出戻り転職は増えていると聞くけど成功か失敗かは個人差がある
転職を志して務めていた企業を離れ、転職をした先でやはり合わずに元の企業に戻ることを「出戻り転職」と表現することがあります。こうした出戻りの転職を受け入れる企業が最近は少しずつ増えていると言いますが、これについてどういう印象を持つでしょうか。
実際に出戻り転職をした人の話を耳にすると、安心できる反面、難しさを感じるケースもあり、成功か失敗かは個人差が非常に大きいです。転職時の選択肢として出戻り転職は無しではないですが、安易に考えるべきではありません。実情について詳しく理解しておきましょう。
出戻り転職とは
出戻り転職とは、転職の際に、一度退職した会社に再び就職することを言います。職種や部署などが全く同じになるケースもありますが、別の部署や職種を担当することもあります。
今は出戻りでの転職が増えつつあります。企業のうちの約半数ほどは出戻りの社員を受け入れているというデータもあり、出戻り転職自体はそれほど珍しいことではなくなっているようです。
昔は年功序列の終身雇用制度が基本で、就職してきた社員に対しては「会社が一生面倒を見てやる」雰囲気がありました。そのため、転職をするということはすなわち「恩知らず」の烙印を押されてしまいかねず、とてもじゃないですが元の会社に戻ることは許されない雰囲気がありました。最近は終身雇用が崩壊しており、転職も職業人生で数回はあるのが当たり前という考えになってきているため、こうした感情的な部分の反発が薄くなってきているのです。
加えて、日本国内の人口構成のいびつさから、働き手がどんどん不足する状況が生まれてきています。そのため、企業にとって育児や妊娠・出産などを理由に退職した女性や、何かしらの理由で一度は退職した社員を受け入れるメリットが出てきています。何より、能力や人格などを理解していてミスマッチが少ないということや、教育をする手間が少なくて済むという部分が即戦力かつ長く働ける人材を求める企業にとって非常に助かるのです。
このような理由で出戻り転職が増えていますので、知っておくと出戻りに対するネガティブなイメージはだいぶ薄まることでしょう。
やっぱりそうなの?出戻り転職は実際には難しい理由
出戻り転職は増えていますが、出戻り社員が出戻った職場で再び活躍するのは難しいと言われます。その理由について紹介します。
出戻り転職は退職した時の評価や理由がモノを言うから
一度会社を退職した時に、周囲からどのような評価をされていたのか、またどのような理由で退職したのかは大きな問題となります。周囲からの評価というのは、簡単に言えば「一緒に働きたいかどうか」です。周囲の評価が低ければ、出戻りを認めることによって周囲のモチベーションが下がってしまうため、企業としては人材難でも採用しにくくなります。
退職理由についてはライフステージ上、仕方のない問題での退職なら問題ありませんが、待遇や仕事内容などを理由に退職していた場合には同様の不満を持つことが想定されるため受け入れにくくなります。
出戻り転職はコネが無いと出戻ることが難しいから
通常の転職にあたっては、エージェントも元々在籍していた企業を斡旋することはまずありません。実際、出戻りとなるケースでは、一般的な転職のルートよりも、社内に残っているコネを利用して転職に至るケースが多くなっています。そのため、退職時に社の人と完全に縁を切ってしまうようだと出戻りは難しくなるでしょう。
出戻り転職は周囲との遅れを強く感じ、自分の居場所を失いやすいから
たとえ出戻りでの就職に成功したとしても、当然ながら自分が会社を離れていた期間に社内ではいろいろと変化が生じていますし、同僚は昇進し、後輩は自分よりも先を行っていることもあります。周囲と遅れを強く感じるあまりに、自分の居場所を感じられず精神的につらくなる人もいます。
出戻りした後の待遇は退職前と同じにはならないから
完全に以前と同じ待遇にしてくれる場合もありますが、基本的には待遇を同じにはしてくれず、中途採用者の基準で測り直すことが一般的です。そのため、待遇が改善されるケースもありますが、待遇が下がってしまい、場合によっては以前と違う部署で働くことになり、まさに一からのスタートになるケースもあります。社歴もリセットされる場合もありますので注意が必要です。
後悔しています。出戻り転職で失敗した体験談
ここで、出戻り転職を後悔している失敗体験談を見てみます。転職活動の厳しさについ甘えて出戻り転職しても、必ずしも成功するわけではないことが分かります。
嫌な部分があって辞めた会社に出戻りしても上手くはいかない
YuKi(32歳)
私は25歳の時に出戻り転職をしました。専門職(教育関係)から医療関係に転職。そして又専門職へ。全く同じ会社に戻りました。当時の社長直々に帰って来て欲しいと説得されたのが一番大きな理由でした。
しかし、元の職場に帰ってみると、働く環境はいた時よりも厳しくなっており、理事長からのセクハラが始まり復帰したことを本当に後悔しました。周りの社員の反応はマチマチでしたが、仲が良かった同僚がいてくれたので、それほど人の噂は気になりませんでした。
最後は姉妹店に移動になり、セクハラが更にひどくなったため結婚を機に辞めました。毎日の勤務時間は朝7時前から働き、夜11時頃帰宅。残業代はなしでした。帰宅後も自宅で仕事をするのが日常茶飯事だったため辞めて正解だったと今でも思います。
やはり嫌な部分があって辞めた会社に出戻りしても上手くはいかないのです。転職活動が苦しく出戻りしたい気持ちは分かりますが、私ならおすすめはしません。
元の職場に戻りたい…出戻り転職はありかなしか?
