失業保険はどのようにもらえばいいの?
失業保険をもらう手続きは、普段仕事をしているとあまり関心がありません。でも、失業は、ある日突然やってくることがあります。なんでもない普通の時間を過ごしている時に、失業保険のもらい方を覚えておきましょう。
気持ちに余裕がないと手続きが遅れ、もらえるものももらえなくなってしまうかも知れません。ここでは、知っておいて損はない失業保険のもらい方をご紹介します。自己都合による退職だけでなく、会社都合や妊娠・出産により退職した場合のもらい方にも触れます。絶対にしてはいけない不正受給も解説します。
現在失業中の人も、いつか失業を経験するかも知れない人にも、役に立つ情報がいっぱいです。ぜひ、ご覧ください。
失業保険とは?
働く人なら誰でも知っている失業保険という言葉。本当は、「雇用保険」という名前が正しい呼び名です。失業した時にもらえるお金なので、「失業保険」という分かりやすい通称名で広く知られています。
失業保険は、仕事を辞めた時に、収入がなくても安心して新しい仕事を探すことができるようにお金を支給する制度です。もちろん、雇用保険に加入している人でなければもらえません。失業保険のもらい方を覚える前に、自分が雇用保険に加入しているかどうかを調べましょう。
給与明細に「雇用保険料」という欄があれば大丈夫です。会社は、従業員を雇用保険に加入させなければなりませんが、中には加入していない会社もあります。アルバイトなどの短期雇用であればその可能性は高いです。給与明細に「雇用保険料」という欄が見当たらない場合は、辞める前に勤めていた会社に確かめてください。
失業保険をもらうために申請する条件は?
失業保険をもらうには、仕事を探しているけれど就職先が決まらないという前提が必要です。就職したいという意思とその能力があって、一生懸命努力して次の就職先を探しているにも拘らず、どうしても働く先が見つからないという事実があってこそもらえるのです。
また、離職日前の2年間に雇用保険を合計12か月以上払っていることも要件の一つです。雇用保険の加入期間が分からない人は、勤めていた会社に確認してみましょう。
失業保険を申請できる条件
・働きたいと思っている
・働く力を持っている
・就職先を積極的に探している
・就職先が見つからない
・雇用保険に通算12か月以上加入している
派遣社員・パートでも失業保険はもらえるの?
派遣社員でもパートでも失業保険はもらえます。失業保険をもらえる資格は、「離職日前の2年間に雇用保険を合計12か月以上払っている」「仕事を探しているけれど見つからない」こと。この条件を満たしていれば、働く形態は問われません。
失業保険をもらうために申請はどこに行けばいいの?
失業保険を申請する時は、自分の住所を管轄しているハローワークへ行きましょう。管轄外のハローワークに行っても手続きができないので注意が必要です。自分の住所を管轄しているハローワークを調べるときは、厚生労働省のページで調べると分かりやすいでしょう。
失業保険は、自分から申請しないともらえません。ハローワークから「来てください」とお知らせがあったり、辞めた会社が「ハローワークへ行ってください」と言ってくれるわけではないのです。失業保険をもらえる資格がある人は、できるだけ早めにハローワークへ行ってください。
失業保険を申請するのに必要なものは7つ
最初にハローワークへ行く時に持って行くものは全部で7つです。どれが欠けても受け付けをしてもらえません。必要なものが全部そろっているかどうか確かめてから出かけましょう。
1.雇用保険被保険者離職票(1)
勤務していた会社から送られてくる書類です。退職した日付、自分の名前、生年月日が書いてありますので、間違いがないかどうかを確認してください。間違いがあれば、勤務していた会社に連絡しましょう。間違いがなければ、下段に失業保険を受け取る自分の銀行口座の情報を記載します。
2.雇用保険被保険者離職票(2)
これも、雇用保険被保険者離職票(1)同様、勤務していた会社から送られてきます。左には、勤めていた会社の情報と支払われていた給与の明細が記載されています。右側には、勤務先を辞めた理由を書きます。失業保険の受給額を左右するところなので、正しい理由を書きましょう。
3.本人であることを確認できる証明書
自分の名前、住所、生年月日を証明するものが必要です。免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、官公署が発行した顔写真がついているものを持って行きましょう。
4.個人番号を確認できる書類
