会社の作り方はどのようにしたら良い?
起業と言うと、昔は一部の能力や才能に恵まれた人、あるいは熟練の技術や知識を身に着けた人にしか難しいものと思われていましたが、今はだいぶ事情が異なってきています。インターネットの登場によって時間や場所による営業力差が少なくなり、また政策や法律の変更によって企業のための要件が大きく緩和されていることなどが背景にあります。
いつかは独立して自分の事業をしてみたいという若者は多いですが、知らないことも多く、怖い部分もあるという人が大半です。「いつか」で終わらせないためにも、早めに企業に関する知識、会社の作り方を身に着けておいて、具体的な準備に活かしましょう。
会社の作り方と手続き
「起業」というのは「業を起こす」と書きますが、一般的には自分で会社を立ち上げる、あるいは個人事業主として事業を始めることを言います。
個人事業主として事業を始めるのか、会社(法人)を設立するのか、会社ならばどのような形態の会社にするのかによって必要な手続きは異なってきます。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、地域を管轄している税務署に「開業届」という書類を提出するだけです。従業員などの雇用状況や、業種の種類によって管轄の施設に提出する必要があります。
株式会社の場合
株式会社として企業する場合は、定款の作成と認証、そして設立登記申請が最低限必要になります。定款の認証は各地域の公証役場、設立登記申請は各地域の法務局で行います。ただし、定款の作成や設立登記の申請のためには、多くの事項を決定しておく必要があります。株式会社は設立のための準備が複雑にはなりますが、信用度が高く、融資を受けたりビジネスをする上では有利に働きます。
合同会社の場合
株式会社と作成する書類や手続きの流れなどは大きく変わりませんが、公証役場による定款の認証が不要になることや、設立登記の申請料金が安くなるなど株式会社と比較して設立が容易になっています。合同会社も増えてはいますが、2006年に新しく認められた会社形態のため、まだなじみが薄く、株式会社と比較すると信用面でやや不利です。
会社を作る上で必要になるもの
会社を作る上では様々なものを揃える必要があります。会社の種類や規模にもよりますが、基本的な項目を押さえておきましょう。
会社名
会社の名称です。「株式会社」「合同会社」といった会社の種類を表す名称も含めます。会社の名前は会社の顔ですから、覚えてもらいやすいこと、自分の思いが込められているかを考えます。
登記する住所
会社の所在地として、どこを定めるかを決定します。保有物件でなく、自宅住所や賃貸物件でも構いませんし、バーチャルオフィスなどでも構いません。公的書類がその住所に届きますし、また外部に公表されることもある住所です。
代表取締役
会社のトップ、責任者は誰かを決定します。1人でも会社なら代表取締役が必要です。すべての決定権を持つ人なので、ちゃんと考えて選ぶことが必要です。
設立日
設立日は、登記を申請した日になりますが、法務局の開庁していない土日祝日や年末年始は指定できないことになります。また、郵送やオンラインでの申請の場合は申請時ではなく到着・受理された日になるので希望していた日と異なってしまうことがあります。
事業目的
会社は原則として、事業目的で定めた事業以外の事業を行うことができません。そのため、事業として可能性のあるものは記載しておく必要があります。あまりに広範囲で漠然としたものは受理されませんので注意しましょう。
資本金
資本金は1円からでも会社を作ることができますが、資本金が少ないとそれだけ信用も低くなります。一度資本金として入金すると、それ以降は会社のお金になりますので事業用途以外には使えず、その使途なども厳格に管理することが必要となります。
株主(発起人)
会社設立時の株主と、その株主の持っている株の構成比率などを決める必要があります。株式会社の場合は、株主総会によって意思決定が行われますので、株主や持ち株比率は経営の行方を左右する大事な事項として決定・記録しておく必要があります。
事業年度
事業年度というのは、会計期間上の区切りを指します。1年になるようならいつ開始にしても良いのですが、決算や税金などのことを考慮して決めたり、商慣行上、周囲に合わせた方が良いなどの理由で決められることもあります。
取締役会
一定数の役員を置く必要がある規模になれば、取締役会が社内の意思決定の中枢になりますので、その設置や運営についての要綱を作っておく必要があります。
役員について
役員は会社の経営に参与する立場の人のことを言い、取締役、監査役、会計参与などを指します。役員の構成や報酬についての取り決めをしておきます。
会社を設立する上で必要になる書類
会社を設立するためには、頭の中で多くの事項が決定しているだけではダメで、たくさんの書類を作成する必要があります。開業に必要になる書類の作成や準備を代行してくれるサービスもありますので、費用はかかりますがうまく活用すると時間や手間を大きく省くことができます。
定款
