就職試験の「小論文」には答えがない
就職試験の中には小論文を書かせることで、志望者の実力を測るところがあります。書かせた小論文から、テーマに対してどのように考えているのか、知識はあるのか、どのように表現するのか、論理的な思考をしてるか…ということを見ています。しかし就活生や転職者からしてみると他の就職試験のように答えがないため、どこに力を入れるべきか不安になることが多いでしょう。
学生時代に受けていた国語の筆記テストでも一定の基準が設けられ、それに沿った答えを書くと点数が与えられるというものでした。しかし、小論文の場合は根拠となる材料を自分で探さなくてはなりません。書き方を間違えると作文になってしまい、評価が下げられることもあります。就職試験における、答えのない「小論文」について紹介します。
企業は就職試験の「小論文」から何を読み取っているのか
企業は「小論文」で何を見ているのでしょうか。志望者に「小論文」を課す企業の場合は、就活者や転職者のユーモアや独創性が見たいのではなく、あくまでも理論的かつ文章力がある人材であるかを見ています。
ビジネスでは信用が重要ですが、支離滅裂な話や根拠のない与太話ばかりする人は信用に欠けます。上司に企画を通したい時や他人にプロジェクトに参加してほしい時など、人に物事を伝える際にはロジックや一貫性が重要視されます。そのため「小論文」という試験では優秀な人材というよりは、論理的思考に関してどこまで鍛えられているのかを見る試験なのです。
就職試験の小論文で書く基本的な原稿用紙の使い方
原稿用紙の使い方を知っている方もいらっしゃるでしょうが、使い方をおさらいしても損はありません。原稿用紙を使ううえでの注意点は、以下の7点です。
原稿用紙の注意点
- 制限文字数の8割以上は書く。
- 段落の初めや改行したときは一マス下げる。
- カギカッコで段落を始めるときも一マス下げる。
- 句読点やカギカッコは1マス使う。
- 行頭に句読点やカギカッコが来る場合は、その1つ前のマス(つまり前行の最後)に含める。
- 縦書きの場合、数字は漢数字を使用する。
- カタカナは原則として外来語、海外の人名のみ。
制限文字数はそれピッタリに書きなさいという意味でも、範囲内であれば何も問題ないという意味ではありません。「少なくともその制限文字数に合わせた文章を構成しなさい」という意味ですので、最低でも制限文字数の8割は書いてください。
意外と数字とカタカナの乱用が目立ちます。普段から意識してないで書くために、就職試験でもうっかり算用数字と漢数字を混同して使ったり、外来語以外にカタカナを使ったりしてしまう方が多いです。
就職試験の小論文で書く文構成の決め方
普通、原稿用紙は20字×20文字の400字詰めのものが使われることが多く、制限される文字数は600字から800字が多いです。なかには1200字、原稿用紙3枚分書く場合もありますが、ポイントさえ分かれば書けるようになるので心配いりません。
小論文における文章構成はある程度テンプレートがあり、書きたいことをフレームごとに合わせて書くだけでじゅうぶん形になります。しかし論じるうえでの根拠や証拠は新聞やニュース、企業のサイトから仕入れておく必要がありますので、0から書けるものではないことに注意してください。
小論文の構成は指定された文字数によって変わる
上限文字数が800字以下なら3段構成、それ以上なら4段構成になりますが大きな違いはありません。どちらも「序論」「本論」「結論」という構成が必須になります。「序論」ではテーマに対して問題提起をし、「結論」では本論を踏まえて自分の意見を書きます。
3段構成と4段構成の一番の違いは「本論」です。前者では「本論」で問題提起に対しての主張・意見を事実を元に述べます。後者は「本論」が2つあり、1つ目の「本論」は序論で提起した問題について自分の主張や意見を述べ、2つ目の「本論」では自分の意見が正しいことを事実や例を挙げて証明します。
最初は何を取り上げて自分の意見を証明すべきか分からないでしょうが、新聞やニュースで疑問に感じたことをメモしていくうちに、ニュースやトピック同士の相関関係が見えてくるでしょう。