マイナンバーを確認できる書類の提出が必要です。マイナンバーカード、通知カード、個人番号が記載された住民票(住民票記載事項証明書)のうち、どれか一つを持って行きましょう。
5.自分の写真
必要なのは、正面を向いた上半身が写っている直近3か月以内の写真です。サイズは、縦3.0cm×横2.5cmのものを2枚用意してください。
6.銀行の普通預金通帳
雇用保険被保険者離職票(1)の下段に書いた自分名義の銀行口座の通帳を準備します。キャッシュカードはダメです。必ず通帳を持って行きましょう。
7.印鑑
持って行く書類に押印した印鑑です。もし、失業保険を受け取る銀行に届けている印鑑と違うなら、銀行印も忘れずに持って行ってください。銀行口座を書き間違った時に役に立ちます。
失業保険の受給が決まったら初回説明会へ行く
ハローワークでは、提出された書類をもとに失業保険を受給できるかどうかを判断します。失業保険を申請し受給できると決まったら、受給説明会の開催日時が記載されている案内が届きますので、出席してください。初回説明会に参加しないと失業保険を受け取ることができません。どうしても通知された日時に参加できない時は、理由を添えてハローワークへ連絡をしましょう。
失業認定とは
失業認定とは、申請した人が本当に失業の状態にあるかどうかを確認することを言います。原則として4週間に1回の割合で行われます。初回説明会で、第1回目の失業認定日が通知されますので、求職活動状況を書いた「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」を提出しましょう。これで、失業保険をもらう手続きの完了です。失業保険の受給期間内は、就職が決まるまでの間、これを繰り返します。
求職活動とは
「失業認定申告書」には、自分が就職をするために行った求職活動の状況を記載します。求職活動をしなければ失業保険をもらう資格がないと判断されますので、必ず活動をしてください。原則として、認定期間から認定期間の間に客観的に確認できる2回以上の活動実績が必要です。ハローワークで紹介している求人に応募する、職業相談窓口で相談する、講習会に参加する、資格を取得するなど、積極的に就職に結びつくような活動をしましょう。
失業保険の受給期間
失業保険をもらえる期間は、原則として勤めていた会社を退職した翌日から1年間です。1年を過ぎると失業保険を申請することができなくなります。失業保険をもらえる資格がある人は、早めに申請しましょう。
会社都合で退職したときの失業保険のもらい方
退職を望んでいないのに会社の都合で仕方なく会社を辞めた人は、「特定受給資格者」と呼ばれます。自分の都合で会社を辞めた「一般受給者」とは扱いが異なります。ここでは、「特定受給資格者」の要件と会社都合による失業保険の給付期間についてご紹介します。
特定受給資格者の要件
・会社が倒産したので辞めた
・会社で働いている社員の三分の一を超える人が辞めたので自分も辞めた
・働いている事業所が廃止されたために辞めた
・働いている事務所が移転し通勤できなくなったために辞めた
・解雇された(自責を除く)
・事前に示された労働条件が事実と異なったために辞めた
・給料の三分の一を超える金額が給料日までに支払われなかったために辞めた
・給料が85%未満になったので辞めた
・労働基準法で決められた労働時間を超えた残業があったために辞めた
・健康を損なうおそれがある旨を行政機関から事業者が指摘されても改善されなかったので辞めた
・妊娠、出産、介護、又はそれらの制度の利用を申し出たことを理由に不利益な扱いがあったので辞めた
・配慮を欠いた職種転換があったので辞めた
・期間の定めのある労働契約で3年以上引き続き雇用されるに至った場合において契約が更新されなかったので辞めた
・期間の定めのある労働契約で契約の更新を明示されていたにもかかわらず契約が更新されなかったので辞めた
・上司、同僚からハラスメントがあった、またはその事実を会社が知っていたにもかかわらず必要な措置がとられなかったので辞めた
・会社から直接または間接的に会社を辞めるように言われたので辞めた
・使用者側に責任がある理由で休業が3か月以上続いたため辞めた
・事業所の業務が法令に違反したので辞めた
自己都合に比べて会社都合は失業保険の給付期間が長い
会社都合で会社を辞めた時と自己都合で会社を辞めた時では、失業保険の給付期間に違いがあります。下の表で示したように、自己都合で会社を辞めた人が失業保険を受け取れる期間に比べ、会社都合で仕方なく会社を辞めた人の方が長くもらえます。働いている期間が1年未満でも受け取れる、会社都合で辞めた人に配慮された制度であることが分かります。
