サラリーマンの平均年収を考えてみよう
よく耳にする「平均年収」という言葉。働く上で、誰もが一度は気にした事があるのではないでしょうか。自分は世の中でどのくらいの位置にいるのだろう、自分の稼ぎは平均よりも上なのか、下なのか……?
そもそも平均年収とは何なのか、今回はサラリーマンの平均年収について考えてみましょう。
サラリーマンの平均年収から自分がいる位置を把握できる
サラリーマンの平均年収を算出する時に、一部の年収が高い人達を含めてしまうとその額は一気に底上げされてしまいます。ですから、一概に当てになるものとは言えないかもしれません。それでも、自分が社会の中でどの程度のポジションに位置しているのかを知る手がかりにはなります。はっきりとした事はわかりませんが、自分が上にいるのか下にいるのかという、おおよその目安にはなります。
日々働いている中で「これだけ働いている自分は世の中の人よりも稼いでいるのではないか」と思って検索をしてみたら、全くそんな事はなかった、などという事があるかもしれません。しかし、平均年収をどう捉えるかは自分次第です。そこから、もっと頑張ろうと思うか、もうやる気が失せたと思うかは自分にかかっています。
平均年収を知る事によって、生涯年収を考える事もできます。生涯年収は、一般的に学歴が高く同じ企業により長く勤めた方が長く貰えるものとされます。生涯年収を知るためにも、今の年収を平均年収と照らし合わせておくと良いでしょう。
平均年収がわかると身の振り方を考えるきっかけになる
サラリーマンの平均年収がわかると、これからの身の振り方を考えるきっかけにもなります。今の会社の給与に何となく不満を持っていて、実際に平均年収と照らし合わせてみると明らかに貰っている額が低いとなると、不満はエスカレートするばかりです。
そうであるならば、思い切って転職活動を始めるのも良いかもしれません。年収が低い会社に勤め続ければ生涯年収も低いままですし、養育費や老後に必要なお金にも悪影響が及びます。実際に転職活動を成功させ、もっと給与の高い好条件の企業に就職した例はたくさんあります。まず、動き始めてみてはいかがでしょうか。
サラリーマンの平均年収の推移
サラリーマンの平均年収は、どのように推移しているのでしょうか。その移り変わりと現在を見ていきます。
国税庁の調査によると、過去の平均年収はほぼ横ばいで大きな変化がありませんでした。しかし、1997年の消費税増税による増加や、2008年のリーマンショックによる減少など、大きく動いた年はあると言えます。
リーマンショック以降2010年からの平均年収は再び横ばいに戻り、かつ、じわじわと減少する傾向にあります。これは、倒産する企業やリストラされるサラリーマンの増加など、不況がまぬがれなかったからです。
現在は平均年収を上昇させている途中
現在は、リーマンショックで下がってしまった平均年収を再び上昇させようとしている途中であると言えるでしょう。経済を取りまく環境が好転し、大手企業の業績が好調となり、株価が上昇してもなお、賃金の改善には至っていません。
正社員を減らして、派遣社員や契約社員でまかなおうとする企業も増えている事から、サラリーマンの平均年収は減少する傾向にあります。サラリーマンの平均年収については、これからの景気が上向きになるかどうかにもかかっています。
サラリーマンの年齢別・業種別平均年収
サラリーマンの年代別・業種別平均年収について見ていきましょう。下の表は、国税庁が、平成27年12月31日現在の国家公務員、地方公務員、公庫職員等を除いた民間で働く従業員(非正規含む)及び役員を対象に給与所得を調査しまとめた「民間給与実態統計調査結果」から年齢別業種別平均給与額を抜粋し分かりやすく示したものです。
19歳以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
建設業 | 2,506 | 3,505 | 4,413 | 5,228 | 5,521 | 4,122 | 2,923 |
製造業 | 2,330 | 3,518 | 4,641 | 5,428 | 5,880 | 3,728 | 3,611 |
卸売業・小売業 | 931 | 2,513 | 3,688 | 4,031 | 4,137 | 2,965 | 2,956 |
飲食サービス業・宿泊業 | 898 | 1,888 | 2,881 | 2,847 | 2,723 | 1,966 | 1,730 |
金融業・保険業 | – | 4,016 | 6,003 | 7,265 | 7,377 | 5,367 | 5,035 |
