企業は、パートタイム労働者を雇い入れる際に、昇給や退職手当、賞与の有無、相談窓口について、文書の交付などによって明示する必要があります。これに違反すると、10万円以下の罰金を支払わなければなりません。
パートタイム労働法はパートタイム労働者を企業に対して正式な雇用者であると認識させる効力を持っているのです。こういったことは、特にのちのちトラブルになりやすいことでもあるため、事前に文書として明らかにしておく必要があるとも言えます。
就業規則を作成する
パートタイム労働者に関わる就業規則について作成、あるいは変更する場合には、パートタイム労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴く必要があるとされています。このことから、企業はパートタイム労働者の働き方や待遇を勝手に変えることは許されないと、パートタイム労働法で定められていることがわかります。
役割分担を明確にしておく
パートタイム労働法で重要なのが、パートタイム労働者に対して企業が与える措置です。パートタイム労働者の職務の内容(業務内容と責任の程度)、人材活用の仕組みと運用など(人事異動などの有無及び範囲)の2つの要件を通常の労働者である正社員と比較して、企業はパートタイム労働者に賃金や福利厚生などの待遇についての措置を決定します。
ありがちなのが、業務について事業主とパートタイム労働者の間で認識に齟齬が起こるという事態です。事業主は正社員とパートタイム労働者の業務内容が異なっていると考えていても、パートタイム労働者からしてみれば自分たちは同じことをしていると考えている場合が多々あるのです。
そういった状況を作らないためにも、業務表を作っておき、あらかじめ役割分担を明確にしておきましょう。パートタイム労働法を活かすためにも、事業主とパートタイム労働者との間の関係は良好であるべきです。
パート労働者から正社員への転換するための義務
パートタイム労働者として働いているものの、本来ならば正規雇用者として働きたいと考えている人は大勢います。そこで、パートタイム労働法では、企業は全てのパートタイム労働者に正規雇用者になるための権利を与えなければならないとしています。
まず、新しく通常の労働者を募集する際には、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者にも知らせなければならない義務があります。これは、新しく人材を雇う前に、今働いているパートタイム労働者を正規雇用するチャンスを与える必要があるという考え方です。
次に、通常の労働者のポストを社内公募する場合には、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与えなければいけない義務があります。これも同じく、既に働いているパートタイム労働者にも平等に権利を与えなければいけないということです。
そして、パートタイム労働者が通常の労働者になるための試験制度を設ける義務があります。また、その他に何らかの形でパートタイム労働者が通常の労働者になるためのチャンスを設けることが必要です。
以上、企業は4つのうちどれかを選び、その措置を講じてパートタイム労働者を正規雇用するための機会を作る義務があります。
パートタイム労働法はこういったことを定めてパートタイム労働者が非正規雇用から正規雇用になるための後押しをしています。ですが、求人情報に関してはまだあまり広く知られていないことが多くあります。せっかく与えられた機会を無駄にしないためにも、企業努力はもっと周知されるべきであると言えるでしょう。
パートタイム労働法は身近なもの
パートタイム労働法は一見とっつきにくく、何となくぼんやりとしか理解できていなかったという人もいるでしょう。しかも法改正が行われてしまったとなると、それを新しく把握するのはなかなか容易なことではありません。
しかし、パートタイム労働者として働く上で、パートタイム労働法を知っておかなければならないことはおわかりいただけたことでしょう。パートタイム労働法の対象となっているのは、パートタイム労働者として働いている人ほぼ全員だと言えるのです。
難しそうな法律だからと敬遠したい気持ちはよくわかりますが、これを機にぜひ理解を深めていってください。パートタイム労働法はとても身近なものですし、パートタイム労働者の強い味方となってくれている法律のひとつなのです。