CtoCビジネスの雄「メルカリ」をちゃんと理解していますか?
メルカリと言えば、個人間で要らなくなったものを手軽に売買することができるアプリとして有名ですが、その市場規模は非常に大きくなり、ついには東証への上場を果たすに至りました。日本発のCtoCサービスとして世界展開も始まっており、今後の活躍も期待されています。
大学生の酒井君は、メルカリは知っているもののその影響力が今ひとつピンと来ません。経営コンサルタントのK・エーイ氏に、メルカリがどうしてそこまで話題になっているのか尋ねてみました。
メルカリほど便利で楽な取引はない
―おはようございます、エーイさん。エーイさんは、メルカリって使ったことあります?
私ですか?ありますよ。どうかしたんですか?
―実は、就活の時事問題対策でメルカリについて意見を準備しておいた方がいいと聞いたんですけど、どうにもメルカリについての意見って「便利」くらいしか浮かばないんですよ。
まあ、利用者の感覚だとそうですよね。それでいいんじゃないですか。
―いやいや、就活ではそうはいかないじゃないですか。もっとキレのある、他の人が驚くようなことを言ってこそ厳しい就活戦線を勝ち抜けるんですよ。
そういうものなんですかね…。まあ、いいでしょう。でも、メルカリが本当にすごいところって、やっぱり「便利」に尽きるんだと思いますよ。私に言わせれば「メルカリほど便利で楽な取引はない」と言っていいと思いますから。
―「メルカリほど便利で楽な取引はない」って、そんなに楽なんですか?
そりゃ楽ですよ。出品者側としては、商品の登録さえしてしまえば、後はほとんど面倒なことはメルカリのシステムが代行してくれますから。商品を登録し、売れたら商品を発送する。それだけです。
―でも、ネットオークションなんてみんなそんな感じでしょう?
いやいや、メルカリのすごいところは、基本的に即決で販売されるところや、約半分の商品が24時間以内に売れると言われるその回転率の高さです。商売で一番のリスクは在庫を抱え続けることであり、一番大変なことは顧客を開拓することです。メルカリはそういった難しい点をほとんどクリアさせてしまう、圧倒的な市場と、検索やレコメンドの適切さなどが強みなんです。購入する側も、クリックやタップを数回したら購入できるでしょう。
―確かにそうですね。あまりメルカリはたくさん使ったことがなかったんですが、そこまで便利なものだったんですね。こう言われてみると、「便利」と言ってもいろんな便利さがあり、奥深いですね。
メルカリはCtoCの巨大市場を生んだ
―メルカリと言えば、CtoCのビジネスになるんですが、これって大きくなるんですか?やっぱり企業が入らないと大きくはなかなかならないと思うんですけど。
基本的にはやはりBtoBやBtoCと比べると市場は小さいですよ。でも、CtoCは思ったよりも市場が大きいということがメルカリやヤフオク!などの有名サービスを通してわかってきて、企業の中にも参入を始めているところが増えてきています。今はメルカリと同じようなフリマアプリでも、いろんな特徴あるマーケットを作って差別化をはかっていますね。
―具体的にはどういう感じでしょうか?
