入社3ヶ月で退職してもいいのか
世の中には素晴らしい企業が数多く存在していますが、その魅力に気づけないまま退職してしまう方が非常に多いです。就職した先が悪かったというのは言い訳であるとは言えませんが、就職先の魅力に気づく努力は怠らない方が良いでしょう。
厚生労働省が発表している新規学卒者の離職状況によれば、3年以内で離職してしまうケースは全体の約40%にも上ることが分かります(注1)。3年以内に離職する方が多い中、さらに短い3ヶ月以内で退職してしまう方も少なくありません。
3ヶ月で会社の何が分かるのかと言われてしまえばそれまでですが、入社3ヶ月というのは新人にとってとても大切な時期です。その新人たちにどんな考えがあるのかをチェックしていきましょう。
入社3ヶ月で退職することはできるのか
新卒であろうが中途採用であろうが、入社3ヶ月でも退職することはできます。会社の仕事に不慣れな人たちは右も左も分からない状態ですので、まずは先輩方に教わることが第一の仕事です。即戦力となる人材を探している企業もありますが、過去の経験を活かせる職場であっても、何の説明も受けられないのであれば良い仕事はできません。
会社の魅力を探すチャンスも与えてもらえない職場なら、退職したいという思いが芽生えても不思議はないでしょう。一般的には2~3ヶ月前ぐらいから退職理由を説明して円満に会社から去ることが望ましいですが、法的には2週間前に退職の意思を伝えておけば企業から抜けることができることになっています。
退職するのは法的に自由
退職(辞職)とは、被雇用者からの一方的な雇用契約の破棄のことを指します。退職願の段階であれば会社側が引き留めされることもありますが、退職届を出された時点で会社側が引き留めることは基本的にできません。
退職願は「会社を辞めてもいいでしょうか」というお願いですので受領拒否をすることもできますが、退職届の場合は「会社を辞めます」という意思表示であるため、労働基準法に則り拒否することはできないのです。
例えば、サービス残業が多く会社からの承諾が無ければ退職ができないのだとすると、被雇用者に一方的な負荷を与え続け、そればかりか回避する手段すら用意できないことになります。雇用者と被雇用者の対等な関係を維持するためにも、退職の自由というのは認められています。
ただし、期間契約をしている場合は、該当期間中の退職は企業側に一方的な負荷をかけることになり、不当な契約破棄とみなされることがあります。来月まで働くことを約束していたのに急に辞められれば業務が滞ることにつながり、大損害を被ることもあるので、期間契約をしている場合は損害賠償を請求されることもあります。
なぜ入社3ヶ月で退職したいと思ってしまうのか
入社3ヶ月では、勤めている会社がどのような会社であるかを把握するのは難しいでしょう。多くの会社は、入社3ヶ月をめどに試用期間の修了と認識し、試用期間修了後には一人で行わなければいけない業務も増えてきます。いわば独り立ちをさせていることになります。しかし、入社3ヶ月というのは職場の雰囲気をまだしっかりとつかめていない可能性があり、何でも上司に相談できるような関係になっていない人も多いでしょう。
入社3ヶ月を経て職場環境に馴染めないが、転職活動に傷をつけたくないと困っている方は大勢います。今の職場を捨てたいのは山々だが変な言い分を述べてしまうと転職が不利になると考えることはごく自然なことです。
人間関係が悪化したことを理由として退職を考える方もいます。恋愛関係で上司と不倫関係になってしまったという話はドラマの中だけでなく現実問題としても挙げられます。このような人に言いにくい事情で退職を余儀なくされている場合は、どのような言い分で辞めればいいのか悩んでしまいます。
入社3ヶ月で退職する理由など一言で十分
入社3ヶ月で退職する理由は、大それたものでなくとも構いません。ただ一言「一身上の都合」と書き添えれば十分です。法的には被雇用者の保護がなされます。保護というのはいつでも退職することができるということだけではなく、退職理由を必ずしも明示する理由はないという点からも分かります。
退職理由は言いづらいこともあります。上司の前ではなかなか言えないことや家族のことなどさまざまです。これらの背景について企業が絶対に知らなければならない理由はありません。単純に高圧的な態度を取れば言わざるを得ないことだとして述べる方もいますが、退職理由を明確に述べる必要はないということを覚えておいてください。
入社3ヶ月で退職することによる転職活動への影響