出戻り転職はありか無しかで言えば「あり」です。しかし、どうしてもネガティブな面があることは理解しておく必要があります。少なくとも、キャリアアップや待遇の改善などを目的に狙って行うべきではなく、転職先でうまくいかなかった場合の選択肢のひとつという考えにしておきましょう。
今後は今以上に労働力の流動性が高まることが予想されますので、出戻り転職の可能性も考えると、少なくとも在職中から周囲との人間関係に注意したり、また評価される仕事ぶりを見せておく必要があるとも言えます。
出戻り転職は、できるだけしないで済むならしないにこしたことはありません。他の企業で過ごした時間があまり意味を持たなくなる、もしくはネガティブな要素になってしまうことがあるからです。
退職した職場に戻る出戻り転職で失敗しないためにすべきこと
出戻り転職で失敗しないためにはいくつかのポイントがあります。入社前と入社後に分けてポイントを解説します。
出戻り転職で入社する前に退職した理由を上手く伝えること
出戻り転職を成功させるためには、どうして一度辞めたのか、そして今はどうしてその会社でまた働きたいのかという理由を明確にすることが大切です。少なくとも、以前と比較して何も違いが無ければ、企業としてはまた会社を離れるリスクを考えざるを得ません。
「以前は〇〇と考えていましたが、他の企業で働く中で、××と考えるようになりました」と以前との比較をもとにうまく志望理由を伝えることができるようにしましょう。当然ながら、採用担当者が見知っている人だとしても馴れ合わず、しっかりと受け答えをしてください。
また、一般的な転職と同じく、給与額や待遇などを志望理由にしないように注意してください。給与や待遇は「企業側が与えるもの」であり、転職活動をする際の志望理由というのは「自分が企業に与えたい価値」と「そこで働くことで成したいこと」をアピールするのが正解です。
出戻り転職の入社後は採用して良かったと思われる努力をする
出戻り転職が決まっても、より大変なのは入社してからです。待遇が以前ほど良くない場合もありますし、改善されていればそれだけの働きをしなければ評価は落ちていく一方となります。そのため、しっかりと熱心に働くことは最低限必要となります。
また、仕事は一人ではできませんので、周囲との関係も大切になります。以前から関係の良い人が多ければ仕事もそれだけスムーズに進むでしょうが、そうでない場合には周囲との関係づくりをしっかりしていかないと、「出戻り」のネガティブな印象が強まってしまいます。他の企業を経験してきたからこそ感じる会社の良さを周囲にも伝えていくなど、以前と比較して一回り会社への愛着が増していることを示していくと良いでしょう。
業績面でも、コミュニケーションの面でも、「採用して良かった」と会社に思ってもらえるような努力を尽くす必要があります。まずはそうやって居場所を確保し、それから出世コースなどに返り咲いていくべきで、焦ってはいけません。
出戻り転職をして良かった!出戻り転職で成功した体験談
ここでは、出戻り転職をして良かったと感じた人の成功体験談を4つ紹介します。出戻り転職が成功した背景として、元の職場との関係が良好だったことがうかがえます。
出戻り転職をして本当に良かった
gori(44歳)
私が出戻り転職したのは32歳の時です。元々はお菓子メーカーで製造をしていたのですが、体力的にあまりにきつかったので、これから先年を取ってからこの仕事は無理だと思い、バスの運転免許を頑張って取ってバス会社に無事に就職することができました。
しかし私の考えがあまかったです。研修中のある日バスを運転していて突然隣の車線から乗用車が割り込んできて、急ブレーキをかけてしまい、バスに乗っていた年配の方が転倒して怪我を負わせてしまいました。それから運転するのが怖くなり結局退職することにしました。
無職になり自分は何ができるのかと振り返りお菓子の製造しかないと思い、社長にもう一度働かせてくださいと電話したらいいよと言ってくださいました。
社員の方やパートの方もおかえりと皆さん言ってくださり、とてもありがたく思い、それから前の働いていた時以上に頑張り給料もあげていただき本当に出戻り転職してよかったと思いました。
今出戻り転職を考えている人に、勇気を出して電話して事実をつたえてお願いしてみることを私は勧めます。
贅沢はできませんが幸せです
クラウ(40歳)
中途採用のルート営業職から、新卒採用された保育士へ出戻り転職をしたのは31歳の時でした。保育科を卒業してOLになった彼女と結婚する際にネックになったのが私の給料、悩んだ末に選んだのが彼女との結婚でした。