作文と小論文の違い
そもそも、作文と小論文の違いとは何なのでしょうか。2つの違いを押さえていないと、自分ではよく書けていると思っていても落とされる可能性があります。就活における作文と小論文の違いについてまとめました。
作文は自分の願望や思いを描く
小論文ではなく作文による提出を求める企業もあります。就職試験における作文では抽象的なテーマが挙げられ、それに対する自分の思いや願望を表現するものです。つまり、就活における作文ではあるテーマに対する自分の考え方を述べる試験です。
作文試験には文字数やテーマといった基本的なルールがあるだけであり、内容自体に関しては自由です。もちろん、記述内容は「自分がいかに入社したいか」が中心ですが、いかにテーマを絡めて起承転結を意識して書くかが問題です。ごく短文ですが、以下に例文を挙げました。
作文テーマ「空」
テーマとなっている漢字は「そら」「から」「くう」「す(く)」「あ(く)」と様々に読めますが、指定がない限りは作文のテーマとしていずれの読み方を選んでも構いません。
例えば、「空」を「から」と読むのであれば「私は常に空っぽでいたいと思います。それは常に心を空っぽな状態にしておくことで気持ちよくお客様や新しくお会いする方に偏見を持つことなく接することができると思うためです」と書けます。
「空という感じは何とも空しいイメージのある漢字です」と作文にあったら、試験管は「だから何?」となってしまうでしょう。大事なのはその企業に対する思いを乗せるところです。
小論文は状況の解析である
小論文の場合は与えられた条件をもとにテーマを分析することを主とします。小論文のテーマは大きく分けて「その企業の事業内容に沿ったテーマ」「入社後にしたい仕事」「入社後のなりたいイメージ」「時事問題」の4つのジャンルで、これらの諸問題に関して自分の考えを論じる必要があります。
自分の考えを述べるだけの作文と大きく違うところは、小論文は課題や問題に対して自分の意見や解決法を客観的な根拠を挙げて論じるという点です。以下に簡単な例文を挙げてみました。
小論文テーマ「近年の子どもの食生活について」
栄養失調だけでなく、偏食とならないようにバランスに配慮した食事を提供する給食は、多くの小中学校で取り入れられている制度です。しかし、多くの子どもが給食を食べきらずに残しているという報道がされており、これは給食制度に問題があるというよりも普段の食生活に問題がある為だと考えられます。
上記のような始まりですと、これからどのような問題について論じるかが分かります。テーマから離れすぎない具体的な課題・問題を挙げ、それに対して自分の意見・解決策を根拠を挙げて論理的に提案できれば、小論文として問題のない内容になるでしょう。
就職試験本番までの小論文対策
小論文は日ごろから書くものではありませんが、普段からちょっとしたことを行えば対策を立てられます。例えば新聞やニュース、本の内容に疑問を持ったときはメモを残しておきましょう。もちろん疑問を書くだけでなく、疑問を解決するために必要な情報を集めて書きつけておきます。振り返ることが少なくても確かに自分の中に知識として積もり、小論文に深みを与えることになります。
小論文を書くにあたって必要な論理的な思考力は、自分が抱える疑問を解決するために、新聞やニュースなどから得られる情報を分析することで鍛えられます。また、新聞や本は校閲部によって正しい日本語かどうかを調べられていますので、読んでいるうちに自然と文章力が上がってきます。新聞や本を読むという行為は、論理的思考や文章力の向上に繋がります。
就職試験の「小論文」対策は学校のテスト勉強と同じでOK
就活試験の「小論文」に対して不安に感じている就活生は全体の7割以上に上ります。しかし小論文試験は実際のところ、高校までやってきた勉強と何ら変わりません。基礎的な情報を覚えて決められたフレームに当てはめるという作業は、まさしく学校のテストと酷似しています。そのため、小論文への対策はあり、また見るべき点は他の就活試験とは異なることを覚えておきましょう。