勤続年数 | 給付期間 |
---|---|
10年未満 | 90日 |
10年以上 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
労働時間 | 年齢 | ||||
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 30歳以上 35歳未満 |
35歳以上 45歳未満 |
45歳以上 60歳未満 |
60歳以上 65歳未満 |
|
1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
1年以上 5年未満 |
90日 | 90日 | 90日 | 180日 | 150日 |
5年以上 10年未満 |
120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
10年以上 20年未満 |
180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | – | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
妊娠・出産で退職したときの失業保険のもらい方
妊娠・出産をきっかけに会社を退職した場合は、「特定理由離職者」と呼ばれます。混同されやすい制度として「育児休業給付金」制度がありますが、育児休業給付金の受給要件は「休業」です。妊娠・出産を理由に退職した場合は受け取ることができませんので気を付けましょう。「特定理由離職者」は、妊娠・出産以外の理由でも認定されます。ここでは特定理由離職者の要件と妊娠・出産による失業保険の給付期間を見ていきます。
特定理由離職者の要件
・病気や体力不足で辞めた
・妊娠・出産・育児のために仕事が続けられなくなって辞めた
・父母または親族の病気、介護などで辞めた
・配偶者や親族との別居生活ができなくなり辞めた
・結婚による住所移転で通勤できなくなり辞めた
・子どもの保育所と勤務場所が遠くなり通勤が難しくなり辞めた
・事務所の移転により通勤が難しくなり辞めた
・望まない住所に移転せざるを得なくなり通勤できなくなり辞めた
・交通機関の廃止や時間変更により通勤ができなくなり辞めた
・事業主から転勤を命ぜられ通勤できなくなり辞めた
・配偶者の転勤により通勤できなくなり辞めた
妊娠・出産で退職した場合の失業保険の給付期間
妊娠・出産で退職した場合の失業保険の給付期間はどうでしょうか。これは、一般受給資格者と同じです。勤続年数により、90日から150日の間で支給されます。
妊娠・出産で退職した場合の失業保険の受取は延長できる!
妊娠・出産を理由に退職し場合は、すぐに働くことができません。他にも失業保険の受給期間内に怪我や病気、育児などで働くことができないとハローワークが認めた場合は、もらえる期間を先送りすることができます。延長できる期間は最長で3年です。該当する人は、忘れずにハローワークへ届け出をしましょう。
失業保険の不正受給は絶対にやめよう
当たり前のことですが、失業保険を不正に受給してはいけません。失業保険は、収入がない失業の状態でも安心して仕事を探すことができる、困っている人を助けてくれる制度です。不正受給は絶対にやめましょう。
不正受給の代表的な事例はこれ
- 求職活動をしていないのに「失業認定申告書」にしたと書く
- 働いたにもかかわらず「失業認定申告書」に何も書かない
- 起業したにもかかわらず「失業認定申告書」に何も書かない
- 内職や手伝いをして報酬を得たにもかかわらず「失業認定申告書」に何も書かない
- 会社の役員に就任したにもかかわらず「失業認定申告書」に何も書かない
不正受給がバレたらどうなるの?
失業保険の不正受給がバレたら、以下のようなことになります。不正受給は犯罪です。絶対にやめてください。
- 不正に受給した金額の返還
- 不正に受給した金額の2倍をペナルティとして返還
- その後の失業保険金額の支払い停止
- 返還が滞ると財産を差し押さえられる
- 悪質な場合は告発される
失業保険は正しく請求して正しくもらう
最近は、一生ひとつの会社に勤めることよりも、仕事が変わることが当たり前になってきました。どんな人にも失業する事態が起こる時代なのです。生きていくための収入を得ることが難しくなったら、失業保険の制度を利用しましょう。失業保険でもらえる手当は、次の人生を歩むための準備金です。もらえる資格があるならもらってください。正しく申請して正しくもらうことで、きっと未来が開けます。