昔からネットオークションなどでは、ちょっとマニアックな品物がよく売れていましたよね。限定品とか、もう生産中止になっている品物とか。そういうジャンルは相変わらずオークションが強いんですが、たとえばハンドメイドの家具や雑貨なんかは、今は専門特化したフリマアプリなどの方が強くなっています。また、処分したい品や、不要な品もフリマアプリの方が強いですね。
―ハンドメイド品って、副業なんかに良さそうな感じですね。
そうなんです。副業ブームの影響もあって、自分の趣味をお金に変えてみたいとチャレンジする人も多くなっていて、そこに取引のしやすさが加わってどんどんCtoCの市場が大きくなってるんですね。
―なるほど。
さらにいえば、メルカリなどのフリマアプリには、ルールに違反しなければ基本的に何でも出品して販売することが可能になっています。だからこそ、「無線LANケーブル」のようなネタ出品などもありますが、技術やサービスを販売するということもできてしまうんですね。収益を度外視した商品があるというのもCtoCビジネスの魅力のひとつなんじゃないかと思います。
―そう考えると、まだまだCtoCの市場は広がっていきそうな感じがしますね。参加者が多くなるほどいろんな商品が出てくる可能性がありますもんね。
はい。そのため、最近のCtoCの流れは全世界でのサービスに向かっていると言えます。ただし、物の取引になると法律や輸送上の問題、関税などがどうしてもありますので、国内ほど気軽に簡単にとはいきません。これをフォローする仕組みができてくると、一気に市場は広がりますね。
―なるほど。そういった可能性もあるからこそ、フリマアプリを扱っていながら東証に上場なんてすごいことになるんですね。メルカリのようなフリマアプリの会社って、上場できるほど成長できるのかなってずっと疑問だったんです。
メルカリの上場が市場に与えた衝撃は大きい
メルカリの上場って、本当にインパクトがある出来事だったと思います。何せ、メルカリという会社は基本的にフリマアプリを作り、運営をしているだけなんです。もちろん、特有のノウハウがあるのは間違いないと思うのですが、そんなシンプルな事業内容で上場できるレベルになったのは衝撃的です。
―確かに、普通に考えると商品ジャンルが絞られている中で利益を出し続けるって難しいですよね。牛丼屋さんでもいろんなメニュー出しているくらいなのに。
そうなんです。メルカリはそういう金脈を掘り当てたということでもありますし、市場の可能性を広げたという点でも評価できると思います。その期待は株価にも出ていて、取引初日の公開価格3000円に対して最高で6000円にまで達し、5300円で初日の取引を終えました。その日の取引金額はトヨタなどの東証一部の大企業を抑えてトップ、時価総額では初日で東証マザーズのダントツの首位となったんです。
―株価の話はよくわからないのですが、すごかったってことですよね?
はい。簡単に言えば、株価は企業の価値への期待度です。取引総額は「有名大企業よりも投資家が欲しい株」だったということを示しますし、断トツの時価総額は、つまり東証マザーズという市場で文句無しに「メルカリは最も価値ある企業」だという評価を受けたということです。
―なるほど!メルカリって本当にすごいんですね。
そう、そういった価値が、アプリの提供やサービス運営から生まれたんです。これはCtoC市場を侮っていた多くの人々を驚かせました。今後の投資家たちの考え方や、また企業のビジネスの方向性などを見直す機会にもなったんじゃないかと思います。
メルカリにまつわるCtoCには様々な問題がある
―メルカリだけではないと思うんですが、フリマアプリって、時々ニュースなどでも問題になるような商品がたくさん出てきますよね。現金が売られていたとか、盗品が販売されたとか。
そうですね。こういったものは中古市場やCtoCの市場が大きくなる中では必ずと言ってもいいほど出てきますよね。
―こういったものが出てくる背景はどういうものがあるんですか?
そうですね。まず、「最初から完全なサービスや完全なルールはない」ということです。だからこそ、運営がとても大事なんですが、いつも新しいものには、それを悪用してお金を稼ごうとする人が寄ってくると思っておいてください。そして、「利用が簡単なサービスほど悪用を防ぐための仕組みが弱い」ということですね。
―ルールや仕組みによるものがあるんですね。
はい。面倒なルールや仕組みがあれば、多くの人は使いたがらないものです。しかし、それでも使う人というのはスキルもニーズも高い人が多くなるため、自然と客層が良くなるんですね。
―じゃあメルカリは客層が悪いってことですか?
悪い人もいる、というくらいですね。メルカリは自由度を損なわず、不適切な利用があれば発見できるように目視やAI、また通報などを使って対処し、その秩序を保てるように努力していると思います。そういった倫理的な部分も上場でも散々問われましたしね。
―「現金を売る」とか僕には理解できないんですけど。
これは、簡単に言えば「金貸し」の手法です。クレジットカードで購入するなら、支払いまでに1か月ほどの猶予ができます。そのため、急ぎで現金が欲しい人が高くても「現金」を購入するわけです。現金の出品が禁止されたらICカードや商品券など、換金できるものが取り扱われていましたが。
―そうなんですね。これって法律的にはアウトなんですか?