28歳で結婚して離婚したのが31歳、子供がいれば養育費のために給料が良い営業職を続けましたが、幸いにも離婚により自身の生活だけを考えれば良くなったため、営業職をアッサリと辞めることが出来ました。
ルート営業をしている時も、車を停めて休むのは決まって保育施設の近く、無邪気に遊ぶ子どもたちの様子を見るのが心の癒やしになっていました。ダメ元で働いていた保育園を訪れ、離婚したことを理事長に話すと、出戻り転職を強く勧めてくれました。
出戻った職場は個人経営の小さな保育園のため、保育士の顔ぶれは以前と変わらず、温かく迎えてくれました。給料は営業職に比べれば3割減、しかし以前働いていたレベルの給料は頂けており、贅沢は出来ませんが幸せな人生を送れています。
出戻り転職は元鞘に戻るようなもの、気恥ずかしい気持ちはありますが、勝手知ったる場所は心の安らぎには打って付け、どうせ迷うなら一歩踏み出して迷うほうが賢明です。
いつでも戻っておいでと言ってくれた
たかー(35歳)
30歳前に自分で稼いでいこうと思い、独立しました。しかし、資金繰りが上手くいかず、34歳の時に会社をたたみ、元の会社に出戻り転職しました。元にいた会社は製造業です。独立してからも取引先として良好な関係を築いていました。
自分の会社をたたむ時に、元いた会社の社長に相談したところ、いつでも戻っておいでと声をかけてもらいました。元同僚も私が出戻るのを歓迎して受け入れてくれましたので、感謝の気持ちでいっぱいです。独立した時の経験が活かされて、元の会社でも売り上げに貢献することが出来ています。
転職する際は、元いた会社とは良好な関係で辞めることによって、困った時に、助けてもらえます。まずは一度、社長や上司に相談して、戻ってみることもいいかと思います。
かつじ(38歳)
私が出戻り転職を経験したのは今から約10年前の28歳の時です。その1年前の27歳の時に地方から都内の大手飲食店へ転職し、そして1年ほど勤務した後に出戻り転職しました。
上京した当時はやる気に満ち溢れ、「何でもやってやる!」という気持ちで働いていましたが、家賃と給料のバランスが崩れ採算の目処も立たず、田舎へ戻ることになりました。
田舎へ戻ってから以前勤めていた会社へ連絡してみると、丁度募集をかけているということで、その時面接予定の数人を面接したあとで良ければと言うことで待機していました。そしてその数人が不採用となり私が採用されるということになりました。
その会社で働いていた頃の人間関係も特に問題は無かったので、出戻り転職後も今まで通り皆さんと接することが出来ましたし、皆さんも同じように接してくれました。その後現在まで約10年勤めていますが、総合的な待遇や環境も良くなり、結果的に出戻りをして良かったと思います。
世間的には、出戻り転職は恥ずかしいとか、後ろめたいとかいうイメージがありますが、現実は全く違います。企業は戦力を求めており、慣れた社員・熟練した社員などは喉から手が出るほど欲しいのです。
出戻り転職に二度目はないことを肝に銘じよう
出戻り転職で気を付けておいてほしいのは、「二度目はない」ということです。
一度会社を辞めただけでも、会社には迷惑がかかっています。多くの場合は欠員が出れば採用活動を行って、さらに教育を行うなど、穴埋めのための費用がかかっています。欠員補充をしないとしても、他の社員の業務負担が増えていることは間違いありません。
そのため、出戻り転職をしてきた人というのは肩身が狭く、立場の弱い存在になることも多いのです。戻ってきたら、かつての後輩に指導や指示をもらって仕事をしなければならないことも少なくありませんが、すべてを受け入れる必要があります。
辛いからと言ってまた辞めることがあれば、今度はもう出戻り転職をすることはまず不可能でしょう。つらいことがあれば、自分にとって状況が気に入らなければ辞める人だと会社にも印象づいてしまうからです。数回家出しても家族は戻れば受け入れてくれるでしょうが、会社はそうはいきません。
出戻り転職はひとつの選択肢だがアテにするのは良くない
人材難という事情もあり、即戦力として出戻り転職に期待が寄せられている部分があるのは確かですが、企業側の事情はそうでも、実際に労働者が出戻り転職で働き甲斐を感じられるかとなるとまだまだ難しい状況があります。そのため、出戻り転職は選択肢のひとつだとしても、あまりアテにするべきではないと考えた方が良いでしょう。
しかし、出戻り転職を可能にし、選択肢を広げるためにも、転職を考えていても、退職までしっかりと仕事はし、会社での人間関係をしっかり作って維持することが大切になってくるでしょう。