不動産業・物品賃貸業 | 1,376 | 3,187 | 4,692 | 5,383 | 4,882 | 3,508 | 3,037 |
運輸業・郵便業 | 2,043 | 3,414 | 4,232 | 4,481 | 4,687 | 3,177 | 2,848 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 2,225 | 4,138 | 6,007 | 7,967 | 9,082 | 5,780 | 5,479 |
情報通信業 | 1,821 | 3,628 | 5,204 | 6,530 | 7,584 | 4,596 | 4,188 |
学術研究,専門・技術サービス業 | 1,258 | 3,272 | 4,540 | 5,310 | 6,242 | 5,218 | 3,667 |
医療,福祉 | 1,914 | 3,157 | 3,642 | 3,944 | 4,479 | 3,823 | 4,316 |
複合サービス事業 | 1,855 | 3,047 | 4,023 | 4,776 | 5,014 | 2,838 | 2,053 |
サービス業 | 1,437 | 2,655 | 3,656 | 4,038 | 3,942 | 2,628 | 2,523 |
農林水産・鉱業 | 5,307 | 2,769 | 3,449 | 3,567 | 3,705 | 2,699 | 1,816 |
年代別にサラリーマンの平均年収を考える
40代から50代の平均年収が最も高い時期です。これは、役職が付き、会社の中での地位が上がるため、平均的な収入そのものが高くなるためだと考えられます。異なる業種への転職によって若者の年収が押し上がったり、伸びしろのある業界が若手の獲得により業績を上げ、結果的に若者の年収が上がるという事もあります。
しかし、実力主義がうたわれる企業が増えてきているとはいえ、年功序列の傾向がまだ強く残っていることは否めず、ほとんどの企業は長く勤めれば勤める程賃金が上がるシステムを崩さずにいると言えるでしょう。
また、高卒で働いている人(20代前半)の年収と大卒で働き始める人(20代後半)の年収は初めから差がつくため、20代の年収と言っても実際には中身にばらつきがあるのが現状です。そして、20代から30代に上がる時にはかなり年収が上がる人とそうでない人に分かれる事が見てとれます。
60代は定年退職により一気に年収が減ります。退職金をたくさんもらえる人は安定した生活が待っているかも知れませんが、そうでない人はその後の年金だけの生活に不安を覚えることでしょう。第一線を退いても何かしらの収入を確保するために、今から収入源を計画的に考えておく必要がありそうです。
業種別にサラリーマンの平均年収を考える
「電気・ガス・熱供給・水道業」は、年代を問わず平均年収が高いです。これは、ひとえに競争がない業種だからだと考えられます。しかし、2016年4月に電気の小売が全面的に自由化となり、各家庭で自由に販売会社を選ぶことができるようになりました。競争原理が働くと、新規に参入した各社がサービスの拡充を図ることが予想されるため、消費者にとっては利用料金が下がる恩恵が考えられるものの、そこで働く人の賃金が高いままで推移するとは思いにくいです。自由化の波は、ガスや水道業界へと広がってゆく可能性もあります。
ただ、年収が高いというだけでこの業種で働きたいと考えるのは拙速です。年収が高いには理由があります。電気・ガス・水道など生活のインフラを担う仕事は、365日24時間休みなく稼働させる必要があります。雨の日も雪の日も台風でも点検作業をやめることはできません。ひとたび災害が起こると、復旧に至るまで休日返上で作業を続けなければならないのです。競争がないからと言って楽をして高い年収をもらっているわけではないことを知っておきましょう。
地方と都市部から見るサラリーマンの平均年収の格差
サラリーマンの年収を地方と都市部から見てみましょう。下の表は、国税庁が、平成27年12月31日現在の国家公務員、地方公務員、公庫職員等を除いた民間で働く従業員(非正規含む)及び役員を対象に給与所得を調査しまとめた「民間給与実態統計調査結果」から国税局別平均給与額を抜粋し分かりやすくまとめたものです。
労働時間 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 給与所得者数(人) | 合計給与 | 平均給与 |
---|---|---|---|---|---|