グレーなところですね。クレジットカードの現金化の手法は、業者が勧めた場合にはアウトになる可能性が高いですが、同じ仕組みを個人が行うことに関しては今のところセーフです。ただ、メルカリではすでにルール違反になっています。こういったものを放置していると、マネーロンダリングの場としてサービスが使われてしまう可能性があるので、適切な対処だと思います。
それでもメルカリ人気は止まらない
―エーイさんは、今後もこのメルカリの人気は止まらないと思いますか?
そうですね。しばらくは安泰じゃないでしょうか。メルカリは、やっぱりユーザーが多く、便利ということが一番の魅力ですね。
―でも、たくさんの類似サービスも出ていて、競争も激しいんじゃないでしょうか。
はい、確かに類似のサービスもありますが、規模や知名度ではメルカリが現在圧倒的です。それに、他の競業はコンセプトを絞り込んで勝負しており、メルカリのように全方位型のフリマサービスは行うのが難しくなってきています。二番手のラクマがやっと近いことをしている程度ですね。
―何だか経営学の教科書みたいな展開ですね。
はい。まさにそうです。先行してトップ企業になって、そのスケールバリューを活かして上手に運営しているからこそです。メルカリは特に「主婦層」と「若者」という消費や流行の軸になる層を取り込むことに成功したというのが最も強いところですね。消費額が大きいとは言えない層だとしても、継続的な利用が見込めますし、出品者にもなってくれる可能性が高く、また情報の拡散力があります。
―規模的なものだけでなく、質としてもメルカリは良い顧客を持っているということなんですね。
はい。それを考えると、メルカリは、後は上手く市場の規模を広げていくことができれば安泰ですね。上場したことによって株主からの要求は厳しくなり、利益をしっかり出すことが求められる可能性はありますが、性急すぎてサービスを潰すようなことがなければ大丈夫でしょう。
メルカリは日本のシェアリングエコノミーの成功例
―メルカリが色々と話題になっている理由がわかってきたような気がします。そろそろ時間なのですが、言い残したことなどありませんか?
おっ、もうそんな時間なんですね。メルカリは、「日本でシェアリングエコノミーがうまくいっている珍しい例」だと言うことができると思います。個人で持っているものをシェアすることによって、様々な問題の解決に役立てるという発想のことです。
―メルカリってシェアリングエコノミーなんですか?
メルカリは、フリーマーケットのコンセプトはシェアリングエコノミーそのものですよ。ただ、今やネットショップの代わりになってしまっている出品者もいますけどね。自分の持ち物や技術が広く共有され、それが誰かの役に立って代価をもらう。望ましい形になっていると思います。
―他の分野は割と規制によって上手くいっていませんね。
他の分野だと、明確な競争相手があるからでしょうね。たとえば民泊サービスならホテル・旅館業、Uberならタクシー業のように。メルカリは対象が広すぎるために、明確な競争関係を持つような相手がいなかったのが奏功したのかもしれません。もしかすると、国産サービスだから受け入れられたのかもしれませんしね。
―なるほど。日本発というだけでも、気持ち的にはメルカリに頑張ってほしいです。日本はシェアリングエコノミーが遅れているって言われがちですが、こういうサービスがあるんだぞって世界的に自慢できるようになるといいですね。エーイさん今日もありがとうございました。
メルカリが与えた社会的な影響は大きい
メルカリは社会に大きな影響を与えた企業・サービスと言えます。一部の出品内容が社会問題となったこともありましたが、それはごく一部の例であり、企業やサービス全体の評価は株価の上昇などからも明らかなように非常に高いものです。さらに、メルカリの存在は日本におけるシェアリングエコノミーの普及にも大きな影響を与えています。メルカリを単なるフリマアプリと考える人は、その価値をより深く理解するために一度じっくりと掘り下げてみることをおすすめします。