就活生はクレペリン検査を知っておこう
就職活動における筆記試験の代表と言えばSPIですが、全く違った種類の筆記試験が課されることもあります。そのひとつが「クレペリン検査」と呼ばれるものです。
「検査」という名前がつくことから、健康診断のようなものと思われがちですが、能力適性や性格診断などをまとめて行うことができる手法で、官公庁をはじめとして、一部の業界では採用ステップで取り入れられていますし、就職が決まってからも社内で実施されることもあります。就活生はクレペリン検査について理解し、必要な準備をしておきましょう。
クレペリン検査とは
クレペリン検査とは、内田式クレペリン検査と言われ、簡単な計算を一定のルールの中で行って、その作業量や精度などから対象の能力や性格上の特性を測る検査です。
試験であれば点数が問われますが、検査と言うように優劣をつけるというよりは個人の特徴や傾向を知るために行われるものです。考案者であるドイツの精神医学者クレペリン、検査手法として開発した心理学者の内田勇三郎の職業を見ても、基本的には心理的な状態を知ることが目的であることがわかります。
クレペリン検査では、1行に書かれた1から9までの1桁の隣り合った数字を足していくという簡単な作業をひたすら行います。前半後半を15分に分け、1分ごとに1行の計算作業を行って回答していきます。
この結果から「作業量」「作業曲線(1分ごとの作業量をグラフにしたもの)」「誤答」に関するデータを得、その人の能力や集中力、仕事上の性格や特性を知ることができるため、就活においても用いられるようになっているのです。回答に要する能力が計算だけですので、外国人であっても同じ条件で能力や性格を調べることができます。
クレペリン検査のやり方
クレペリン検査では、1行に書かれた数をひたすら計算していきますが、ルールがあります。例を挙げて計算をしてみましょう。
例:31492653589450…
「31492653589450…」というような数字の行を計算していくのがクレペリン検査です。この際に、計算としては隣り合った数字をひとつずつ計算していきます。
「3」「1」であれば3+1=4ですので、回答としては4を記入します。その次に「1」「4」を計算して1+4=5、回答は先ほどの4に並べて「45」と記入します(解答用紙によっては1文字ずつ記入できるようになっている場合もあります)。
次に「4」「9」となりますが、この場合は4+9=13となります。クレペリン検査では回答は下1桁のみを記入するというルールがありますので、答えが13なら3だけを抜き取り、先の回答45に続けて「453」と回答を追記していきます。
これを1行1分間でできるだけ行って、試験官の指示に従って次の行に移動します。この流れを15セット(15分)繰り返し、5分休んで後半15セット行います(合計35分)。
クレペリン検査ルールのまとめ
- 隣り合った数字の計算を1分でできるだけ行う
- 時間内に行内の全ての計算が終わった場合は次の行の計算を続ける
- 1分経過したら、指示に従って次の行に移動する。早く終わって次の行に移っている場合、その行ではなく新しい行に移動する
- 仮に行を飛ばしてしまった場合も、そのままの行で計算する
- 計算の間違いに気づいても修正はせずに次の計算を続ける
- 前半15分、休憩5分、後半15分で行う
クレペリン検査で就活生ができる対策
就活でクレペリン検査を行うのは基本的には能力測定と適性の測定のためです。素のままで臨むのが検査の目的上は良いですが、良い結果を出すために対策もできなくはありません。少なくとも、慣れの有無によって結果は大きく違ってきますので、最低限慣れておくと良いでしょう。
1.作業曲線の形に注意する
定型曲線では、アルファベットのUのような形を描きます。つまり、スタートの作業量が多く、真ん中が少なくなり、後半に持ち直すというような形です。そして、定型曲線では前半15分の結果より、後半15分の方が作業量が多くなる傾向があります。
こうした特徴がわかっていると、意識的に作業量をコントロールすることができます。あまり過剰に意識すると作業量そのものが減ってしまいますので注意してください。練習問題などを自分でやってみて、自分の傾向を知っておくとコントロールもしやすくなります。
2.作業量を増やすために計算練習をする