会社組織についての定めを記した書類です。公証人役場のHPにひな形がありますので、作成が難しいなと感じたら参考にしてみるといいでしょう。
資本金の払込証明書
定款で定めた資本金が払込されているかを証明する書面です。払込証明書には会社の実印となる会社代表印を押印しますので、それまでに会社用の印鑑の準備をしておく必要があります。
印鑑証明書
会社の設立登記では、役員全員の印鑑証明書が必要となりますので全員分を用意します。実印登録をしていない人は役員として登録できないので注意してください。
発起人の決定書
本店所在地が発起人の同意のもとで決定されていることを証明する書面です。住所に間違いがないように慎重に記載してください。
設立時役員の就任承諾書
役員は経営に責任を持つ立場ですので、本人が役員への就任に同意していることを証明する必要があります。就任承諾書はそのための書類です。
登記申請書
法務局に会社の設立登記をする際の申請書類です。法務局のHPにひな形と記載例がありますので、ダウンロードしてみてください。
登録免許税貼付用台紙
法務局に納入する登録免許税を貼るための台紙です。貼る用紙に決まりはありませんので、A4のコピー用紙で大丈夫です。
法人設立届出書
設立した会社の概要を税務所に届け出るための書類で、都道府県や市民税などの地方税を納入するためにも提出が必要です。未提出のまま事業をした場合、発覚すると脱税に問われます。
青色申告の承認申請書
青色申告は必須ではなく、白色申告で届け出をすることもできますが、青色申告にしておいた方が節税上のメリットが大きいため、ほとんどのケースで青色申告を行って損はありません。
給与支払事務所等の開設届出書
従業員の給料や役員報酬などを会社の費用として計上するために必要な書類です。自分一人だけの会社であっても、会社から社長である自分に給料を支払いますので必要となります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉徴収を毎月でなく、年2回にするために必要な書類です。必須ではありませんが、創業間もない頃は事務作業が多いと手間になりますので出しておいた方が無難です。
資産評価に関する書類
棚卸資産の評価方法の届出書や、減価償却資産の償却方法の届出書などが該当します。業種によっては税金の計算に大きく影響しますので、税理士などと相談して作成するのが望ましいです。
労働保険に関する書類
保険関係成立届や概算保険料申告書などが該当します。従業員を雇用したら労働災害補償保険(労災)に加入が義務付けられているため、必要となります。
雇用保険に関する書類
適用事業所設置届や被保険者資格取得届などが該当します。会社を設立すると、雇用保険の加入が義務となるため、必要となります。
健康保険に関する書類
事業所には、厚生年金の加入義務があるため、厚生年金保険新規適用届や厚生年金保険被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届などが必要となります。
会社設立のためのお金はいくら準備する必要がある?
会社の設立は、資本金は1円からでも可能となっていますが、実際の会社の設立には登記費用や認証費用、必要な書類の作成料金などを考えると、安くても株式会社で20万円、合同会社で6万円程度は必要となります。個人事業主の場合は開業届の書類を出すだけですのでお金が要らないのを考えると多少差があります。
社印の作成や、事業を行うにあたって必要な事務所の取得(賃貸契約)費用、設備費など状況によって違ってきますので、どのくらい準備すれば大丈夫という基準はありません。
一般的には開業してすぐに事業が軌道に乗ることはないため、しっかりと経営計画を立てたうえで、開業から半年から1年は十分な売上が出なくとも大丈夫という程度には資本金を準備しておきたいところです。
会社はどのくらいの期間で作れる?
様々な書類を準備し、会社を設立することになると、普通は早くても1~2週間ほどの期間が必要になります。専門家に依頼していたり、何度も会社を設立していて書式が手元にあったり、流れを十分に理解している場合なら3~4日で登記申請まで行うことも可能です。必要なモノさえすべてそろっている状態であれば、即日で会社設立までこぎつけることもできますが、そこまで速く進められるケースは極めて稀です。
会社の作り方を知っている人は上手に起業する
会社の作り方について紹介してきましたが、会社の作り方は非常に手続きも多く大変です。すべて自分で行うことで費用を節約する人もいますが、必要な書類や書式を保有し、何度も案件をこなしているプロに依頼した方が確実で、判断や決定、そして本業に専念できます。
実際、会社の作り方を知っている人ほど出し惜しみせずに専門家に依頼して上手に起業しています。どのような流れで何を準備すべきか事前によく調べて、効率よく会社を興しましょう。
しっかりとした会社を作って起業を成功させよう
職業を選択する時、会社員としてどこかの組織に属するのではなく、起業をするという選択肢を選ぶ人が増えています。一度しかない人生ですから、しっかりとした会社を設立して、せっかくのチャレンジを成功させてください。