海外出張の多い仕事はエリートだけのものではなくなった
グローバル化が進む中、海外との商取引を行っている企業も少なくなくなりました。海外出張というと昔は一部のエリートを除けば無縁だと考えられていましたが、今では必ずしもそういうこともなくなっています。
海外出張のある仕事には抵抗のある人もいる反面、興味を持っている人も多いです。就職先の情報に「海外勤務あり」や「海外現地法人への出向あり」などといった文言があると、いろんなイメージが膨らみます。そういった求人をしている企業も増えています。
海外出張の多い仕事にはどういったものがあり、どういった準備が必要なのか知っておくと、仕事探しや、実際の海外出張の場面で役立ちます。
海外出張の多い仕事や職種は?
海外出張の多い仕事に興味があっても、そういった仕事を知らないと探すことはできません。どういった仕事であれば海外出張は多いか整理してみます。
1 海外との商取引のある会社
メーカーや総合商社、貿易会社などは当然海外と商取引があるので、海外出張が発生しやすいところです。しかし近年は、雑貨、食品、自動車、インテリア、メディアなどの業種でも、現地のメーカーや工場との打ち合わせや視察、イベントなどの名目での海外出張が多くなっています。
2 営業やエンジニア
業界や業種も大事なのですが、どの職種にいるかがより大事です。海外と取引をしていても、一般事務なら自分のオフィスを出ることも難しいものです。海外出張が多い仕事を望むなら、営業やエンジニア、マーケティング担当、広報、総務などが良いでしょう。
営業はもちろんビジネスのためですし、エンジニアやマーケッティング担当者、広報の場合はイベントやカンファレンスへの参加も多いものです。総務の場合は、管理職クラスであれば新規の海外拠点を作る際などに現地視察を担当する可能性もあります。
3 視察・交流の多い公務員
公務員や独立行政法人というのも、実は海外出張が多い仕事です。これは海外を相手にしているようなJETRO(日本貿易振興機構)などだけではありません。当然、これもどのような位置・役職にいるかで決まりますが、地方の公務員でも姉妹都市などとの交流があったり、また様々な政策の事例や成果を現地で視察することも多いのです。
公務員は国内や地域内だけが仕事のフィールドではありません。海外の進んだものを積極的に取り入れるという進取の精神は、江戸や明治から今にまで続いており、それを色濃く残しているのが公務員だとも言えるでしょう。
海外出張の多い仕事のメリットとデメリット
海外出張の多い仕事というのは憧れでもありますが、一方で心配なことも多いものです。気になるメリットやデメリットについてまとめました。
海外出張の多い仕事のメリット
- 会社のお金で海外に行ける
- 出張手当などで給料アップ
- 社内外で評価されやすい
- 成長・昇進しやすい
- 様々なビジネススキルが向上する
- 海外の事情に詳しくなる
- 達成感が大きい
- マイルがたまる
- 話題が増える
海外出張の多い仕事をしている人がメリットに感じることはビジネス面、プライベート面どちらも様々にあります。中でも、経済面や話題が増えることについては大きなメリットである感じている人が多い傾向にあります。
海外出張の多い仕事のデメリット
- 体力的にきつい
- 国・地域・仕事内容は自分で選べない
- 治安上の問題などが不安
- スケジュールがタイトになりやすい
- 文化の違いに耐えられないことがある
- ストレスが大きい
- サービス残業が多い
- 経費の全てが会社から出るわけではない
- お土産に関する心配が多い
- プライベートを大きく削られる
- 現地で思ったほど遊べない
- 成果にプレッシャーを感じる
- 病気などの心配がある
実は海外出張は大きな達成感を持つ一方で、デメリットが多いと感じる人も非常に多いです。最初は楽しさもありますが、慣れてきたり、同じところを往復することにしんどさを感じることの方が多くなるのです。
また、現地での感染病を防ぐために多くの予防注射を必要とするなど、業務にカウントされず自腹を切る事前準備が多いこともひとつのデメリットとして挙げられます。
海外出張の多い仕事に就くために必要な能力