クレペリン検査では簡単な計算を行いますので、勉強は必要ありませんが、正確で速い計算をするには脳の慣れが必要になりますので、計算練習をしておくと効果的です。特に、慣れておかないと答えが2桁になったときに1桁目だけを取り出すのにロスが出てしまいます。
クレペリン検査対策の計算ドリルもありますし、クレペリン検査の計算練習ができるスマホ用アプリもあります。事前にクレペリン検査があるとわかっている場合は、慣れる意味で一度やってみると良いでしょう。
3.コンディションを整える
簡単な作業を某大にすることになると、能力も大事ですがコンディションもより大事です。前日にはしっかり眠って、食事も事前に適量をしっかりとって、脳の働きを良くしておきましょう。
実は、コンディション面では脳だけでなく「目」も大事です。細かい数字、数字の羅列を集中して見続けるというのは目に結構負担がかかります。
メガネやコンタクトの調整や、疲れ目対策なども事前にしっかりしておきましょう。前髪などが目にかかったりすることも集中力を落す原因になりますので髪の長い人はしっかりまとめておくようにしてください。
クレペリン検査でわかること
クレペリン検査で何がわかるのかと言うと、大きく分けて「能力」と「性格」です。企業がクレペリン検査を実施するのは、ここに理由があるのです。
クレペリン検査でわかるその人の能力
クレペリン検査から、作業量や誤答数によって仕事の能力がある程度見えてきます。簡単な作業をどれだけ正確にこなせるかが大切で、作業量が多い、誤答数が少ないことが高評価になります。ただし、これは簡単かつ単純な作業をどれだけできるかという能力であり、深い思考力や発想力などではありません。
クレペリン検査でわかるその人の性格
クレペリン検査の性格面では、性格上の大きな偏りがない健康な人の作業データから作られた「定型曲線」と比較して、どういった違いがあるのかを元に、個人の性格などを診断していきます。
クレペリン検査では、主に「発動性(物事の取り掛かりの良さ)」「可変性(物事を進める中での気分や行動の変化の大小)」「亢進性(物事を進める上での勢いの強弱)」といった観点から個人の性格の診断を行います。
「発動性」が高い人は物事のスタートが早く、気軽、素直、慣れが早いと言えますが、一方で先走ったり軽はずみがあったりするなどと評価もできます。発動性が低い人は手堅い、慎重とも言えますし、我が強い、えり好みがあるなどという評価もできます。
「可変性」が高い人は柔軟、機転が利くなどの特徴が見られやすいですが、気分のムラがある、感情的であるという傾向も見られます。可変性が低いと安定していると言えますが、機転が利かず、融通が利かない性格である傾向も見られます。
「亢進性」が高い人は行動的で頑張り屋さんである側面がありますが、一方で強引だったり無理をしたりするという傾向があります。亢進性が低い人は温和な人が多く、一方で受け身だったり、仕事上の持久力が低かったりするなどの傾向があります。
クレペリン検査には限界もあることを知っておくべき
クレペリン検査は就活において応募者の特性を知るために行われています。
しかし、クレペリン検査は対策もできることや、仕事上必要な能力は必ずしも単純作業を繰り返すことだけではないことから、クレペリン検査で能力や適性が判断できるとは限りません。当然、採用側もそれを重々承知した上で実施しています。
そのため、クレペリン検査だけでなく、面接やエントリーシートなど他の要素と総合した結果で就職活動の結果は決まります。クレペリン検査の対策にたくさんの時間をかけるよりは、他の部分に時間をかけた方が就活では有効という声も少なくありません。
クレペリン検査の内容や限界を知らないと、クレペリン検査の後に落選となった場合に過剰にクレペリン検査を意識して、対策に時間をかけるようになってしまいますので気を付けてください。
就活生はクレペリン検査を過剰に心配する必要はない
耳慣れない「クレペリン検査」という言葉に身構えてしまいますが、クレペリン検査は仕事上の特性を知るための検査であり、厳密には試験ではありません。事前に最低限の対策をしておけば、後は適性の問題と割り切った方が良いでしょう。クレペリン検査の後に落ちてしまっても、その場合は合わない職場だったと考えるべきです。
クレペリン検査に多少慣れておいて、コンディション対策をしておけば基本的にはOKです。クレペリン検査を過剰に心配しないようにしましょう。