札 幌 | 46.8 | 11.4 | 1,581,229 | 5,624,487 | 3,557 |
仙 台 |
46.3 | 12.9 | 2,634,602 | 9,132,815 | 3,466 |
関東信越 | 46.5 | 12.4 | 5,293,672 | 20,218,173 | 3,819 |
東 京 | 44.7 | 11.5 | 15,662,409 | 76,381,917 | 4,877 |
金 沢 | 46.8 | 12.5 | 1,111,019 | 4,100,587 | 3,691 |
名 古 屋 | 45.6 | 12.4 | 5,527,582 | 22,985,023 | 4,158 |
大 阪 | 45.8 | 11.9 | 8,038,426 | 33,731,926 | 4,196 |
広 島 | 45.8 | 11.7 | 2,461,846 | 9,387,349 | 3,813 |
高 松 | 46.7 | 12.4 | 1,277,396 | 4,623,352 | 3,619 |
福 岡 | 45.6 | 10.9 | 2,363,838 | 8,602,774 | 3,639 |
熊 本 | 46.1 | 11.7 | 1,651,833 | 5,624,065 | 3,405 |
沖 縄 | 43.6 | 10.0 | 335,876 | 1,122,186 | 3,341 |
都市部の方が地方よりも年収が高い、という話をよく耳にします。上の表からも分かるように、確かに地方に比べて都市部の方が年収は高いです。しかし、都市部は、家賃を含め、食費などの物価も全体的に高い傾向にあります。
地方はいくら物価が安いとはいえ、そもそも求人情報が少なかったり、自分が求めている企業が見つからなかったりと、就職を探す側が都市部に出ていかざるを得ない状況がある事も事実です。そのため、高収入を狙う人達の都市部への流出は避けられない事態となっています。また、賃金が高い大企業があるのが都市部であるという事も、都市部の年収が高い原因のひとつです。
教育費やローンなど、将来の事までを見据えると、目先の賃金やそれを計算した年収だけを考えての就職や転職はあまりおすすめできません。物価の安さだけでは、地方と都市部の年収の格差は説明がつかないものがあります。
男女別から見るサラリーマンの平均年収の格差
サラリーマンの年収を男女別に見てみましょう。下の表は、国税庁が、平成27年12月31日現在の国家公務員、地方公務員、公庫職員等を除いた民間で働く従業員(非正規含む)及び役員を対象に給与所得を調査しまとめた「民間給与実態統計調査結果」から男女別平均給与額を抜粋し分かりやすくまとめたものです。
19歳以下 | 20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70歳以上 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男 | 1,583 | 3,271 | 4,801 | 5,966 | 6,609 | 4,286 | 3,676 | 4,313 |
女 | 1,026 | 2,698 | 3,031 | 2,929 | 2,873 | 2,069 | 2,174 | 2,400 |
男女別に平均年収を見ると、年収に大きな開きがあることが分かります。男性の年収に比べて、女性の年収が圧倒的に少ないのです。特に40代50代では、2倍以上の差が開いています。
これは、女性は産休・育休などで一度職場を離れる事が多いためと考えられます。産休・育休は、一度離れてもまた戻ってきて良い、という意味を込めた制度ではあるのですが、やはり戻りにくいと感じている人が多いようです。職場復帰の難しさは未だ根強く残っています。
また、年収が低いのは、非正規雇用社員として働いている人が多い事にも原因があります。アルバイトやパート、派遣社員や契約社員など、正社員として収入を得ていない女性が多くいます。
年功序列制が女性の場合あまり適用されず、そこまで年収に反映されていないため、年代が上がるにつれて男女間の格差が開いていきます。スタート地点が同じであっても、男性の年収のピーク時にも女性はほぼ横ばい状態を保っているために倍近くの差が開いてしまっているのです。
出産後、小さな子供を抱えての仕事ができるという環境が整っておらずに、やむを得ず退職しなければならないというケースもあります。家庭との両立が難しく、長い勤務時間を希望しないため、賃金に反映されない場合もあります。また、昇進への強い願望を持つ人が男性よりも少ないために、年収の差が出るのではないかという考え方もあります。