海外出張の多い仕事をするためには、語学力は必須です。しかし、実は語学力以上に大事なスキルは多く、語学は後で勉強させてでも、まずはしっかりとしたビジネススキルをもった人材になることが大切です。
1 行動力・判断力
海外では言語がわかってもわからなくても、自分で判断し、動くしかない場面が多いです。日本でできないことは海外でもできないので、日々磨いておく必要があります。特に海外の人は日本人よりも行動力に長けているので、置いていかれないよう注意しましょう。
2 コミュニケーション能力
たとえ日本人同士でも言葉がわかるだけでは相手と通じないものです。文化や背景、マナーがまるで違う相手に対しても理解し受け入れ、自分の主張を伝えることができるコミュニケーション能力が求められます。これは言葉にとどまりませんので、日々研究です。
3 時間管理力
海外に行けば何かと忙しくなります。日本ではすぐにできることも、現地ではできないこともあります。また、日本ほど様々なことがきっちりしていないことも多く、たびたび予定は狂うものです。それでもすべてのスケジュールを遂行する力が大切です。
4 気力・体力
海外出張では、時差ボケに耐えて重い荷物を持って移動し、慣れない食事や環境、そして多くのストレスに耐えてパフォーマンスを発揮することができる心身のタフさが求められます。健康面でのトラブルが起こらないよう、日頃から体調を整えておく必要があります。
5 向上心
海外出張を「ソツなくこなす」というのはあまり良いことではありません。向上心がない人は、何度同じ国に出張に行っても言語が覚えられず、仕事上の変化も見られません。海外にまで出るのなら、必ず何かを得て次につなげる向上心を持ちましょう。
6 本業の知識・技術
海外出張をする目的はビジネスですから、旅行のようについていくだけでは意味がありません。本業の知識や技術を持って、何かの成果を挙げることが求められます。いかに言葉ができても、本業がしっかりできなければ成果は得られません。
「海外出張は優雅で楽しくリッチ」は幻想
海外出張の多い仕事には憧れる方が多いものですが、現実は厳しいことも少なくありません。これは主に、ビジネス上の海外出張に対するイメージの問題があります。
ビジネスで海外出張があっても、それが成果を保証されたものでない限りは、企業経営の原則としては最低限の費用で最大の成果を挙げることが求められています。
そのため、予算が厳しく、厳しいスケジュールや宿泊・交通手段を求められることもあり、出張手当も不十分なこともあります。帰国後は時差ボケがあっても定時出勤を求められることも少なくありません。場合によっては海外で事件に巻き込まれても、会社からは特に何の補償もしてもらえない場合もあります。
海外出張の行き先は先進国ばかりではない
出張先と言ってもアメリカやヨーロッパの先進国ばかりではありません。今は特にアジア地域とのビジネスが増えているため、韓国や中国、フィリピンやタイ、マレーシアなどへの出張も多くなっています。遠ければ遠いで準備も体力面も大変で、0泊3日の弾丸ツアーとなることもあります。さらに行先が発展途上国の場合、様々な不自由が生じ、トラブルも多くなるでしょう。
海外支社への転勤や現地法人への出向はエリートコースでもありますが、実際はかなり大変であることは間違いありません。家族の理解が得られず、単身赴任となったり、転職のきっかけになることもあります。
優雅に楽しくリッチなイメージで海外出張は期待するべきではありません。イメージと違い、現実の海外出張はビジネスの場に立つまでにも様々な「戦い」があるものだと認識しましょう。
海外出張の多い仕事は現実を正しく知ることが大切
海外出張ができるということを就職先のポイントにする人は、新卒でも転職でも一定数見られます。しかし、海外出張のイメージを正しく理解していないと、現実とのギャップに苦しむことも多いです。
こうしたギャップを埋めるためには、どのような国に、どういった仕事をしに行くのか、仕事の中身をしっかりイメージすることが大切です。海外出張という言葉に浮かれていると、ビジネスとしても成功は難しくなり、次第にその機会も奪われることになります。
最初から自分がどのような舞台で、どのような活躍をしたいのかをきちんとイメージして、語学やビジネススキルをしっかり準備しておくことが、海外出張の多い仕事で成功するためのポイントでしょう。