入社3ヶ月で退職することにデメリットがないと言えば嘘になります。企業が欲しがっている人材の前提には長く働くことが挙げられています。企業自体が昔の年功序列を行うことができず、終身雇用を大々的に掲げることができなくなっている現在においては矛盾を感じる問題でもあります。
しかし、企業の営みにおいて長く働き続けてくれる人材の確保は一生涯付きまとう問題です。なぜなら長い付き合いをしていくことで互いの機微が分かるだけでなく、業務への経験値を高め専門性を磨くことになるためです。いくらITが進んでいる現状でも予測値が人間という変数を含む以上、長い間勤めてくれる経験値に対して先んじることはできないためです。
転職には勤続年数が求められる
ひとつの会社に長く勤めることのメリットは大きく、転職希望者に求めたい大きなポイントでもあります。すなわち入社3ヶ月で退職してしまっている方への風当たりは強いというほかありません。前の職場環境が良くなかったから辞めたのであって、御社は違うと言っても中々信用してもらうことができません。
賢い人の中には一身上の都合を前職で使い、家族の問題が解決したので職を探している旨伝える人もいます。被雇用者としては前職の内容を明確に伝える義務はありませんので、転職先の企業としては秘密裡に探ることぐらいしかできません。
いかに長く働く意思があるかをアピールするというよりも、退職理由の正当性を上げておくことで幾分かマイナス要素を軽減することができます。
入社3ヶ月で退職後の転職を成功させるには
入社3ヶ月で辞めてしまうような人材はいらない、という声が経営者の中に少なくありません。長く働いてもらうことが前提ですので当然のことかもしれません。ただし、近年の企業はどこも人材不足に悩まされています。残業代を支払うよりも新人を一人雇えば回せる仕事があり、社員の健康を損なわせることもないという悲鳴もあります。
人材不足の世においては、入社3ヶ月で辞めていようとも能力として申し分が無ければ迎え入れたいというのが実情です。問題は受け入れ先、つまり人材不足で本当に困っている企業を探すことです。
やりたいこととできることは別物
学生から社会人になる際に多いこととして、やりたいことを優先してしまうことが挙げられます。やりたいことがあるのは大いに結構なのですが、能力が伴っていなければ企業は採用することができません。例えば英語が好きなので海外営業に携わりたいと言われても、内容のほとんどをジェスチャーで伝えようとしている方に海外営業を任せることはできません。
転職の際に長く働き続けることをアピールすることは難しいですが、自分のできることをアピールすることには問題ありません。たとえ入社3ヶ月であっても社内でどんなことに困るのかについて漠然とした概念が存在します。その概念を活かすことが重要です。
転職活動では何になりたいのかではなく、何ができるのかをメインにして攻めることが成功のカギとなります。やりたいことは希望であり自分をぼかしてしまいがちです。できることを仕事にすることで隠されている人物像を浮き彫りにすることができます。ゆえに、できることは何かを真摯に考え抜くことが重要です。
入社3ヶ月でやめてしまう現状
入社からわずか3ヶ月で辞めてしまう方を批判する方は少なくありません。確かにやる気のない学生や責任を取ることに慣れていない学生が多いことも事実ですが、それ以上に企業がすべき新人への扱いを怠っていることもまた事実です。
人はそれぞれの特性を持っています。特性それぞれを開花させることは余程すばらしい先輩がいなければ無理でしょう。ただし、それぞれに必要な訓練や教育を課さなければならないことは明らかです。明らかであることに対して自学自習が足りないと判断することは間違っています。
入社3ヶ月というのは、職場環境を自覚するための期間であると同時に、必要な基礎知識を共有する期間でもあります。この期間で辞める方が多いということは、企業側で適切な対応がなされていないことを疑わなければなりません
入社3ヶ月で退職することは珍しくない
入社3ヶ月で退職するということはもはや珍しくありません。以前の終身雇用や年功序列が過去の遺物になった今、入社3ヶ月を突破するということは企業共通の課題になろうとしています。新人として迎えられるものの現実は違い、日々悩んでいる方は多くいるのです。
入社してわずか3ヶ月しか経っていないけれど会社を辞めたいと思ったら、退職することのメリットとデメリットを天秤にかけ、意欲的に働ける次の仕事につながるよう、しっかりと判断をしてください。
参考文献