今後の女性の社会進出、活躍政策により、平均年収の格差は縮まっていく可能性はあるかもしれません。会社に籍を残したままで産休・育休をとり、復帰したい、再就職したいと考えている女性も増えてきているので、雇用する側の意識改善によっては、女性の年収の増加にもつながるはずです。
正規雇用と非正規雇用から見るサラリーマンの平均年収の格差
サラリーマンの年収を正規雇用と非正規雇用から見てみましょう。下の表は、国税庁が、平成27年12月31日現在の国家公務員、地方公務員、公庫職員を除いた民間で働く従業員(非正規含む)及び役員を対象に給与所得を調査しまとめた「民間給与実態統計調査結果」から民間役員を除いた正規雇用と非正規雇用の平均給与額を抜粋し分かりやすくまとめたものです。
正規 | 正規平均 | 非正規非正規平均 | 非正規平均 | ||
---|---|---|---|---|---|
男 | 女 | 男 | 女 | ||
5,385 | 3,672 | 4,529 | 2,258 | 1,472 | 1,865 |
正規 | 正規平均 | 非正規平均 | 非正規平均 | ||
---|---|---|---|---|---|
男 | 女 | 男 | 女 | ||
21,291,240 | 9,823,578 | 15,557,409 | 3,334,722 | 7,892,979 | 5,613,851 |
正規雇用と非正規雇用では、年収にびっくりするぐらい大きな開きがあることが分かります。非正規雇用の人は、正規雇用に比べ、男性で41.9%、女性では40.0%、合計で35.1%しか収入がありません。いくら責任の範囲が狭いとはいえ、正規雇用に等しい業務を担っている非正規雇用の人もたくさんいるはずです。
また、非正規雇用で働く女性が、正規雇用で働く女性の80.3%にも上ることから、いかに女性が低賃金で社会に貢献しているのかが納得できます。早急な同一労働同一賃金の法整備が待たれます。
サラリーマンの平均年収は中央値で見た方が実態に近い
年収を考えるうえで参考にしたいのは「中央値」という基準です。中央値とは、データを小さい順に並べたときにちょうど中央に位置する値のことを言います。
サラリーマンの年収の平均値は、年収が100万円の人も年収が1億円の人も同等に計算するために、一気に底上げされてしまいます。そのため、あまり指標にはならない事が多いという事は前述の通りです。
特に年収が高くなる年代では年収額が高い人がぐっと増えるため、それに引っ張られて年収の平均値も引き上がります。このことから、平均値と中央値の差が開き、自分の年収と平均値の年収を比べた時に「こんなに貰ってない」と、平均値を高く感じる人が増えるのです。
しかし、中央値は違います。年収の低い順に並べていって、ちょうど真ん中の値をとるイメージなので、年収が飛びぬけて高い人に左右される事がなくなります。ですから、平均年収の実情を知りたい時には、中央値を調べる方が実態に近いと感じられるでしょう。
厚生労働省が発表した「平成27年国民生活基礎調査の概況」の中の「各種世帯の所得等の状況」で、中央値は427万円、平均所得額以下の世帯は全体の61.2%になると報告しています。(注2)60%以上の家庭が平均年収以下なのですから、平均年収は平均じゃないと感じるのもしょうがない事なのかも知れません。
サラリーマンの平均年収は手取りで計算するとリアルかも
年収を「手取り」で考えてみてもいいかも知れません。求人票に書いてある給与は全て「額面給与」(または額面金額)というものです。これは、いわゆる「天引き」をされる前の金額です。
「天引き」とは、税金や保険料を引かれる事で、手取りはそれが済んだ後に渡される、私達が実際に手にするお金の事です。ですから、単に額面給与で年収を計算するよりも、手取りで年収を計算した方がよりリアルな数字がわかります。参考にしてみてください。
サラリーマンの平均年収は自らの進路を決める目安になる
サラリーマンの平均年収は、あくまで自分が働く上での目印となるものです。それをあまり気にしすぎる必要はないでしょう。平均よりも下だからといって、今の仕事にやりがいを感じているのならばそれは誇って良い事ですし、平均以上であっても不満を抱えているのならば転職を検討してもいいのかもしれません。 ここで紹介したサラリーマンの平均年収に関する事を自らの今後を考えるうえで参考にしてください。ただし働くということは、平均年収が全てではないという事も忘れないようにしましょう。